第11話 いい国だな


そういえば王都に来てから、何だかんだとゆっくり散策してなかったなと思いながら、王都の街をのんびり歩く。さすが王都だけあって、人も多く活気に溢れた街だった。

ラノベ名物の屋台で串焼きを買って食べたり魔道具屋や武器屋を見て回りながら時間を潰す。夕刻になり王宮前の広場に行くと、


「アサトさん、こっちですよ」


顔見知りになった冒険者達が声を掛けてくる。

ギルマスも来ていてしばらくすると、王宮の門が開き中へと誘われる。冒険者達が入っていくと、兵士たちが敬礼で出迎えてくれる。兵士たちも感謝しているようだ。

会場は王宮大ホールで行われるようで案内される。そこには多くの豪華な料理が並び、冒険者達が唖然と料理を見ている


「これって俺達が食べていいのか」


「こんな料理見たことない」


「田舎の家族にも食べさせてやりたい」


冒険者達がその豪華さに驚いていると、


「国王陛下ご入場」


国王が入ってきた。


「皆の者、此度の活躍、誠に大儀であった。今宵は其方達の労いの場である。大いに食べて、飲んで、楽しんでくれ。簡単だが以上だ」


えらくあっさりした挨拶だなと思っていると、


「余も早く料理を食べたいからな、面倒な挨拶は省略だ、酒は行き渡ったか、では其方達の昨日の活躍に感謝を、明日からの活躍を祈念して乾杯」


「「「乾杯」」」


「今宵は王宮に部屋を用意してある、時間を気にせずに食べて飲んで勝利の美酒に酔いしれようぞ」


「うおおおおっ」


「俺、王宮に泊まるの初めてだぜ」


「俺もそうだ、って言うか皆初めてじゃないのか」


冒険者たちは有り得ない待遇に目を輝かせて大喜びしていた。

そこからは、王族、貴族も交えての宴会が始まった。

この国はいい国だな、王族も貴族も冒険者を蔑むことなく一緒になって楽しんでいる。

国王が為政者として民を大事にしているから、貴族も民を大事にしているのだろう。

そう思いながら隅のデーブルで1人飲んでいた。マリアとセラの姿もあったが、こっちに来る気配はない。ギルマスから昨日俺が帰った後の事を聞いているが、あれだけ引っ付いてきていたセラが他人行儀なのはちょっと寂しいなと思ってしまうがしかたない、俺がそのように仕向けたんだからな。


俺の所に、国王や宰相、貴族たちが礼を言ってくるがそこら辺は省略。


一通り挨拶も済んで、1人で会場の外のバルコニーへ出る。王都の夜景を見ながら日本へ思いを馳せていると、


「あっ」


という声が聞こえ振り向くと、そこにはマリアとセラがいた。


「よう」


と、声を掛けるが、2人は軽く会釈して会場内へ戻ろうとする。


「待てよ」


声をかけるとビクッとしながらも立ち止まりこちらを振り向く。


「昨日は俺も言いすぎた、悪かったな、これ以上お前たちを関わらせる事は出来ないが、お前達の気持ちはうれしかった、ありがとな」


「・・・・うわぁぁぁぁぁぁん」


そう泣き叫びながらセラが走り寄って抱きついてきた。俺の胸に顔を埋めて泣きじゃくるセラ。マリアも涙ぐみながらこちらを見ている。


「よしよし」


そう言いながらセラの頭を撫でる。一頻り撫でた後に落ち着いたのか真っ赤な顔をしてセラが離れる。


「ごめんなさい・・・」


「まあ、びっくりしたけどな」


「うっ・・だって・・・もう2度と話しかけたらいけないし会えなくなるって思ったら・・・」


「まあ、俺は明日には王都を出て行くけどな」


「「えっ」」


「どうしてで・・・ちょっとこちらへ来ていただけますか」


俺はマリアに引っ張られてバルコニーの隅の会場内からは死角になっている所へ連れ込まれるが、ギルマスに聞いたことを思い出し人に見られると不味いんだろうと素直に付いて行く。


