閑話 二人組の話
「先輩」
「あ?何だ?」
「いや、次はいつゲテモノ系事件起きると思います?」
「はぁ?ゲテモノ?」
「知らないんすか?先輩ってゲテモノ担当の刑事だって署でめっちゃ有名っすよ?」
「おい、ちょっと待て。どういう事だそれ?」
「自覚無かったんすか!?逆にその方が俺にとっちゃ信じられないんすけど!?」
「自覚も何も今お前に言われて初めて知った。というかゲテモノ系事件ってどんな事件だ。全く想像が付かんぞ?」
「えぇ、マジっすか。そうっすね。先輩がゲテモノ担当なんて呼ばれる切っ掛けは間違いなく二十年以上前に起きたっていう被害者消失事件っすね」
「あぁ、あれか。お前どんな内容か知ってるか?」
「詳しくは知らないんすけど轢き逃げされた側の男性が何故か居なくなっていたってやつですよね」
「おう、暴走した車に思いっ切り跳ね飛ばされた映像が残ってるのにその場に居なくて監視カメラからも忽然と姿が消えて更に言えば何処に移動したかもさっぱり分からないとかいう神隠しの事件だな」
「今考えても意味分かんないすよねぇ。仏さんになったならなったでその場に居ないとおかしいしなってないなら何で居なくなったんだって話ですよねぇ」
「まあなぁ。運転手が罪悪感で自首しないと迷宮入りどころか事件になってたかどうかすら怪しいしな」
「それ被害者側誰か分かってましたよね?どうやって特定したんです?監視カメラも解像度悪くて顔なんて分かんなかった筈っすよね?」
「あぁ、それな、実は特定出来てねぇ。その後その付近での行方不明者の欄に監視カメラの映像の男性らしき姿があったからそれにしただけだよ」
「マジっすか!?」
「マジだよ。分かんないんだから仕方ないだろ。どうやっても痕跡すら見つからなかったんだ」
「はぁ……それ良いんすか?」
「良いわけないだろ。だから内緒な」
「うげっ、聞くんじゃなかった」
「とりあえず今追ってる事件追い掛けんぞ」
「うす」
「今回の事件も意味分かんねぇなぁ。なるほど、こいつはゲテモノ系事件だわ」
「あっ、実感したっすか、先輩」
「三十近い生徒、教師が消えたって何だこれ。どう追い掛けたら良いんだよ。ただの学校に監視カメラなんか置いてる訳ねぇだろ」
「ですよねぇ。ちなみに先輩って他にどんなゲテモノ系事件に遭ったことあります?」
「あぁん?そうだなぁ。学校のやつもあったなぁ」
「学校二回目っすか?」
「そうだな、こんな馬鹿げた規模の物じゃなかったが」
「どんなんすか?」
「いじめ被害者が加害者に反撃したその日に屋上から飛び降りたのを教師、生徒が目撃したんだけどな」
「ちなみに反撃とは?」
「階段から叩き落としたりとか色々だな。まあそれは置いといてだ。飛び降りたのに死体が無くなったんだ。地面に夥しい量の血を飛び散らせてるのにな」
「は?」
「いやそのまんまだよ。教師に至っては飛び降りを止めるために屋上に一緒に居たんだぞ?生徒はグラウンド側な。飛び降りたのを見たのは十数名で尚且つ全員確認している。だけどその死体だけ発見出来なかった」
「……ホラーっすね」
「現代じゃ全く考え付かない不思議すぎる事件だな。当然迷宮入りしたよな。痕跡なんざ地面にあった血液しかないのに追えるわけない。というか移動した痕跡も無かった。いきなり消失したとしか言えないな」
「……それどうやったんです?」
「どうもクソもねぇよ。そのまま伝えるしか無いだろうが。滅茶苦茶マスコミに叩かれたよなぁ。あれはちょっと鬱陶しかった」
「ですよねぇ。んで先輩、この事件はどうします?」
「……痕跡探しからだな」
「あります?」
「無いだろうな。俺の今までの経験上こういう事件は手に負えない。それこそこれを知ろうとするなら神にでも会うしかない。ということで適度に頑張れ。じゃないと頭痛くなってくるぞ」
「うす……」
「一番意味分からないゲテモノ系事件ってどんなのがあります?」
「何でお前そんな事ばっか聞くんだ?」
「いや、何かこれから先輩とそこそこ長く行動することになるような嫌な予感があるんすよね」
「それを嫌な予感とか言うんじゃない。有難く行動しろ」
「いや、ちょっとそれは無理っすねぇ。今回のだけで凄いうんざりしましたし」
「それは仕方ねぇなぁ。俺もここまでのは初めてだし」
「そんなもの俺に渡して欲しくないっす……」
「まぁ、諦めろ。それで一番意味が分からないか……両親死亡後の娘、息子同時自殺事件か?あれは理解出来ないやつだからまた別かもしれんが」
「あぁ……俺も聞いた事あるっすねぇ。両親が事故で亡くなった後その日の内に子供二人が自殺したんすよね。しかも自殺用に包丁を買って二人で移動して行くのを監視カメラで発見してるんすよね」
「ゲテモノ系事件かは分からんが意味が分からん事件ではある。というより自殺したのは間違いないとは思うがその精神性が分からんって感じだな」
「凄いっすねぇ。しかも若かったですよね?」
「十四と十三だな。自殺を考えるには早過ぎるんだよなぁ」
「精神的に不安定だったって事っすかね?」
「いや、周囲の言葉を聞くには随分とおかしな姉弟だったみたいだな。弟は極端な位ヤバいシスコンで終わるが姉の方は人によって対応を変えていた節がある。自分の中に独自の世界観を持っている人間の考え方だ。所謂サイコパスってやつだな」
「サイコパスですか……」
「あぁ、俺はそう睨んでいる。まあ真相なんざ今じゃ知りようもないんだが」
「はぁ……」
「ま、そういう人間の考え方とかに共感なんかすんなよ?侵されて頭がイカレちまう」
「そうっすね。そういうのも居るって覚えときます」
「おう、その程度で良い。そういうのと出会うことなんか滅多に無いんだからな」
「でも弟の方の死体は発見されてないんすよね」
「まあな、だからもしかしたら偽装して何かしらで生きている可能性も無くはない。ただそんなものを想定していたらいつまで経ってもこの事件追い掛けなきゃならんぞ?適度で良いんだよ」
「うす、じゃあ先輩とりあえずで良いんで昼飯奢ってくれません?」
「はぁ?」
「いや間違えて財布忘れたみたいで」
「……はぁ、分かった、今回だけだからな?」
「うす!一旦ゴチになります!」
「調子の良いやつめ」
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