第205話 見付けたのは太古の遺物
売れない劇団員達にお布施?というかお情けかもしれないけど一人に銀貨十枚ずつ渡しておいた。これからも末永く頑張って欲しいと思う。後服装とかは変えた方がいいと思う。
アルフ達と合流したので皆で適当に街をぶらついていく。まだ全然この街を見ていないので色々な所で発見があって少し楽しい。ただ途中にあった紫色の串焼きだけは食いたくない。アルフ達は食べたそうだったけど食いたくない。だってあれ虫の魔物の肉らしいから。幾ら美味しくても流石に嫌だ。
「……これなんでこんな所にあるんだろう?」
歩いていたら有り得ないものを見付けて足を止めた。雑貨店に並ぶ複数の丸い石を見て値段を見てあまりの安さに頭が痛くなった。その場で全部買い取ったらアルフ達も首を傾げていた。在庫にも幾つかあるらしいので全て買わせてもらった。売れない在庫品だったらしいから全部買っても銅貨にすらならなかった。投げ売りより酷い。
「スイ、それ何なんだ?」
雑貨店から少し離れてからアルフが声を掛けてきた。私は路上に設置されているベンチに座ると結界を張った。その動作で思った以上の物なのを分かったのかアルフ達は少し身体を近付ける。
「ん……どう説明したら良いかなぁ。まずこの丸い石みたいに見える物だけど私なら作れる。ただし数は絶対に作れないしこの大きさとなると今の私ならそれこそ百年掛けても作れない」
丸い石の大きさは子供の頭くらいの大きさでそこそこ重たい。それが合計で十七個も売ってあったのだから頭が痛くなる。何処で手に入れたのか聞いてみたが単に落ちていたものを息子さんが持ってきただけだった。見た目は灰色で宝石にも見えないのに何でこんな物を持ち帰ってきたのだろうか?まあ息子さんはまだ十歳にもなっていないみたいだし子供ならではの考えがあったのだろう。すぐに飽きたらしいし。二束三文でも売れただけマシということか。
「百年……えっと、それはそんなに作るのが難しいのか?」
「ん?あぁ、いや条件さえ揃えることが出来るなら誰でも作れるよ」
「俺とかでもか?」
「アルフが重力系統の魔法を使えて圧縮作業が出来るなら」
「重力系統の魔法の時点で使えないんだが」
「まあその魔法が使えたら誰でも作れるよ。力量不足で多分大半の人が断念するけど。今の時代だと作れるのはそれこそ数人じゃないかな?」
「スイは作れるんだよな?」
「混沌のお陰でね。この素因はあらゆる素因が混ざりあった素因だから。これが無かったら私も作れない」
「そうなのか。というかこれは本当に何なんだ?俺達にはただの丸い石にしか見えないんだが」
アルフの疑問に皆が頷く。まあ見た目からじゃこれの正体は分からないよね。というか下手したら私の知り合いだとグルムスとテスタリカ位しかこの形の状態を知らないんじゃないかな。
「ん、これは
私の言葉に皆が食い入るように
「スイ、じゃあそれを使ってアーティファクト作れるのか?」
「作れるよ。作り方も私とグルムスとテスタリカが居れば十分。というかこれを見付けたから早く二人に知らせたい。後まだあるならあの雑貨店に戻って採取してきたい」
「それなら雑貨店の方には僕が向かうよ。アルフ兄とフェリノ姉には採取場所が分かったら取ってきて欲しいんだけど良いかな?」
「分かった。スイはグルムスさんの所に向かって。ステラはスイの護衛を頼む」
「ええ、しっかり守るわ」
アルフ達がしっかりしていて頼もしい限りだ。とりあえず適当に金貨と銀貨を数枚ディーンに渡しておく。何か良い物があったら買って欲しいからね。正直ディーンを一人にするのは心配だけど一人でもしっかり出来るかのテストだと思って割り切ろう。ステラが単独で私の護衛になるのは初めてだし皆自分がやれることを増やそうとしているんだなぁと思うと少し感慨深いものがある。
アルフ達と別れて学園の外へと向かう。グルムス達が
屋敷に向かってグルムスを呼ぶとすぐにやってきた。テスタリカも一緒に出て来たので多分メリーを鍛える為に居たのだろう。そのメリー本人はどうやら屋敷の中庭で倒れているようだが。
「スイ様どうなされましたか?あの娘の様子でも見に来たのですか?」
「ん、違う。これ」
否定すると指輪から
「これは……一体どこで?」
「久し振りに〜見ましたね〜」
「学園内部に
「学園内部ですか。結界に阻まれて分からなかったか。盲点でしたね」
「数は〜どの程度ですか〜?」
「十七個」
数を伝えると二人が驚いた。まさかそんなに残っているとは思わなかったのだろう。当然だ。これだけの大きさの
「なるほど、少し慎重に作る必要がありますね。スイ様はどのようにお考えを?」
「ヴェルデニアがどれくらい強いかによる。正直全てを使って一つのアーティファクトを作りたい」
「それは……まさか五振りを超えるアーティファクトという事ですか?」
「まあ意味は無いと思うけど」
「何故です〜?」
「そもそも力量的に足りないから意味が無い。幾ら強い武器が作れても持ち手が弱ければ宝の持ち腐れ。逆に倒された時が悲惨な事になる」
「ではどうするのですか?」
「一つ考えている事があるけどこればかりは二人の意見を聞きたい。特にテスタリカ」
「何でしょう〜?」
「アーティファクトをこの場で唯一作成した事がありその効力もそして残骸も回収しているテスタリカ、貴女に聞く。《超越者の理》、それはもう一度作れる?そして作れたとして作成することに否はない?」
私の言葉にテスタリカは口を噤む。グルムスは驚いた顔でテスタリカを見る。残骸を回収しているのは知らなかったようだね。
「まあ……作れます。作ることを否定することも無いです。ただ大丈夫なのかは心配ですね」
テスタリカが真面目な表情でそう答える。
「大丈夫かどうかははっきり言って分からない。どうなるのかも良く分からない。でも今のままだとヴェルデニアの元に辿り着く前に私が消耗して間違いなく勝負にならない。それは分かるでしょう?」
私の言葉に二人が頷く。そう例え私の素因が完全回復しても最上位の素因が最低でも二十は増えないと戦うことすら困難だろう。素因は何とか増やすことができたと仮定してもその前に無駄に戦わされるのは御免蒙りたい。だから他の魔族との戦闘は出来る限り私以外の人にやってもらいたい。だがそれが出来るだけの人材が多くない。
「……」
テスタリカは考え込んでいる。それはそうだろう。テスタリカが作ったとはいえそれは三神に依頼されて作ったもの。しかも理ということは三神の誰かに協力してもらう必要がある。自分一人で作れるものではないのだ。
「難しいのは分かってるけどこれを再び作れるチャンスがあるのなら私はやりたい。それにそろそろ……」
私はそこで言葉を区切ると指輪から力の塊を取り出す。ドルグレイから渡された転移門の鍵だ。
「ドルグレイの所にも行かないといけないしね」
修行パートの始まりだ。
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