第3話 レポーター・リア視点

「えっ、何言ってるの?そんな事出来るわけないじゃない」


津波を止める?そんな事人間に出来るわけがない。

でも、あの男性は瞬間移動で彼女達の前に現れた。もしかしてと考えていると


「見てっ」


誰かが叫ぶ、その方向を見ているとあの男性に光が集まっていく。

私はマイクを握りしめて言葉を繋ぐ、


「津波を止めると言った男性に光が集まっていきます、あっ今度は男性自身が光り始めました、あの男性は何者なのでしょうか、一体ここで何をしようとしているのか、ここで何が起ころうとしているのでしょうか」


「ディァァァッ」


「男性から眩いばかりの光が発せられ、何も状況が確認できません。

一体この光の中で何が起こっているのでしょうか」


光が収まり状況が確認出来るようになり目線を男性の方へ向けると、一瞬どうなっているのかわからず固まってしまった。

そこにいたのは特撮ヒーローのレッドファルコンだったのだ。


「あ、あ・・うそっ・・キャァァァァァァァァ」

「うわあん、うそっうそっ」

「ほんとに・・・守ってくれるの」


少女達の言葉に我に返りカメラマンの方を見るとカメラは見当違いの方へ向いておりカメラマンは唖然とし固まったままだった」


「カメラっ」


怒鳴りつけるように叫ぶと、カメラマンも我に返り巨人へカメラを向けるが、近すぎて下から見上げるようなアングルでしか映らない。


「ドローン飛ばして」


その言葉に別のスタッフがドローンを飛ばす。


「この映像をご覧下さい、これは特撮でもCGでもありません、

この臨海公園に突然、突然この赤い巨人が姿を現したのです。

しかもただの巨人ではありません。この姿、私は、いえ日本人なら誰もが知ってるこの勇姿、そう、TVの中の正義のヒーローレッドファルコンが姿を現したのです・・・・


私たちは夢を見ているのでしょうか、それとも人間にはどうする事も出来ない巨大な津波を前に神に祈る気持ちが幻を見せているのでしょうか・・・・

いえ、夢でも幻でもありません、レッドファルコンは現実にここに姿を現したのです。

お願いします、どうか日本を、日本をお守りくださいっっっ」


レッドファルコンは波打ち際まで行くと、分身し始めすごい勢いで左右に広がっていく。


「レッドファルコンが分身しています、そしてすごい勢いで広がって行きます。まるで津波に襲われる地域全てを守るかのような勢いです、各県関係者確認してください。「ディァァ」あっ、今度は分身したレッドファルコンを追いかけるように光が広がっていきます、この光は一体、ハッ、もしやこの光はバリヤーなのでしょうか、この光のバリヤーで津波を防いでくれようとしているのでしょうか」


津波が近づいてくる、その光景に誰もが慄き言葉を発する者はいなかった。


「津波が近づいてきました、津波に飲み込まれるはずだった私たちTVクルーとアイドルの少女たちはどうなるのか、さあ運命の瞬間、第一波到達ぅぅ」


ドゴーンッッと言う凄まじい音を立てて津波とバリヤーが激突するが・・・


「くっ、食い止めたぁぁぁぁ・・・・・20××年12月23日午後2時32分、

私達人類は人類史上、最大で最高の奇跡を目の当たりにしているのです。

TVの中の正義のヒーローレッドファルコンが現実に姿を現し、この大津波を完全に食い止めてくれたのです」


「キャァァァァァ」


少女たちの歓喜に満ちた叫び声が聞こえる。男性達もガッツポーズで喜びを表現している。

日本全国で同じような光景が見られることだろう。

レッドファルコンと関係があると思われるハラSUNの女の子達に言葉をかける。


「貴女たちの言ったとおり、ほんとに津波を止めてしまったね、やったね、すごいね、さすがレッドファルコンだね」


「はい、はいっ、すごいです」


「ほんとに凄いクリスマスプレゼントもらっちゃったね」


「クリスマスプレゼントって何なの?」


「あの人が言ったんです、「この大地に住む全ての命を守り、その未来を守る。それがお前達7人とお前達の住む日本への俺からの1日早いクリスマスプレゼントだ」って」


「何それ、すごいじゃないの。じゃあ、レッドファルコンは貴女達の為に津波から守ってくれたのね」


「そんなんじゃないと思います、純粋に日本を守る為だと思います」


「ううん、絶対貴女達の為よ」


カメラを呼び寄せて、彼女達に言う。


「さっきの彼のセリフを全員でカメラに向かって言ってくれる?」


「恥ずかしいですよ」


「日本を守ってくれてる彼の為よ、彼は日本にもクリスマスプレゼントって言ったんでしょ、日本中の人へこの奇跡は彼からのクリスマスプレゼントだって皆に教えてあげなくちゃ」


