第12話 副団長VS2番隊隊長

「これは長引きそうな組み合わせなのじゃ」

「この組み合わせは動き出しが遅そうったい」


アレストVSツェルンの組み合わせを聞いてノルンとマカトが試合の雰囲気を考えてた。


「まぁ確かに動き出しは遅そうやけど決まるときは一瞬なんやろなぁ」


「あいつら2人して遠距離の奴らだろ? 早撃ちっつーわけでもねぇんだからそんな一瞬で決まんのか?」


ポルトの言葉を聞いたゼーストがポルトの方を向いて訝しげに疑問を伝えた。


「早撃ちやないけど、2人とも弓と銃がメインやからな~」


「2人して弓と銃しか獲物持ってなかったらどーすんだ?」


「そしたら俺とポルトが止めるさ」


「さすが団長殿なのじゃ」

「さらっと止めるって言ってるったい」


隊長達と談笑していたら歓声が大きくなった。


「すごい歓声ったい……」

「アレスト副団長殿の人気も凄まじいから当然なのじゃ」

「黄色い声援が多いな~俺悲しくなるわ」

「ケッ! どっちも負けちまえ」


さらっと『どっちも負けちまえ』と言ったゼーストが左右に居るノルンとマカトにボコボコに殴られていたが観客はそれに気づかないくらいに会場に歓声を送っていた。


『え~、この試合は両者共に使用武器が遠距離のみなのでセラスタ団長とポルト隊長が決着のタイミングで止めに入ります! 勝敗は団長が判断を公正にいたします!』


「だとよ。ポルト準備しとけよ」

「ゆっくり見させてくれへんのな」


すぐに止めに入れるように剣の柄に手をかけて椅子から立ち上がって第弍試合を観戦するようにした。


「セラスタ様……剣を構えている様子も素敵……!」

「ポルト様の紺色の髪とセラスタ様の白色の髪がよく映えるわ!」


『試合 開始!』


そのような内容の会話を始めた貴族の令嬢達を放置してカルエトが試合開始の合図をした。


「やっぱりな~。お互い膠着状態やんけ」

「しょうがないだろ? お互い一回勝負みたいなとこあるんだから」

「もし先に仕掛けた方が弾を外したらほぼ確実に負けが決まるんやったら、しゃーないんやけどな」


セラスタと会話をするポルトが退屈そうにあくびをする。


「確かに外したらリロードの時間は無いと思うのじゃ」

「それはそうったい」

「つまんね~試合になりそうだな」


ノルンとマカトが試合の厳しさを確認しているとまたゼーストが空気を読まないことを言ってまた2人に殴られていた。


『やはり膠着状態になった! この試合は外したら確実に負ける! それが分かっているためお互い先に手を出すことができない!』


膠着状態になっている理由が分かっていない観客も多かったため、カルエトが実況で膠着状態になっている理由を簡潔に伝える。


「ーー動く準備してる」

「どっちが?」

「ツェルン」

「ほんなら準備しとこか」


セラスタとポルトが止めに入る準備を始める。


「俺も準備するか?」


控え室から戻ってきたセレストが準備をしているセラスタとポルトに声をかけた。


「うお! ほんまビックリした~」

「問題ない。その代わり観客席見張っとけ」

「ん。分かった」


セラスタに言われた通り観客席の方を注意しながら椅子に座ってアレストの試合を見ていた。


「副団長怪我はもう大丈夫ったい?」

「かすり傷だったし問題ねぇよ。心配してくれてありがとな」

「べ、別に怪我のケアが僕の仕事だから心配するのは当然ったい」


セレストの感謝の言葉に照れて頬を赤くして顔を逸らすマカトを微笑ましそうにセラスタ達が見ていた。


「マカトも素直に感謝の言葉を受け取ればいいのじゃがな」

「う、うるさいったい!」


ノルンにからかわれてさらに顔を赤くして反論するマカトの頭をノルンが撫でて、セレストが撫でて全員がマカトの頭を撫でた。


「な! なんで全員して撫でるじゃん!」

「せやなぁ。流れ……?」


ポルトに流れと言われてポルトのことをポカポカと殴っていたが痛くなかったからか、ポルトがニコニコしながらマカトのことを見ていた。


「ポルト」

「はいよ」


セラスタが剣を構えたのを見てポルトも短剣を構える。


「なぁポルトってメインの武器何なんだ?」


短剣を構えているポルトを見てセレストが椅子に座りながら聞く。


「ん~? 銃」

「ぜってぇ嘘」


セレストのことを見向きもしないで適当に答えたポルトを指してゼーストが問い詰めようとした。


「てめぇがまともに戦闘してるとこすら見たことねぇぞ?」

「そりゃあお前さんが前線におるからやない?」

「わらわも見たことないのじゃが?」


ノルンが扇子で口を隠しながら笑顔でポルトに詰め寄って問いただす。


「おぉ……圧が強いんやけど……だ、団長さぁん!」


笑顔で詰め寄るノルンから逃げてセラスタの後ろに避難してセラスタに助けを求めた。


「可愛い子ぶるなポルト」

「ひどい!」


セラスタの肩を掴むポルトの手を払ってポルトから目を逸らしてタイミングを図っている2人の方を見た。


『ツェルン隊長! 動いた! アレスト副団長に距離を詰める!』


カルエトの声が響いて談笑していた隊長達がアレストとツェルンの方を見た。


「なんであいつは距離詰めてんだ?」

「少しは自分で考えよ。これだから特攻しかできない阿呆は嫌なのじゃ」

「あぁん!? なんつったノルン!」


首を傾げるゼーストを見て、ノルンがため息をつきながら小さく呟いた言葉を聞いてゼーストとノルンが睨みあう。



そんな2人を見てセラスタとセレストと隊長達は呆れたようにため息をついた。



会場に1発の銃声が響く。


『そこまで!』


銃声が響いた瞬間セラスタとポルトが2人の間に入ったのを確認したカルエトが試合終了の合図をした。

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