第4話 共感覚
――廊下ではただ1人の男だけが、カツカツと足音を鳴らし、ゆっくりと歩いていた。
銃を持った特殊部隊のような人たちがその男に発砲した。
男は仮面を着け、黒いコートを着ていた。
黒い手袋をしていたが、何も武器などは持っていない。手ぶらだ。
体格はよく、身長は170cmを越すくらい。
「あっ…!」
あの数の弾丸に撃たれれば、命は無いだろう。
そう思っていたその時。
弾丸は男に辿り着くことは無く、発砲した全ての隊員が倒れた。
部屋のガラスには鮮血が舞い、廊下は吐き気を催す光景だった。
だが男は振り返ることも、歩みを止めることもせず、ただ部屋の扉を順番に破壊していった。
いよいよ俺の部屋の前に来た。
しかしそこで立ち止まり、扉を壊して口を開いた。
「……出ろ。組織には従うな」
それだけを口にし、廊下へ歩み去った。
まさに戦慄。無機質に殺害していくそのさまは、恐怖の象徴だった。
只者では無いオーラを
「殺されなくて…良かった……」
心の底からホッとした。
だがこうしている場合では無い。
俺はこんな刑務所みたいな施設に入れられるような事はしていない。
混乱が起きている今、ここから逃げ出さなくてはならない。
そう決心し、俺はガラスの破片が散らかる廊下を走り出した。
――施設の作りが分からない俺は、あの男が向かった先へ歩みを進める。
左右には俺がいたような房があるが、その強化ガラスは破られていて、中には誰もいない。
捕らえられたアノマリー達を逃がしながら歩いているのだろう。
しばらく歩くと、さっき俺が検査を行っていた部屋が視界に入った。入口から中を覗いてみると、奥でも武装した男が壁に背を付けて息絶えていた。
「うげぇ⋯さっきの男はどんな能力を持ってるんだろう⋯?」
さっきこの目で見た時は、まるで銃弾が跳ね返ったように見えた。”反発”などであろうか。
銃で応戦する部隊からしたら最悪の能力だな。
俺は中に入った。
周りを見回してみると、デスクに置かれた資料が目に写った。すかさず手に取ってみる。
『
―2023年7月10日
壁外にて能力を使って暴れた後、睡眠したところを捕獲。
目が覚め周りのIADA隊員を虐殺した。
―同年7月11日
激戦に激戦を重ねた結果、捕獲に成功。
部隊総被害:死亡 62名 重軽傷 84名
施設の中で厳重に保管。当人の解放、接触を強く禁じた。
推定される能力は”共感覚”。
当アノマリーが手を伸ばした途端、隊員は銃器にて自殺。銃弾もほとんど当たらず。
推定ランクは、Sである』
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