第2話 作戦
鶴橋たち
性別は女
髪型は薄い黒色のロング
仏頂面、顔の変化を見たことがない
表情筋がクソニート
転校生
冬休みの後にこの紅葉坂高校に転校してきたが、それは転校生と聞いてイメージする、華々しいデビューではなかった。
クラスの人間からしてみれば、鶴橋は『いつの間にかいた』存在だろう。
何故かこのクラスにいて、そこに違和感を感じず、いつしかクラスの一部になっていた。
一員ではなく、一部である。
鶴橋が転校してきた時、ちょうど担任は病気を患っていて、鶴橋を紹介出来なかった。
いわゆる自己紹介タイムというやつがなかったのだ。
故に、きっと鶴橋の存在を一番最初に認知したのは、いやもしかしたら認知されたのも天音だったかもしれない。
だからどうというわけでもないが、天音は何とはなしにその座敷わらしのような女を視界の端に捉えていた。
印象を簡潔にまとめるなら、つまんねぇ女、そう呼ばざるを得ない。
鶴橋の存在に気が付いたクラスメート(女)が、度々鶴橋に話しかけているのだが、それへの対応は決まって「はあ」とか「へえ」だとか、必要最低限の反応のみ。
一番長くて十文字だろう。それ以上長く喋ればきっと死ぬのだ、おいたわしや。
さて、そんな鶴橋は、毎朝いの一番に学校に来ていったい何をしているのか。
それは勉強でもスマホでもなく、ただ窓の外を眺めることだ。
窓の外……いや、太陽を見ているのかもしれない、こんな朝にはそれと時計くらいしか流動的なものはないのだから。
彼女の席は窓際だ、したがって、誰も外側から彼女の素顔を見ることは出来ない。話しかけなければ。
天音は考える、どうすれば鶴橋より早く学校に着けるか、あるいは、鶴橋を遅く登校させられるか。
一人になりたいだけなら、別の教室に行くのでもいいのだが、わざわざ探すのは面倒くさい。
図書室も自習室も人はいる、静かな場所に居たいのではない、独りの場所に居たいのだ。
だが、これ以上早く学校に行くとなるといよいよ完全に日の出前に到着となる。癒しを求めるためにそこまでの苦労を払うのは本末転倒のような気もした。
ならば後者だ、鶴橋をこの朝から追い出す。
天音は口を開けた、自信はなかったが、最初の一言は思いの他すんなり外に出る。
「俺はさ――」
名付けるなら、嫌み作戦――!
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