第328話 悪夢の宴
「やめてくれ!もう……痛いのは嫌だ!」
「大丈夫だよ?すぐに……気持ち良くなるから、ね?」
「ヒッ、あ……ぁぁ……ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!」
これは何だろう?
「//〇◇∥▽ちゃん、もうやめてよぉ……痛いの、苦しいの」
「そうかな?仕方ないなぁ、すぐに忘れさせてあげるね?」
「…………☆♪@&→→♪%.!?!?」
「ほら……私に身を委ねて?」
一体何なのだろう。
「//〇◇∥▽来なさい。話がある」
「?はい」
「良く落ち着いて聞くんだよ」
雨が降っている。
「姉さん」
「……お母さん、お父さん」
「…………姉さん」
「きっと……また会えるよね?」
「きっと……会えるよ」
「そっかぁ。良かった」
私はその手に握った鈍色に光る物を……
「抱き締めてあげられない情けない親ですまない。君の幸せを願っているよ。愛している私の娘℃♡|よ」
場面が切り替わり続ける。時間も場所も切り替わり続ける。私はただそれを見続けるだけ。これは何なのだろう。
「もう……やめ……」
「え?何で?」
何処かの部屋の中で何人もの男達を拷問している。
「……ぁ」
「邪魔しなければ良かったのに、そうしたら苦しまなかったよ?」
豪華な廊下で男の瞳に指を突き入れている。
「何なんだよ!?お前はよぉ!?!?」
「うるさいから死んで?」
洞窟の中に沢山の人が居る。赤く染まっているけれども。
縛られた人達を誰かに殺させている。
「うわぁぁぁ……!」「死にたく……!?」「誰か助けてく……」「熱い……誰か……」
街が燃えている。赤々と燃えていて肉の焼けた匂いが充満する。酷く臭い。
痛い、苦しい、辛い、そう思えたら楽だったのかも。
私に嬉々として拷問をする女を見てそんな事を考えた。だって狂えばその後は戦いから離れられるかもしれないから。けどそれは選べなかった。
結局大して強くないからこうしてやり返されるのだ。面白くない。強さなんて……要らなかった。
「なんで、なんで、なんで、なんで」
ひたすらに呟いて丸い珠を抱え込む。
守ってくれた人に守られるに足る存在であったと思われたいから。
お腹痛いなぁ…………
「まあ良い。今は貴様だ。この場所に逃げ込んだら助かるとでも思っていたのか?私達が本当にこの場所のことを知らないとでも思っていたのか?殺す価値も無いゴミの為に動かなかっただけだと何故気付かない。だがそれも終わりにしてやる。貴様を殺すついでにゴミの掃除もしよう。それが貴様への罰ともなる。死した後ですら貴様のせいで死ぬ者が居るということをしかと覚えておくといい」
あぁ、覚えておくよ。必ずお前を殺す為に。
「俺な、お前が好きだった」
知ってたよ。君の目はずっと私を見ていてくれたから。
「だから、最後の頼みを聞いてくれないか?」
聞きたくはなかったよ。
「ありがとう」
ほら、君がそんな顔をすると思ったから。馬鹿だ。私も貴方も馬鹿だ。
「さよなら……私の初恋の人」
「かつての私はきっと今℃♡|様を助ける為に生き残ったのです。そう思っても良いですよね?」
誰かの声が聞こえる。
「貴女の死を
小さな声の主は今にも消えそうに光り輝いている。
「℃♡|様……私の本当の名前はリュミと言うのです。出来たら覚えていてくれたら嬉しいのです」
「……ん……分か…った」
どうしようもなく悲しい。どうしてあの子は消えて無くならなければならなかったの?
「…………ぅぅ、ぁぁあぁあああ!!!!」
「貴方の爪痕をあいつに残してきなさい」
「!?勿論です。傷跡は必ず残しましょう」
「グルムス……貴方が居て良かった」
「ありがとうございます℃♡|様。私も貴女が居て良かったです」
これらは悪夢なのか?それとも私の記憶なの?
「情けない……この程度の精神攻撃でやられちゃうの?私がいくらそういう系に弱いからってこんな雑魚のやつには掛かって欲しくなかったなぁ」
誰の声?いや私の声?
