7、地の文ってなに?(比喩や語彙力について)


の文』とは、小説の中でセリフ以外の文章のことを言います。

 そうなると、小説のほとんどは地の文でできていると言えますね。

 けれど、本文と言ったり、その小説そのものをさすことが多いので、『地の文』と呼ぶことはあまりないと思います。

 

 このエッセイの『第2回掌編小説を書いてみよう』では、実は『地の文』とは説明しないでこの地の文を書いてしまう回でした。

 そう、いきなり実践していたんですね~。

 でも、地の文はこういうものだと説明するより、やってみてから詳しく説明した方がいいかと思いまして。

 詳しくは、第2回を参照していただきたいのですが、その時の内容を簡単に説明すると、5W1Hプラスαアルファがあると、なんとなく掌編小説の雰囲気が出ますよという話でした。

 

  *


 地の文には、大きく分けると2つあります。

 一人称の地の文と三人称の地の文です。

 どちらかを選んで書くようになります。

(混在するのは、あまりお勧めしないのですが、章ごとなどで切り替えスイッチするのは良いかと思います)

 構成している要素としては、次のようなものがあります。


・状況説明(5W1H)。

・容姿、状態の描写。

・風景、情景描写。

・心理描写(心情、心の中)


 これらの説明や描写を直接見てきたように写実したり、比喩を使い読者が思い浮かべやすいように書いていくと地の文ができます。


 比喩とは何かに例えて表すことで、直喩と暗喩(隠喩)の2種類があります。


・直喩とは、~のようだ。~に似ているという言葉でたとえることです。


・暗喩(隠喩)とは、前述の言葉を使用せず何かに例えて表すことです。


 ◇直喩ちょくの例

・白魚のような指。(白く細い指の例え)

・バラのような微笑み。(美しい微笑みの例え)

・鈴を鳴らしたような声。(かわいらしい声の例え)


 ◇暗喩あんゆの例

・悲しみで胸が張り裂けそう。(胸は張り裂けない。辛さの例え)

・脳裏に閃光が走った。(脳に光は当たらない。ひらめきやハッとしたことの例え)

・目の奥に火花が散る。(火花はそうそうない。物理的に強い衝撃を受けたり、ショックを受けた時の例え)

 他にも、先の直喩も言い切る形にすると~ようだが取れて直喩となります。


・彼女の微笑みはまさにバラだ。

・彼女の声は鈴の音より美しい。


 比喩を使うことで、そのままの状態や風景を描写をするよりも読者に共感や感動を生むことがあります。ぜひ比喩を使った描写力を高めて下さいね。


  *


 では、どんなことをすれば比喩力が高められるか?

 多くの小説の指南書には、本を読んで語彙力を高めるように書いてあるものが多いです。

 それは確かにそうだと思います。読めば読んだだけ、表現力や語彙力は蓄積され身になっていきます。

 でも、執筆のための勉強として読むのは苦痛なこともあります。嫌々読んでもさほど身に付かないというか、頭に残らないので私はあまりお勧めしません。

 私は怖い系やホラーは苦手なのですが、それでもたまにはそういう場面もありますので、表現力の幅を広げようと読んでみましたが……。悪夢にうなされました。(汗

 山の描写の勉強のために登山家さんが書かれた小説などを読んだこともあります。これは普段読まないジャンルでしたが、興味深く読めて面白かったです。

 いつもは読まないジャンルの本を読むことは新しい発見や新しい言葉に出会うため特に勉強になります。興味が出なかったら次を読むでも良いのでまずは手に取り、興味が湧くかどうか数行読んでみるという行為が大切かと思います。それで湧いたらラッキーですよね☆


  *

 

 他に日常的にできる練習と語彙力や国語力を高める方法を紹介したいと思います。


 一つは、日常の景色を言葉で表現することです。

 私は、よく空の写真を撮ります。単に、空をぼーっと眺めるのが好きなことと、空はキレイでいつ見ても色々な表情を見せてくれるからです。

 

 あるとき、夕暮れのキレイな空が撮れました。

 その時に、ツイッターには写真を載せれば一発で伝わるけれど、これが小説だったらなんと伝えればいいのだろう? と考えました。

 本当に、微妙な色合いの美しい夕焼け空でした。

 逢魔が刻だと時刻だし、茜色というほど赤くはない。ラベンダー色と言えば、そういう感じでもある。けれど9月末の空をラベンダー色と表現するのは季節外れな気もして悩みました。

 その時に、こういう空色は、薄明とかマジックアワーと呼ぶと教えていただきました。

 確かに、そういう言葉はあります。

 たぶん、それだけでも7割くらいは伝わると思います。

 けれど、私が感じた美しさはそれだけでは伝わらない気がして考えました。

 これはその時に書いた、140字小説です。

(140字小説なので字下げはしていません)



足早に帰路につくはずが、金木犀の香りにふと立ち止まり目線を上げる。

夕空が映った。

珊瑚や紫水晶を透かした淡い光を織りながら、夜の帳が降ろされる。

ひどくどこかへ帰りたい気持ちになった。

生まれも育ちもこの土地だというのに、どこへ還ろうと言うのだろう。

僕にもよく分からなかった。



 少しは、私が見た景色や空気が伝わったでしょうか?

 日常の中で良いので心動かされる風景や景色を見つけたらそれを誰かに伝えてみる。

 そんな些細なことが、比喩や表現の練習になったりします。


  *


 あとはもう、手っ取り早く強制的にでも語彙力を高めたい!! と言う気合十分のあなたは、ぜひ検定を受けてみて下さい。

 表現力に直結するかは断言できませんが、語彙力は上がります。

 私は、語彙読解力検定の準一級というのを持っています。これが非常に難しかったです。 

 テキストを買って勉強したのに、テキストからの出題がほとんどないという鬼のような検定で不人気だったのか、もうなくなってしまいました。しかし、類似した検定がいくつかあります。

『日本語検定』と『漢字検定』です。

 日本語検定も私にとっては難しくて、やっとこ準2級をとりました。

 これは、日本語の文法や語彙などの力を見る検定で、国語全般を網羅した検定と言えます。

 社会人になって、国語の内容はもう忘れてしまった……という人におすすめです。

 もう一つは漢字検定。

 学生の頃に取っておけばよかったと思うのですが、私が学生の頃はそれほど流行りではなく、恥ずかしながらいい大人ですが昨年とりました。

 平凡な3級ですけれども、とても勉強しました……。読めるけれど書けない漢字や熟語が身に付きます。

 テキストは、毎年中身はあまり変わらないので受験するしないは別にして、勉強してみるのも面白いかと思います。

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