第338話 遊びに行こう。テンプレは付き物です



グライス達を回収してから一週間程経過した。魔力自体はほぼ戻っているので色々とやろうと思ったのだが問題が発生した。


「創命魔法で創る子達って基本的に大きい。具体的にこの家の庭程度じゃ全く収まらない」


私の言葉にパパが考え込む。この家の庭はそこそこ広いとは思うのだが如何せん周りが住宅街な為、庭の中に入れたとしても高さが足りない。ケルベロスでさえ高さだけで軽く三メートルは越すのだ。ヒークのような存在ならば創れるが求めている戦闘力には届かない。結果として創れないのだ。一応警察署に連絡して誰も来ない広場で周りから見えない場所を用意してもらうことにしたがそれだってそんな簡単に用意出来るわけじゃない。

そうして待つこと一週間、未だに連絡は無い。それなりに都会の方ではある為条件に合う場所が見付からないのは仕方ないと思う。結果として時間が空いてしまったので今は花奈と二人でカラオケへと向かっている。幸太お兄ちゃんも来たがっていたが予定があるということで泣く泣く来なかった。パパは物凄い心配そうだったけど私が大丈夫だよと声を掛けたら更に心配そうになった。なんか納得いかない。


「ねえねえ、君達二人で来てるの?」

「俺達と一緒に遊ばねぇ?」


カラオケに向かう途中二人組の男の子に話し掛けられた。花奈や私より少し年上に見える。高校生位かな?口振りからは慣れているように見えるが良く見たら二人ともそれなりに緊張しているようで初めてのナンパらしい。花奈も流石に気付いたのか少し照れている。まあ初めてのナンパに私達が選ばれたら何となく照れちゃうのは分かる。


「えぇ〜、みどりちゃんどうする?」

「そこで私に振るの?」


花奈の事だから案外慣れていて受け流してくれると思ってたのに。確かに私も告白とかは受け流してたけどナンパまでは特にされたことないから良く分からないよ?今思えばナンパされなかったのってほぼ間違いなく拓と湊ちゃんのせいだけど。


「花奈はどうなの?」

「え、私は別にいいかなって思うけど」


花奈に小声で話し掛けると花奈は男の子達が居ても気にしないようだ。


「もしかしたらイヤンな事されちゃうかもとか思わないの?」

「私一人だったら断るけどみどりちゃんも居るしね。後イヤンな事って……みどりちゃんは可愛いなぁもう」


私を信用してくれているのは分かった。後そっちは触れないで。


「じゃあいいんじゃない?というかこの男の子達にそういう事する勇気は無さそうだし」


ナンパだけで落ち着かなげにソワソワしてる子達だ。そこまでの事ができるようには見えない。一応警戒だけはするが。


「私達カラオケに行こうと思ってたんだけど」

「カラオケ良いね!行こう行こう!」


花奈の言葉に男の子の一人がテンションを上げて反応する。というか特に意識せずにテンションが上がったように感じたけどもしかしたら普通に歌が好きなのかもしれない。もしくはシチュエーションが好きなのかも。どちらにせよ何となく初々しさを感じる。





そんなこんなでカラオケに男の子二人も連れて来ました。最初は凄くぎこちなかったけど花奈のテンションと男の子の一人のテンションが妙に噛み合ったらしく今では二人でデュエットとかしてます。ノリノリだね花奈。一方私に積極的に声を掛けてくれる子の方は私が顔を見ると顔を赤らめて照れたように頬をかくのが特徴の子です。初々しいなぁ。


「どうして私達をナンパしようと思ったの?他にも可愛い子とか居たでしょ?」

「えっと、実は……うん、その一目惚れしたんだ。僕が君に」


おっと、まさかのこのタイミングでの告白は予想してなかった。という事はもう一人は付き添いに近いのか。


「あいつも花奈ちゃんの事気になってたみたいだからいっそ二人で行かないかって話になって。ずっと前から君達二人の事は街中で見たりして知ってたんだけど二人が並んで話してるのを見て決心がついたというか」


違った。元々私達二人が好きだったけど中々二人での行動をしているのを見ていなかったからちょっと悩んでたと。いやあ、本当に初々しいなぁ。


「えっと、君達からしたら僕達の事なんて大して知らないだろうから急にとは言わない。友達から始めてくれませんか」


いざ話すとなると緊張してはいるがどもらずに言い切ったのには好感が持てる。始まりこそナンパだったけど知らない子に話し掛けるのに相応しい話題提供とか普通は無理だろう。共通点がある訳でもないし。


「…………」

「…………」

「とりあえず花奈、怒るよ?」


告白紛いの事をされている最中当たり前だが周りには花奈ともう一人の男の子も居るわけでこっちを息を潜めて見ていたのでとりあえず花奈を捕まえるとおでこの辺りにデコピンしておいた。本気ではしてないよ?私が本気でデコピンしたら花奈の頭が弾けちゃう。そんなスプラッタ映像見せたくないので物凄く軽めのデコピンだ。膂力が違いすぎてそれでも悶絶してたけど。


