第9話 妹は強い
「お兄様、ご無事ですか!」
屋敷の前に一台の馬車が止まったかと思うと一人の美しい少女が慌てるように降りてきて出迎えていたアインに抱きついていた。
「マリーナ、私は無事だよ、こちらにいるマサキさんに助けられたんだ。」
俺はアインに連れられ出迎えの列にいたのだがアインに紹介されることで前に出る。
「マサキ様、兄アインを助けていただき感謝します。
私はアインの妹、マリーナと申します。
以後お見知りおきくださいませ。」
「丁重な挨拶いたみいります。
私はマサキと言います。
しかし、私はアインさんを偶然助けることが出来ただけです、それなのにこれ程の好待遇で迎え入れてもらい、こちらの方こそ感謝しかありません。」
「マサキ様は謙虚な御方なのですね。
お兄様、そもそも護衛をロクにつけずに領地に向かった事を反省してください。」
マリーナに責められアインは首をすくめていた。
「そういえば、アインさんは何で少ない護衛で移動していたんですか?」
「マサキさん、その事は今言わなくても・・・」
アインはマリーナの様子をチラチラ伺っている、どうやら妹に聞かれたくない話のようだった。
「お兄様、私に隠し事ですか?」
マリーナは笑顔なのだが、その笑顔の裏に鬼がいるような錯覚を覚える。
「マリーナ、ちがうんだ!」
「何が違うのですか?公爵家の当主がその身を危険に晒したのです、さぞかし火急のご用事が合ったことと思いますが・・・」
マリーナの目は疑いに満ちている、そして言い淀んでいる様子を見る限りアインが後ろめたい事は間違いないだろう。
「どうやら込み入ったお話のようですね、どうでしょうマリーナ様もご帰宅なされたばかり、一度お部屋でお休みになって兄妹二人の時にでもじっくりオハナシすればよろしいのではないでしょうか?」
俺は逃走という選択肢を選ぶ、使用人達からはよく言ったと賛同を示す力強い眼差しが向けられていた。
「あら、私としたことがお客様の前で失礼致しました。
お兄様、御部屋でジックリとお聞きしますから・・・
逃げれると思わないでくださいね。」
「はい・・・」
マリーナの眼はアインの心を折るのに充分なチカラを発揮しているようだった。
マリーナに連れられトボトボと歩く姿に俺はドナドナを思い出すのであった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます