第7話 スタンピード
「あれ、ギルマスじゃねーか、どうしたんだ?」
解体所にいる厳ついおっさんが話しかける。
「ダール、場所借りるぞ」
「そりゃ構わねーがどうした?」
「ここらでいいか、アサト、出してくれ」
場所を指定されたので、アイテムボックスからオーガを取り出す。
一瞬で3体のオーガが積み上げられる。
「おおっ、こりゃオーガじゃねえか、しかも3体も・・・この兄ちゃんが倒したのか、しかし剣傷も魔法傷も付いてねえしどうやって倒したんだこりゃ?」
「殴って蹴っただけだ」
「「「・・・はぁっっ」」」
「しかしありえねえだろ、武器も魔法も使わずオーガを倒すなんて。この兄ちゃん他所から来た高ランクなのか?」
「いや、俺はさっき冒険者登録したばっかりのかわいい新人だぞ」
「「「うそつけ(です)」」」
「さっき登録したのは本当だろうに」
「かわいい新人は、ギルドマスターに試験で勝ったりしません」
「なんだ、ギルマスに勝ったのか」
「そうなんですよ、しかも開始早々一瞬でですよ、信じられますか?」
「すげえ奴が現れたもんだな」
「それもあって、いきなりBランクからのスタートにした」
「おお、そりゃますますすげえな、でだ、このオーガは買取ってことでいいのか?」
「ああ、構わない」
「よっしゃ、じゃあ査定するからちょっと待ってろ」
「ギルマス、この国の金の価値を教えてくれ」
「んっ、金は世界共通のはずだが、知らないのか?」
「ああ、俺の国とは違うようだ」
「どんな田舎に住んでたのやら、まあいい教えてやる」
「通貨の単位はギルだ、1ギルがこの銭貨1枚、10ギルが鉄貨1枚、100ギルが銅貨1枚
1,000ギルが銀貨1枚、10,000ギルが大銀貨1枚、100,000ギルが金貨1枚だ、上に大金貨、白金貨、大白金貨などがあるが、冒険者なら見るのは大金貨くらいまでだろうな」
「なるほど、わかった。」
1ギル=1円と考えればいいかと思いながらダールを待つ。
「待たせたな、オーガ3体分で大金貨1枚、金貨5枚大銀貨5枚、銀貨5枚だ、数えてくれ」
オーガ3体で155万5千円ってことか、いきなりもうかったなと思いながら数える。
「ああ、大丈夫だ、思ったより高額だったな」
「そりゃオーガだからな、森の奥に住む魔物で高ランクだ、このくらいはする」
「ダールよ、このオーガは街道沿いでアサトに狩られたんだ」
「街道沿いでか、考えられんな」
「お前もそう思うか、原因は何だと思う?」
「原因か、森の中にオーガより強い魔物が現れて住処を追われたか、異変が起きて森の奥に住めなくなったかくらいしか思いつかん」
「俺も同意見だ、ただこのオーガ以外、異変の報告は上がってきてない。しばらく様子見だな」
俺たちはそこで解散となる。
「サリー、どこかいい宿があったら教えてくれ」
いきなり呼び捨てで呼んだ俺にびっくりしながらも、頬を赤く染めながら教えてくれる。
「ギルドの前の道を右にしばらく行くと、「憩いの宿」って看板があります。そこがオススメですよ。酒場も兼ねてますが料理も美味しいし部屋も綺麗だしいいと思います」
「ありがとう」
俺は憩いの宿の前に立つ、入口が開けっ放しで仲が見える。丁度飯時なのか大勢の客が飲み食いしている。
「いらっしゃいませ、お食事ですか、お泊りですか」
女の店員が声をかけてくる。
「泊まりだ、空いてるか」
「はい、空いております、何泊でしょうか」
「とりあえず2泊で頼む」
「かしこまりました。1泊大銀貨1枚です。食事はその都度お支払い下さい」
金を払いながら周りを見渡すと、何人かギルドで見た顔がある。
俺をチラチラ見ながら何か話しているが気にしない。きっとギルマスを倒したことを話しているんだろう。
