恨みとは気が付かぬうちに買ってしまうもので
私の頬の緩みは治まらなかった。
帰っ後に
なんと!
「暗い時間に帰るんなら俺を頼ってもいいから」と言って連絡先を押し付けてきた。
私はそれに戸惑いながらも受け取って登録した。
それを見た彼は満足そうな顔をして帰って行った。
嬉しいけどとてもね嬉しいんだけどね?流石に好きな人でもどうなのだろうか…遅い時間に帰る時に頼るのは…なかなかに申し訳ない。
棗にそのことを伝えると「グイグイ行く時とそうじゃない時が極端すぎておかしくなりそう」とメッセージを返された。
棗はその後に「早く寝ろ私は寝る」と送ってきた。
冷たいなぁ棗ちゃんは(ハート)と送った日には明日卍固めされる可能性があるのでお休みと返して寝ることにした。
夢なのかと疑いたくなる出来事ばかりで私の頭はどうにかなりそうだった。
隼人さんが私に対して一喜一憂することなんてあるんだと思ったし連絡先を交換してしまったし…後は…ってまさかね!本当に夢の可能性がある。
私は目をつぶってこれが本当に夢であることを証明するために眠ることにした。
朝起きてスマホを確認するとそれは現実だった。
なんなら私が寝た後直ぐに隼人さんからお休みというメッセージがきていた。
「嘘だ!」
私は重たい瞼がバッチリとそれで開いてベットから転げ落ちた。
私は動揺している。
隼人さんの連絡先を持っている自分にビビっている。
嘘でしょ…?!
だって最初に会った時あれほどしつこく連絡先くださいといっても!土下座をしても!彼は硬い鋼の意思で私に連絡先を教えてくれなかった。
それが私の手元には…ある。
それも私が覚えているのが事実ならば隼人さんからくれたのだ。
「…うん!学校行こう!」
現実逃避…もとい勉強をするために私は制服に着替えて学校に行くことにした。
歩けばまぁ良いんだけど歩いて四十分くらいかかるから出来るなら朝は歩きたくないので電車を選んだ。
電車に乗って空いている席に座ったら私はまず隼人さんに昨日のお礼と朝の挨拶をした。
ヤバいここが外だと分かっているのに私の表情はだらしなくニヤニヤしている。
これも何もかも隼人さんがいつもみたいに素っ気なく対応してくれないからである。
これでは勘違いしてしまう、私に対してミリ単位でもそういう感情があるのではないかと。
勘違いしちゃいけないのに全くない可能性に縋ってしまう私は本当に彼のことが大好きなんだ。
諦めたくても諦めきれなくて私から諦めるのが出来なくて、好きな人にいっその事ひと思いに振って欲しいと望んでしまう。
「ばあさん!邪魔なんだよ!」
私はその声で俯いていた顔を上げた。
金髪の若い男性におばあさんが絡まれているところだった。
「ご、ごめんなさいねぇ…今退きますから」
「本当に迷惑だよとっとと向こう行けよ」
こういう敬意を払えない人は大っ嫌い。
私は立ち上がっておばあさんに声をかけた。
「おばあさんここ空いてるので座ってください」
「ありがとうございます…ごめんなさいねぇ」
「大丈夫ですよ」
一日一善は大切。
私は少しだけ嬉しくなって気持ちがるんるんになっていると金髪の男が不機嫌そうに私を見た。
私はそれに表情を変えず頭を下げてその場を去った。
私はその時何も無いなんて思っていた。
帰りにあんな思いするなんて思ってもみなかった。
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