第17話 お昼

 委員長は通常、昼御飯を三人グループで食べている。

 今回はそこにタチが加わって、四人で机をくっつけていた。

 タチは、二時限目の後に買ったパックの牛乳を咥えながら、三人の話を聞いている。

 大勢いると面倒だとも思ったが、三人で勝手に話してくれるので助かった。

「それでさ~そろそろ『マイニーちゃん』の誕生日だからさぁ」

「買いにいくの!?」

「そう!」

「ガチじゃん! ヤバっ!」

 どうやらまた話題が変わった。忙しい。

 全員が食い入るように間を空けず会話に入っている。台本でもあるのだろうか。そうでなければ何故こんなに速く反応出来るのか説明がつかない。

 誰かが話している途中で他の誰かが話し始める、みたいな具合だ。

 弁当から卵焼きを口に運ぶ。

 甘くない。お父さんめ。

 ふと、委員長にチラチラと見られていることに気が付いた。

 委員長は椅子を少し動かして、あの激流から離れる。

 他の二人は気にする素振りもなく会話を続けていた。

 思う。大丈夫か委員長、あの激流、途中退場は出来ても途中入場は無理そうだぞ。

 タチは心配になるが、それよりも見つめられる不快感が勝った。

「なに」

「あー申し訳ないなぁって思って、なんか私達バッカで話しちゃってるからさ」

 どうぞどうぞ。でも大声で高い声出すのは止めていただきたい。

「別に」

「そっかぁ、良かった」

 真っ直ぐ見ないで欲しいなと思った。

 タチはもくもくとオニギリを食べる。

 実を言うと、委員長と友達になるのは最早諦めていた。無理だ。人種が違う。

 それよりも、もとからいる彼女の友達に友情を感じてもらう方が手っ取り早い。

(だから私に構わずあっち行け)

「戻れば?」

「いや冷た過ぎ……ってかあのさ、鈴熊の話なんだけど。ぶっちゃけ二人って付き合ってるの?」

 顔を近づけて小声で話しかけてきた。さっき食べたのであろうメロンパンの匂いがする。

 それにしても、鈴熊……

「……誰?」

「え、鈴熊天音だよ。昨日二人で仲良さそうに話してたじゃん」

「知らなかった」

「え、名前知らなかったの!?」

「うん」

「自己紹介とかしないの?」

「しない」

 そういえば、自身も奴……天音に名乗ってはいないことに気づいた。次に会ったら名乗ってやろう。

「ねえ、私の名前は知ってる?」

「知らない」

「最初に言ったのに……まあいいや」

 委員長は緊張している。

「私、狭山ひのめ、前に助けて貰ったんだけど、それも忘れちゃった?」

「……忘れた」

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