「まあ友達なら良いよ?彼氏彼女の関係になるかと言われたら確率はゼロだと言えるけど」


名前こそ未だに思い出せないがあっちの世界では私に恋人らしき人が居たのは分かっている。なのに誰かと付き合うとかは有り得ないだろう。


「ゼロ……かぁ。うん、仕方ないかな。でも友達になれるならそれでもいいかな」


少し寂しそうだがそれでも嬉しそうに笑う男の子に私も笑みを返す。花奈は悶絶している。もう一人の男の子はどうしようか迷って花奈の方へと向かった。そんなある意味穏やかな時間が過ぎていった。





カラオケから出た後四人でゲームセンターにでも向かおうという話になって向かっていると再びナンパされた。今度のは大学生位の男達だ。男達は五人居て男の子達を押し退けて私達の所までやってくる。


「可愛いねぇ。なぁ、俺達と遊ぼうぜ?」

「こんなひょろひょろのガキよりかは俺達の方が楽しませられるぜ?」


私達に話し掛けてくるのは二人で残りの三人は男の子達の腕を取ったりして動けないようにしていた。男の子達は暴れて私達の元へと向かおうとするが体格差や人数差もあって動けそうにない。あまりにも暴れているのが苛立ったのか男の一人が花奈と話していた方の男の子のお腹を殴る。私と話していた男の子も顔を殴られて地面に倒される。


「女の子二人確保〜♪」

「ヒュー♪」


私達は男達に腕を取られそうになる。攫われそうになった女の子を助ける男の子達の構図に少し感動していたが男の子達は流石に動けそうに無いのでそろそろ動くとしよう。


「私達に触れるな。殺すぞ」

「お?怖い怖い〜」


おちゃらけて私の腕を掴もうとしたのでそいつの顎に拳を叩き込んだ。本気で殴りたいけど流石にいきなり五人の殴殺死体とか出来たら男の子達にも花奈にも悪影響ありそうだから制圧だけにしよう。腹立つから後で殺すかもしれないけど。

顎に拳を入れられた男はすぐに動こうとして目をぐるんと回してその場に倒れた。意図していなかったけど脳震盪でも起こしたのだろう。単に顎が近かったから殴っただけなのだが。


「この……!」


花奈に近い方の男は脛目掛けて蹴っておいた。足から伝わる感触的に折れたなこれ。けど容赦はしない。更に倒れそうな男の顔に膝を入れて吹き飛ばす。本当なら殺してやりたいぐらい機嫌が悪いのだからこれ位は許して欲しい。脳震盪起こしたらしい男の股間を踏み付けてから残りの三人に走り出す。男達は戸惑ったようだがその瞬間に男の一人の腹に前蹴りを入れる。くの字に折れ曲がりながら吹き飛んだ男を見て残りの二人はぎょっとする。

その瞬間に顔を殴られた男の子の近くの男に肋骨目掛けてハイキックをする。折りはしなかったが罅位は入っているだろう。崩れ落ちた男の顔面を掴んでもう一人に投げ飛ばす。力を大分制御しているのでほんの少し飛ぶだけだったがそれでも足に当てる事ぐらいは出来た。バランスを崩した男の胸に飛び膝蹴りを当てて地面に押し倒す。咳き込むそいつの顔面に拳を二発ほど叩き込んだ。

五人の男を制圧するのにそれなりに時間が掛かった。力加減がやはり難しい。私の身体は意識せずに握って岩くらいなら砕けるから箸を持つ位の力加減で拳を叩き込むのは神経がすり減りそうだった。

まあ何とかなったから良かったと見よう。骨とか折れたり罅が入ったりしているけどそこは気にしない。というか骨に異常を与えること無く痛みだけとか普通に今の私では無理だろう。前までなら出来たがそれは非力だったからだ。今の私は間違えても非力とか言えない。


「ううん……弱い」


当たり前だけどあちらの世界の人族とは比べ物にならないくらい弱い。純粋な身体能力だけで十倍はいかずともそれくらいの差はありそうだ。ルゥイのような人災であれば一人でこの世界を滅ぼせるだろう。


「まあ気にしても仕方ないか……」


さてと、男の子達は思った以上に殴られていたりしたのか気絶こそしていないがボロボロで今から遊びに行こうとは流石にならない。というかそれをしたら鬼畜だろう。


「花奈救急車を呼んで、えっと二台、じゃない。七台ね」


男の子達だけ救急車で運んでもらおうと思ったが骨が折れた状態で放置するのもどうかと思ったし仕方ないので男達の分も呼ぶように言っておく。


「あとパパにも連絡お願いね。事情は……まあ監視カメラでも見てもらって確認してもらおう。私達の説明よりも分かりやすいだろうし」


今度から拓か幸太お兄ちゃんにも付いてきてもらおうかなぁ?ルーレちゃんだと単純に可愛い子が増えるだけなので駄目です。以前なら凛々しい感じの女の子だったから女騎士とか言われても違和感無かったけど今はちっちゃい女の子だからね。あ、でもルーレちゃんも誘ってカラオケに行くのは良いかも。今度は誘ってみよう。


「みどりちゃん……」

「ん?どうしたの?」

「みどりちゃんって格闘少女でもあったんだね!格好可愛い!最高だよ〜!」


とりあえずこの状況でその台詞が吐ける花奈は大成するだろうなと思いました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る