3、題名《タイトル》をつけてみよう

 小説には題名が必要です。小説は中身で勝負なのだから「無題」でもいいのでは? と思う人もいるかもしれませんが、それはもったいないです。もったいないと言うか、つけた方がお得なのです。

 ただ、ここを読んで下さってる人はまだ書き始めたばかりだと思いますので、いきなり題名をつけろと言われても、どうやってつけたらいいのか困ってしまうかも知れません。


   *


 でも簡単に題名を付ける方法があるので「無題」とする前に、ぜひ試してみてください。


1,小説の主題。内容。あらすじ。題材。

2、本文の抜粋。(セリフ、場面、主人公の容姿)

3、主人公や内容の比喩ひゆ表現。(比喩=たとえのこと)



 この3点のどれかを利用すると、簡単に題名がつけられます。

 私の小説の題名も多くがこれのどれかに当てはまります。

 

 次にあるのは、私の以前書いた140字小説です。この140字小説にはまだ題名がありません。

 どんな題名が考えられるか候補をあげてみますね。


〈例〉

 僕の祖父の家には柿の木があった。

 彼岸になると雲ひとつない青空を背にオレンジ色の実がたわわになる。

 けれど、それは渋柿で幼い時にいたずらに食べようとして痛い目にあった。

『干し柿にしたら送ってやる』

 祖父は笑いながらそう言ってくれた……。


 今はもう送られてこない干し柿。

 けれど、僕はあの渋さと甘さを決して忘れない。


 

1,小説の主題。内容。あらすじ。題材。

「柿の木の思い出」(内容)、「渋柿」(題材)、「干し柿」(題材)

 

2、本文の抜粋。(セリフ、場面、主人公の容姿)

「送られてこない干し柿」(本文)

「あの渋さと甘さ」(本文)


3、主人公や内容の比喩ひゆ表現。(比喩=たとえのことです)

ともしびの実」(柿のオレンジ色から)


 今回、主人公や登場人物が個性的な性格や容姿ではなかったので、その項のよさそうな例が思い浮かびませんでした。すみません。(汗 

 もし個性的な感じだったなら「黒髪の少年」(主人公の容姿)とか「銀の老狼」(登場人物、祖父の比喩)とかかな……?


 いくつか題名候補をあげてみましたが、いかがでしょうか?

 個性的な題名ではありませんが、1~3を使うと、あまり悩まずにかといって作品からかけ離れていることのない題名をつけることができると思います。


   *


 最初にもどりますが、題名を付けた方がお得ですといったのには理由があります。

 

 それは、掌編小説、短編小説において題名も本文の一部と言っていいくらいの情報を読者に提供できるからです。


 私の短編集の題名から例をあげて説明します。


・向太の風車(主人公名と題材)(主人公が男(少年)だと分かる)

・僕らは無重力の中で(本文からの抜粋)(主人公が男(少年)だと分かる)

・マリーちゃんとさゆり先生(登場人物名)(女の子(人形)と女性教師が出てくると分かる)


 これらは主人公、登場人物の名前、一人称(僕、私など)を提示することで、本文が始まる前に人物紹介をするような効果があります。

 

・目覚めさせたのは誰?

・もう一度、恋してもいいですか?

・誰が為の雑学?


 これらは1~3には当てはまらないのですが(強いて言えば1の内容を疑問形にしたものでしょうか?)、疑問形にすることでこれから始まる話の中にこの疑問の答えがありますよと示唆して、興味を持ってもらう効果があります。

 

 *


 他にも題名をあえて意味の分からない謎の言葉にして興味をひき、本文で種明かしをしていく上級の技もありますが、掌編ですとあまりお得感がないので慣れてきてから試してくださいね。

 また、英語やカタカナ語もあまりタイトルに情報(主人公の情報、本文の内容)をのせられないのでお得効果は少ないように感じます。

 例えば、先の小説に英語で「パーシモン・メモリー(柿の思い出)」と付いていたら『えっ、これから始まるのは日本の話じゃないの?』となりますよね。

 あくまで掌編、短編には向かないだけなので、長編を書くときには候補にあげてもいいかと思います。


  *

 

 これはちょっと知っておいた方がいいなという題名のつけ方に、なろう系と呼ばれる流行りのタイトルの形態があります。(2022年現在)

 簡単に説明しますと小説家になろうという小説投稿サイトに多く見受けられる、とても長い題名のことです。

 私も流行りに乗れたらと思いまして、こんなタイトルを付けたことがあります。


・壊れたアンドロイドに気が付いたら恋をしていた件(あらすじ)


・鬼とかすみ~薬師の私は禁じられた山で優しい鬼に出会いました~(あらすじ)


 どういう効果がついている題名かと言うと、ズバリあらすじがわかる効果があります。

 このあらすじ系タイトルは、最初にネタバレはするものの読者が想定していた内容と違っていたというがっかり感を阻止できるメリットがあります。

 ですがこれは、掌編、短編にはバランスが悪く、本文より長いような印象を与えたり、あらすじで出尽くして逆に本文に興味を持たれない可能性もあるのでご注意ください。(先の題名も、中編、長編小説につけました)


  *


 悩み抜いてこれだ! という題名を付けると作品により愛着がわいてくるかと思います。

 簡単なタイトル付けに慣れたらぜひ、独自の個性的な題名を付けて下さいね。

 

 掌編小説に題名が付いたので、これでカクヨムに最初の作品が公開できる人もいるかと思います。

 ここまで読んで初めてカクヨムデビューをした方がいましたらぜひ教えて欲しいです。



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