「どうして出て行くのですか」


「俺にはやることがあるって言っただろう」


「それはアサト様じゃないと出来ないことなのですか?」


「そうだな、俺じゃないと出来ないだろうな」


なんせ魔神を倒してくれだもんな、他の奴には無理だろう。


「そうですか・・・では、もうこの国には戻られないのでしょうか」


「それはわからない。ただ俺はこの国は好きだぞ、会場内を見てみろ、王も貴族達も、冒険者を見下すことなく一緒に楽しんでいる。それだけでこの国はいい国だと思う」


「王である父はいつも言っています、国を支えているのは民達だと。民を大切にしない国に未来は無いと。数百年前の当時の王太子様が神から直接言葉を賜り、それを私達王族の定めとして決められ実践してきたからです」


「そうか、本当にいい国なんだな」


「はい、自慢の父で、自慢の国です」


「そう言えば、今夜は王宮に部屋を用意してあると言っていたが」


「はい、魔物を討伐して、民を、国を守ってくれている冒険者の皆様への感謝だとおっしゃっておりました」


「そうか、本当にいい国だな」


「はい」


「そろそろ戻らないと不味いんじゃないのか」


「・・・アサト君もここに泊まるの?」


「そうだな、この国の思い出としてそれもいいかもな」


「では、アサト様、失礼いたします」


そう言ってマリアとセラは会場へ戻っていく。


俺はしばらくバルコニーに残り、アイテムボックスから煙草を出し、一服しながら王都の夜景を眺める。

この世界に来てまだ3日しか経ってないのにえらく濃い3日だったな。

明日は王都を出て、アストラ聖王国を目指すと考えたところで、アストラ聖王国ってどこにあるんだっけと言う事に気づく。


「しまった、マリア達に聞けば良かった」


そう思いつつ、聞くと俺の目的地がバレてしまうと言う事に気づくが、この世界の事を聞く中でさり気なく聞けば良かったと後悔する。

しかたない、ギルマスにでも聞いてみるか。

会場内に戻ると女ばかりのパーティに捕まりテーブルまで連行される、当然腕に柔らかいものを押し付けられている。俺に抗う術は無い。

俺は付き合うなら、背が小さくて細くて胸は手のひらサイズがいい。だが、大きい胸も嫌いじゃない。ただ小さいほうが好きなだけだ。


連行された後、よく見ると全員ビキニアーマーと言われる格好だ。眼福眼福と思いながら見ていると、全員にお礼を言われた。何の事かと考えていると、あの戦いでパーティの1人が魔物に串刺しにされてしまって死んだと思っていたそうだ。実際に心臓は止まっていたらしいが、戦いが終わって悲しみに暮れているところに笑いながら元気よく戻ってきたと。

話を聞くと、仮死状態と言うものだったらしく、俺の回復魔法で息を吹き返したと言われたらしい。

彼女の事は覚えている、身体を魔物に貫かれて絶命していたが時間を巻き戻してやった。


「あんたのお陰でみんなでここに来ることができた、お礼をしたいんだが何か欲しい物とかないのか」


リーダーらしき女が俺に聞くが、とりあえず欲しいものは無いと答えておく。


「そうか、なら私たち全員で満足させてやるぞ」


なんだと・・・それってば男の夢の大車輪と言っても過言ではない・・・

そう考えていると後ろから殺気が飛んできた。何奴と振り返ってみると、遠くからセラが睨んできていた。無視して女冒険者たちの方を見ると、セラの視線に気付いたのか、


「公爵令嬢様がお相手なら、私らは必要ないな、今度なんかでお礼させてくれ」


そう言って立ち去っていった。ちぇっと思いながら皆の楽しそうな様子を見て、俺1人居なくなっても気づかれないよなと思い、給仕の女性に部屋まで案内してもらう。案内された部屋は豪華で広くて貴族とかが泊まるような部屋だった。案内してくれた給仕の女性に確認する。


「間違いですよね、豪華すぎるんですけど」


「いえ、この部屋がアサト様にお泊りいただく部屋となっております、救国の英雄様にお泊りいただくのですから」


「・・・・わかりました」

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