第2話 団長と令嬢

「は~い! 休憩終わり!」

アレストの声を聞いて各々自由に休憩してた全員が稽古場に集まった。


「誰と稽古したいか言ってけ」

「アルベル団長!」

稽古場に来てた全員が一斉に声を揃えた。


「セラスタさん。どうするんすか?」

「俺とやりたいやつ何人いる?」

「えぇと……」

手を上げている人を1人1人指で数えながら

『1、2……』と数えた。


「ざっと200くらいじゃないっすか?」

「200……ねぇ」

カルエトが言った200人という言葉を聞いて、腰にぶら下げた剣の柄を撫でながら小さく呟いた。


「じゃあ全員まとめて相手しよっか」

「え!?」

セラスタの200人まとめて相手をする発言を聞いて全員が目を丸くして驚いた。1人がおずおずと手を上げて質問した。


「で、でも団長……200人ですよ? さすがに200人まとめて相手はきついんじゃ……」

「大丈夫」

余裕綽々の態度のまま受け答えした。さらに、セラスタは態度を変えず、とんでもないことを言った。


「俺に剣を抜かせたらお前らの勝ちだ。さぁ、皆で俺に剣を抜かせてごらん」


セラスタの剣を抜かない発言を聞いて、副団長2人とカルエトが顔を合わせて肩をすくめた。

「相変わらず強いなぁ」

セラスタはそんな3人の方を見向きもしないで、軽いストレッチをしていた。


「さぁ、おいで」


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ーーー騎士団本部の廊下

「セラスタさん良かったんすか?」

「何が?」

「ホントにね? なんであんな心を折るようなことしちゃったのさ?」

カルエトとアレストからの質問を聞いて、立ち止まって窓から見える月を眺めて答えた。


「あれで心が折れるなら騎士団に向いてないよ」

「それはそうだが……だとしても人が減れば意外と困るんじゃないのか?」

セレストの問いを聞いてセレスは微笑んでセレストの方を見た。


「俺らは人の命を取るんだ。だからイカれてないとやってらんないんだよ。……それに俺がいれば勝てる」


『俺がいれば勝てる』虚勢とは思えない言葉を聞いて3人は顔を合わせて肩をすくめながら苦笑した。

「「お前が一番イカれてるよ。セレス」」


アレストとセレストが声を揃えて呆れたようにセレスに指を指しながら言われてセレスは『あはは!』と軽く腹を抱えて笑った。


「そりぁ俺だもん! 身分だけじゃなくて性別まで偽って騎士団団長やってる時点で充分すぎるほどイカれてるだろ!」

「確かに、それはそっすね~」

馬車の迎えが来て3人で一緒に帰途についた。


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ーーー翌朝

「セレス~朝だよ。」

「んう~~あと10日……」

「それは無理だぞ?」

「じゃあ、あと1日」

「それも無理っすよ!」

朝から3人が起こしに来た。


「セレス今日舞踏会の招待状届いたから早く起きてよ!」

アレストから揺さぶられて催促される。


「嫌だ! 絶対やだ! 舞踏会なんか行きたくない!」 

「「「駄々をこねるな!」」」

3人に怒られて渋々起きてから服を着ようとしたらまた怒られた。


「「「だから! 服を! 急に! 着るな!!」」」

「は、はい……」

その直後にサミダレが来て舞踏会用のドレスを着た。


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ーーー舞踏会場

「セレス様! お久しゅうございます」

「お久しぶりです」


「セレス様。本日もご機嫌麗しゅうございます」

「ご機嫌麗しゅうございます」


「セレス様。本日は体調が安定しているようで安心しましたわ」

「ご心配ありがとうございます。心配をかけてしまって申し訳ございません」



「病弱設定疲れた。もう帰りたい。稽古場で剣振りたい」

「駄目だよ。セレス」


壁の方に避難してアレスト達に愚痴をこぼした。セラスタ騎士団は、ルーデンダルク家所属の騎士団という扱いだから、セレスが舞踏会に参加する場合はセレスの護衛としてアレストとセレストが舞踏会の会場にいる。


「皆セラスタ騎士団の護衛付きで舞踏会を開きたいんだよ。ついでに公爵家のルーデンダルク家の俺と仲良くなりたいだけだよ」

「あと1時間経ったら帰って良いってサミさんから聞いてるからあと1時間頑張れよ。正直俺達も舞踏会のこの雰囲気は嫌いだから早く帰りたい」

「あと1時間……」

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