「お待たせしました、こちらが鍵となります。お部屋は右手の階段を上がった一番奥の部屋です」
「ありがとう」
そう言いながら軽くウインクする。
店員は頬を軽く染めながら笑顔で見送ってくれる、この世界の女性のレベルは一様に高いと思う。みんな綺麗だ。
部屋に着くとベッドに倒れこむ。
「今日は疲れたな、飯食ったら寝るか」
一旦、下へ降りて食事にしよう。
「あれっ、お出かけですか」
「いや、腹減ったから何か食わせてくれ」
「では、こちらへお掛けください」
テーブルに案内され、メニューを渡される。
「何かオススメってあるか」
「うちは煮込み定食が絶品ですよ、銀貨1枚です」
「じゃあそれを頼む」
「かしこまりました」
数分後出てきた料理を食べて部屋に戻りベッドに倒れ込んでそのまま寝てしまう・・・・
夜中過ぎ、「カンカンカンカン」と鐘の音が街になり響きその音で目を覚ます
「一体何が起こったんだ?」
窓から外を見ると、冒険者らしき者達がギルドへ走っている。
すると、部屋のドアをドンドンと叩く音が聞こえ、
「アサト様、アサト様起きてください」
サリーの声が聞こえる。どうしたんだとドアを開けると、
「お休みのところ申し訳ありませんが、ギルドへ来ていただけないでしょうか」
「どうしたんだ?」
「スタンピードです」
「スタンピード?なんだそれ」
「魔物の大発生です、数多の魔物が王都へ向かってきています、どうかお願いします」
「わかった、用意していくから先に戻ってろ」
「わかりました」
サリーはギルドへ戻っていく。用意の出来た俺は何も武器を持ってないことに気づき、どうしたもんかと考える、スキルに召喚ってあったが、武器も召喚できるのか?
「召喚」
淡い光が輝き、俺の手には日本刀が握られていた。鑑定すると「魔を打ち払い、正義を貫く刀」と表示された。名前は無いようだ。だが、刀が召喚されるとはありがたい。俺は日本を第2の故郷と思っているからな。
「名前が無いのは呼ぶときに勝手悪いな・・・・そうだお前の名前は「大和」だ」
そう言うと、大和は眩しいばかりの光に包まれる。進化したようだ。確認は後でいいかと大和をアイテムボックスに入れギルドへ向かう。
ギルドに着くと、100名ほどの冒険者で中は騒然としていた。サリーを見つけ声をかける。
「サリーこれからどうすればいいんだ。」
「ギルドマスターの説明があります、その指示に従ってください」
「よく集まってくれた。知ってると思うがギルドマスターのジャックだ。この王都北側から魔者の群れが向かって来ている、その数およそ1万。」
その数にどよめきが起る。
「王宮からも騎士団の精鋭中の精鋭が100名こちらに向かって来ている、騎士団と協力して王都に魔物入れるな、何が何でも守りぬくぞ。」
「おおーーーっ」
「では、戦士と魔法使いに分かれてくれ、それぞれ指示を出す」
騎士団と冒険者戦士組70名は城門の外側、魔法使い組25名は城門の上の見回り通路で魔物を迎え撃つことになる。俺はどっちに混ざろうかと考えていると、ギルマスから呼び止められる。
「アサト、お前はこっちだ、回復魔法が使える5名と共に救護班に入ってくれ」
「はっ?、何言ってるんだ、俺も戦うぞ」
「いや、今回は多大な負傷者が出る、お前は怪我した奴らを片っ端から回復して戦場に送り返して欲しいんだ」
「俺は戦ったほうがいいと思うが」
「お前が俺を倒せる実力があるのはわかってる、だが今回の様な戦場は質より量なんだ、一箇所で圧倒的でも他が抜かれたら意味がない」
「そうか」
「わかってくれたか、ではここで・「だが断わる」・・えっ」
「ギルマス、あんたに教えてやるよ、圧倒的な質は量を凌駕するって事をな」
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