「・・・・わかりました、皆、いいかな」


「「「「「「はーい」」」」」」


「じゃあ、私が手で合図したら皆で言ってね」


カメラに向かって、


「日本全国の皆さん、レッドファルコンの出現は偶然ではありませんでした。

彼は、レッドファルコンはここにいる、「原谷SUNエンジェル」のメンバーを守るた為にこの場に姿を現したようなのです。

そして、変身する前にメンバーの皆にこう言ったそうです。」


手で合図をする。


「「「「「「「・・・あの人は「この大地に住む全ての命を守り、その未来を守る。それがお前達7人とお前達の住む日本への俺からの1日早いクリスマスプレゼントだ」って言ってくれました 」」」」」」」


「そう、彼女達と日本は最高で最大のクリスマスプレゼントを受け取ったのです」




第一波第二波を全て食い止め、次は最後の第三波だけだ。


「津波は第三波まで確認されています。今遠くに確認されている波が第三波でしょう。えっ、なんだか様子が今までの津波と違うような・・・ドローンを向かわせてみましょう」


ドローンを飛ばし確認すると、


「なんと第三波は巨大津波です、波の高さは100mを超えています。レッドファルコンのバリヤーを大きく超えているのです。バリヤーを乗り越えてくる津波だけでも壊滅的な被害が予想されます。」


このままでは、レッドファルコンによって救われているここにいる少女達も犠牲になってしまうとリアさん達を見ると、安心しきって笑いながらレッドファルコンの事を話している姿があった。


「ねえ、どうして貴女達はそんなに笑っているの?落ち着いているの?バリヤーを超えるような津波が迫ってきてるのよ」


「私達は、守ると言ったレッドファルコンを、朝人さんを信じているから」


「えっ、朝人さんって誰?・・・もしかしてレッドファルコン??」


「見てっ」


「デヤッッ」


レッドファルコンが張っていたバリヤーを巨大津波に向けて押し出す。バリヤーは海面を滑るように巨大津波に向けて進んでいく。分身しているレッドファルコン全てが同じ行動を取る。


「レッドファルコンがバリヤーを巨大津波に向けて押し出しました、これはバリヤーをぶつけて、乗り越えた津波を新たなバリヤーで防ごうとしているのでしょうか。」


皆が固唾を飲んで見守る中


「今、バリヤーと巨大津波が激突ぅ」


「デャーーー」


レッドファルコンの腕から光線が発射される。


「レッドファルコンから光線が発射されたぁ」


光線が津波に吸い込まれ津波全体に雷が走り次の瞬間、大爆発を起こす。


「大爆発が起こったぁ、凄まじい水柱と水煙で津波の状況が確認できません。津波はどうなったのでしょうか」


水煙が収まってくる


「水煙が収まってきました、津波はどうなったのでしょうか、津波は、津波はぁ・・・

しょ、消滅しているぅぅぅ」


「キャァァァァ」


飛び跳ねて喜ぶアイドル達、


「信じられない、信じられない、100mを越す巨大津波がレッドファルコンの一撃で完全にその姿を消してしまったぁ・・・海面をご覧下さい、波は荒れています、荒れていますが、海面の高さは通常と変わらないのではないでしょうか・・・


私達は守られたのです・・・日本は守られたのです・・・奇跡の、正義のヒーローレッドファルコンによって私達は守られたのですっ、ありがとうレッドファルコン、ありがとうレッドファルコン、本当にありがとうぅぅぅ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