「そうだよ。対策として私を作ったけど本当に発動するとは思ってなかった。まあ、いいや」
私の目の前に私と同じ姿の女の子、というかもう一人の私が現れる。
「さあ、理屈とかどうなってるのとかは全部終わったらどうせ分かるからさっさとしようか。私の後に続いて。疑問とか質問とかは面倒だから無しね。じゃあ行くよ?」
「我は万象を掌握する王。気高き力も卑しき力も孤高の個も協調の群も果てなき有も限りなき無も全の大も小も我が前には等しく全ては王の手に乗る。それが理である。我が指先に一喜一憂せよ。
私の周囲からくるくると大量にゼンマイが現れる。
「それは全であり無であり全てを内包し全てを内包しない矛盾の理。呼び掛けに答えよ。
その瞬間私の脳裏に今までの失っていた記憶が戻ってくる。全てではない。何か抵抗があって回収しきれなかった物がある。けどそれでもかなりの量が戻ってきた。それと同時に私を悪夢の中に閉じ込めたクソ野郎の顔をしっかりと見た。
「……殺してやる」
不愉快極まりない記憶の悪夢を見せたお前は必ず殺す。死んだ方がマシだと思えるくらい後悔させてから殺す。私に舐めた事をしたのを死ぬまで後悔し続けろ。
「この女の子どうするんですか?祖のおかげで今は動いていませんけど」
「フン、気にする必要は無い。我が
「花嫁にはしないのですか?」
「我に牙を剥き噛み付こうとする花嫁は流石に要らんな。貴様達で分け合うといい。見目は良いから良い欲情の捌け口となるであろう?」
「本当ですか!?それは……嬉しいなぁ。祖に感謝を」
「クックック、構わんよ。これからも我に忠誠を誓い続けるのだな。そうすればより強さを与えてやっても構わん」
「…………あ、話し終わった?」
「!?」
私に不愉快な思いをさせた男と見た事のない男が話し合っていたので何となく待ってあげたのだけど話も聞かずに殺しておけば良かったとほんの少し後悔している。普通に腹が立ったから知らない男の方を殺しておいた。
あっちの世界では魔法を唱えるのに呪文名言った方が楽だから仕方ないと思いたい。地球で幸太や花奈に見せられたアニメとか色々な知識を見て魔法構築が楽になると同時に恥ずかしさも生まれたのはご愛嬌だ。
「貴様!?どうやってあれから抜け出した!?」
「吸血鬼としての特性と魔族としての特性の継承かな?後は……魔法の
「な!?」
「普通よりも頑丈で悪意に満ち溢れた人物だったんだろうね。本当に気持ち悪い。そんなやつに私の力が好き勝手に使われていたと思うとその力を焼却処分したくなるよ。まあ消毒くらいで我慢するしかないけど」
「き、貴様!」
「一番面白いのは所詮半端な貴方だから力の継承の為に……ふふ、多分男の人と体液の交換をしたんだよね……あはははは!ねえねえ、キスでもしたの?それとも身体の関係を?どちらに転んでも……ノーマルっぽい貴方にとっては屈辱的な行為だったんじゃない?それとも逆に目覚めちゃった?」
「小娘がぁ!」
「あはははは!!……死ねよゴミが」
激昂して襲いかかって来た屑の腹を蹴って倒れた瞬間そいつの腹を踏み潰した。私の足はゴミの身体を完全に貫いていた。
「ゲボォァ!?」
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね」
私は何度も何度も腹を踏み潰し足を踏み潰し、腕も喉も股間もありとありゆる所を踏み潰していく。無駄に頑丈なせいで死ぬに死ねない男は私から逃れようとするが逃がさない。
そして最後に顔面を踏み潰して……再生する為に力を眼球に移して隠れようとしたゴミにわざとらしく足音を立ててからゆっくりと眼球を潰した。グチュッという音が酷く不愉快でブチッと潰した感覚も不愉快で不愉快で不愉快で私達を遠巻きに見ていたゴミの眷属らしき者達を一人残らず殺した。遠くにいるやつは強制的に転移させて引っ張りだした。残っている者はもう居ない。
いや居た。眷属ではない。どちらかというと私の関係だ。廃工場の入口に一人の男性が立っていた。
「…………みどり」
「パパ」
大好きなパパがそこに居た。
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