想像のつかない恋の結末
受験の結果は不安だったが無事に合格だった。
私は晴れて四月から県外へ一人暮らしをすることが決定した。
それを今から
報告ともうひとつこれが一番私にとって大切なことなのだが、隼人さんに対する恋心を捨てる日でもある。
少し予定よりも早くなったが、早いうちに失恋しておいて数日立ち直れないのは確定しているのでなるべく早く自分の心をへし折っておこうと思ったのだ。
「いらっしゃい、久しぶりだな。色々聞きたいこともあるしほらここ座れよ」
私がお店に入ると隼人さんは、嬉しそうに微笑んでいつもの私が座っている席に案内してくれた。
「紅茶?」
「コーヒーで」
「珍しいな、本当に飲めるのか?」
「今日はそういう気分なんです」
隼人さんはそれ以上何も聞かないで二人分のカップにコーヒーを注いだ。
「はいコーヒー」
そう言って私の目の前にコーヒーを置いた。
私は、「ありがとうございます」とお礼を伝えた。
隼人さんは私の正面の席に座って目を合わせてくる。
結果を早く聞きたいと顔に書いてあるように見えた。
「私、四月から県外で一人暮らしになりました。第一志望のところ無事に合格しました」
「…おめでとう!良かったな、そっかぁ…もうお前ここに来なくなるのか…寂しくなるな」
私はその言葉を聞いて本当に最後なんだと心底思った。
心臓がキュッと握られているような感じがして苦しい。
言わないとって頭では分かっているのに、口からそれは出ない。
私はコーヒーを一気に口に流し込んだ。
苦味が口いっぱいに広がって止まっていた思考が動く。
「隼人さん」
「コーヒーそんな一気に飲んで大丈夫か…?」
「大丈夫です、今から私の最後のわがまま聞いてください」
私は深呼吸をした。
大丈夫、言える。勇気を出して。
「私は隼人さんの事大好きです…その、三年前に私に優しくしてくれてありがとうございました。もうこれで好きって言うのは、終わりにしますだから…最後に私の事盛大に振ってください!あ、でもあれですよ?嫌いとかはやめてくださいね?泣いちゃうので」
ちゃんと笑えているだろうか?
いつもより笑顔が作れない。
今にも意識していないと泣きそうになる。
私の長いようで短い片思いが終わるせいなのか、この店で彼と過ごした時間を思い出してしまう。
隼人さんの顔が見れない。
…困ったなぁ、隼人さんのご尊顔を拝めるの今日で最後なのに。
「お前とは付き合えない…そう言ったらお前は、
私は彼の予想外の返答に顔を上げた。
彼は眉を下げて申し訳なさそうな顔をしている。
どうして?私は貴方にそんな顔させたいわけじゃないのに。
「ごめんな、お前に迷惑がかかるのは分かってるでも、お前が俺に向けてくれる好きを他の人に向けて欲しくない…俺だけに向けて欲しいって」
こんなかっこ悪い大人でごめん。と愛おしそうに彼は、私を見つめている。
「…なんで両想いになっちゃったんですか!私…隼人さんに振られようって思って今日ここに来たのに…どうしてまだ好きでいて良いみたいな感じにするんですか!」
幸せな事の筈なのに受け入れられない。
長年の恋が実っただなんて思えなかった。
「私を傷つけないための嘘ならやめてください、もし好きになったとしてもいつ好きになったんですか?そんなタイミングなかったと思います」
私がそう食い気味に言うと隼人さんは困惑している様子だった。
「なんで俺素直に気持ち言ったのに嘘って思われてるの??」
「嘘だって思いますよ!全くそういう素振り見せてないんですから!」
「それは俺が悪いかもしれないけども!」
「私の恋心を返して欲しいです!…ご馳走様でした!」
私は立ち上がって会計を済ませてお店を出ようと考えていると、隼人さんが手を握ってきた。
「な、ななな何を?!」
「いや?何となくまだ一緒にいたいなぁ…と思いましてですね?」
彼の口から絶対出なさそうなセリフが出てきて私は、口をパクパクとしている。
言葉が出てこない。
「言い逃げなんてさせるつもりないからな」
「わ、私…本当に最後のつもりで…ひょえ!」
隼人さんが指を絡めてきた…いわゆる恋人繋ぎである。
ニギニギとその感触を楽しんでいる隼人さん。
私は、反対に無表情でその場から動けない。
「好きだよ、ちゃんと下心のある方だから安心しろよ?」
私の長年の恋は想像のつかないような結末を迎えてしまいました。
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