第4話 栄枯盛衰
ライフはミカリの肩に手を回すと、ミカリごとスッとその部屋から消えた。
次の瞬間には、二人は透明なドーム状の覆いが被さった直径100メートルほどの
円形の室内へと移動していた。
室内には様々なアンティーク家具や天幕のついたベッドなどが
センス良く配置されていて
ドームの上に広がる空は真っ青で、空の下には地平線が見える。
端に駆け寄って地平線を呆けた顔でミカリは見つめながら
「こ、ここは?」
ライフは静かにミカリの背中に近寄ると
「魔王城の私の居室だ」
ミカリは水平線の方を向きながら
「も、もしかしてっ!魔王城って浮いてる!?」
興奮した様子でライフに尋ねる。ライフは軽く笑って
「ああ、さすがだな。空を浮いて常に世界を移動している。
なので人間たちは容易く私を襲撃できない。それに……」
ライフはニヤッと笑って流れるような銀髪をかきあげると
「ここは分かり易い的に過ぎない。人間たちは目に見えるものしか信じないからな」
ミカリは顎に手を当てて考えてから
「つ、つまり、本拠地が別にあるってことね!」
ライフは黙って頷いた。そしてミカリの肩を抱いてまたその場からスッと消える。
次に二人が現れたのは、黒いビルが聳え立つ広大な廃墟の中だった。空は星空だ。
「かつて興隆していた大帝国の首都だ」
割れた道路の上から辺りを見回してライフは言う。
ミカリはワクワクした感じを前進から醸し出して見回しながら
「いっ、いいわ……いいわぁ……素晴らしい廃墟!
ディストピアものの舞台にふさわしいかも!」
ライフは微笑んで、ミカリを見下ろしながら
「ふっ……やはり変人だな。だが、ミカリからは文化の匂いがする」
ミカリは慌てながら
「ぶっ、文化というか……サブカルというか漫画とアニメというか……」
ライフはブツブツ言いだしたミカリの肩を再び抱いて
その場からスッと消えた。
二人はひび割れた噴水の近くのひび割れたベンチへと移動する。
その周囲は、雑草と雑木がいい加減に生い茂っているが
かつて栄華を誇った文明の廃墟のようだ。
その場所をグルッと囲うように二階部分や壁が欠けた
宮殿跡の廃墟が見える。
ミカリはもはや興奮した様子で
「……なっ、なんか、栄枯盛衰って感じがする!
ライフちゃん、趣味良いね!」
ライフはベンチへと座ると
「かつて、このベンチに座り、ジョニオラス天帝教皇と
そして、彼の一番の親友である大魔道ネルファゲルトは語り合ったそうだ」
ミカリも慌ててその横に座って
「お、おお……早くもジョニオラスの説明をしてくれるなんて」
嬉しそうにライフの美しい顔を見つめる。
ライフは真剣な顔で星空を見上げ
「……この星はネルファゲルト星という。
大魔道の家名が太古の昔に命名されて、その後延々と伝えられている」
そしてミカリを見つめると
「ミカリ、私のパートナーになってはくれないか?
ジョニオラスとネルファゲルトのように」
ミカリは両手を軽く上げてのけ反るというオーパーリアクションで反応すると
「つっ、つまり、勇者として異世界に召喚された私と
魔王のあなたが組むってことね?」
ライフは真顔で頷き、ミカリの様子を見守る。
ミカリはしばらく考え込んだ顔をすると
「お断りします」
ニコッと微笑んだ。
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