俺は守りきった。リア達を、リア達の住む、俺の大好きな日本を・・・

もう俺には力がエネルギーが残っていない、あれだけの質量の津波を2波も押さえ込んだのだ。

しかも地上で活動出来る時間をとうに超えている。それに普通に比べるとエネルギーの減りが早い。

その中で分身やバリヤーを維持しつつ、最後にファルコンショットを使った。

もう立っているのもやっとだが、リア立ちの前で情けない姿は見せたくない。倒れ込みそうになる身体を精神力で押さえ込み立つ事は出来たが、命の火が消えかかっているのが感じられる。

これは「宇宙の禁忌」を破ったことによる宇宙の神の罰だろうな、だが神罰なら破った瞬間に下されるかと思っていたが、きっと守り抜くまで待っていてくれたんだろう、いいところもあるじゃないか、宇宙の神も・・・海を見つめながらそう考えていると、リア達から声がかかった。


「朝人さーーーん」


ちょっ、その名前で呼ぶのはやめて欲しかったと思いながら、リア達の方へ向き直り見下ろす。そこにはハラSUNを先頭に、アイドル達が全員並んでこっちを見ていた。


「せーの、「「「「「「「ありがとうございましたあ」」」」」」」」


リアの掛け声で全員にお礼を言われてしまった。


「俺のほうこそ、お前達に礼を言いたい、お前達のステージが俺に元気を、力を与えてくれていたんだ。お前達を守りたいという気持ちが俺を限界までもたせてくれた。ありがとう」


時間的にはもう夕方になっており、西の空に綺麗な夕日が見えた。


「えっ、うそ」


そんな声が聞こえ見てみると、ユウキがスマホを見ながら皆に話している。




リア視点


「えっ、うそ」


ユウキが慌ててスマホの画面を見せてくる。なんだろうと思って見てみると、それはアサトさんのSNSだった。


「どうしたの?」


皆寄ってきて画面を覗き込む。そこに呟かれていたのは


「救いを求める命がある、そして俺には守る力がある、ならば俺は救おう。俺が俺である為に。たとえこの命失われるとしても俺は最後の瞬間まで俺で有り続ける」


命が失われる?どういう事、えっ、意味がわからない


「朝人さーん、死なないよね、大丈夫だよね、またライブ来てくれるんだよね」


「・・・・・・」


「朝人さんのSNSに・・・」


その言葉に他のアイドル達もユウキやワカコに聞いて俺のSNSを開き、驚き俺を見つめてくる。


「・・・・見たのか」


「えっ、もしかして本当のことなの?アサトさん死んじゃうの?」


「俺は「宇宙の禁忌」を破った。その償いはこの命だ。

だがお前を、日本を守ることができた。お前達を守る為なら俺の命なんて安いもんだ・・・・・俺に後悔は無い、満足して逝ける」


「そんな・・・・いやだ、死んじゃいやだ、死なないでよぉ」


泣きながらリアが叫ぶ。


「ありがとうリア、お前にそう言ってもらえるなんて俺は最高のクリスマスプレゼントをもらったな、俺は世界一幸せな男だ」


「バカあ、死なないでって言ってるでしょ、死ぬなバカあ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ハラSUNのメンバーだけでなく、他のアイドル達からも死ぬなコールがかかる。

俺は本当に守る事が出来て良かったと思う。俺が守らなかったら、この子達は皆、津波に飲み込まれて命を落としていたかもしれない。

守った子達に感謝され惜しまれる、初めての経験だがいいもんだな、ヒーロー冥利に尽きるってもんだ。


「最後に、リア、エム、ユウキ、ナナ、ミン、カリン、ワカコ、今日まで本当にありがとう。

戦う為だけの俺の人生で、お前達を知れたことが、荒んだ俺の心をどれだけ癒してくれたことか・・・

これからお前達はもっとでかくなっていくだろう。なんたって俺の、レッドファルコン一推しのアイドルなんだからな・・・・

今回、津波は止めることができたが、地震の被害は甚大だ、色々と失った人達も多いだろう、そう言う人々を、日本を元気にして欲しい、癒して欲しい、そしてリア、お前自身も幸せになってくれ、約束だぞ、それが俺のさい ご の ね が  い   だ」


そう言うと俺は膝から崩れ落ちうつ伏せに倒れる。


「いやああああああああああ」


リアの絶叫が聞こえる・・・


そうして俺の意識は閉ざされていった・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る