第196話 体育祭が終われば
メイド&執事喫茶で遊んでみたけど意外にというかそこそこ楽しかった。アルフ達のような身内と遊ぶのが一番楽しいのは間違いないがこういうのもありかもしれない。時々はこうやって遊ぼうかな。
「……」
ただ一日が終わった後に全員倒れているのはちょっとどうなのかなと思わなくもない。ポーズにしてもちょっと凹むよ?目の前で倒れているメイドさんの子をそっと持ち上げると服がしわくちゃにならない様にサッと脱がした。あっ、ちゃんと閉店した店の中でやってるよ。
脱がされた子は私が持ち上げたのが驚いたのかそれとも抵抗出来ずに脱がされたのが驚いたのか目を瞬かせている。他の子も同様に持ち上げて脱がしていたら他の子も驚いている。何人かは顔を赤くして待っているのだけど待つなら自分で脱いでくれないかなぁ。
全員分脱がしたら更衣室に放り込んだ。いや着させるまではしないよ?面倒だし。あと私は更衣室には入らないでおいた。何か嫌な予感したから結界を張って脱いで指輪から新しい服に着替えた。
暫くしたら全員着替えて出てきた。というかそろそろ帰っても良いだろうか。一日だけなら別にいいけど残りの体育祭を全部ここで過ごすのは何か勿体ない感じがしてやりたくないのだけど。
「ん、とりあえず帰っていい?」
「あ、うん。ありがとね!」
「スイちゃんのお陰で自信が付いたよ!」
「あっちのメイド喫茶には負けない」
「「「スイちゃんありがと!!!」」」
……まあ、こういうのも悪くない。たまにはね。
そして、今日は体育祭最終日だ。あれからちょっとばかり思うことがあってあんまり売れていなさそうな店を盛り上げる努力をしてみた。その度にその店の子達から最後にはありがとうと言われるのだ。くすぐったいけれど良いものかもしれない。
最終日は閉会の挨拶すら任意で見に来るという緩い挨拶なので無視させてもらうことにした。強いて言うならあれは来場している?来校かな?人達に対しての挨拶だからね。
機嫌良さげに街を歩いていたらドゥレを見付けた。一人の男性と話をしている。何だろう。ちょっと険悪な雰囲気がある。しかも良く見たら周りに人が少ない。なんてね?人払いの結界なんて張ったらすぐにバレちゃうよ?
「……れ!」
まだ遠いから言葉はあまり聞こえない。けれど男が何かを言った瞬間ドゥレの肩に矢が刺さった。私の力が多少なりとも渡されているのだから避ける事も出来たはずだけどあえて喰らったね。まあ死なないのなら良いけど無茶をする。
そう思っていたら私の方にも矢が飛んできた。結界内に入ってきたからか。それはそれと私に向かって矢を放つって事は殺されても良いって事で……
「良いよね?」
「!?」
矢を放った男の背後に回り込むと手を伸ばして男の右腕を引き千切る。声を上げようとした男の口を手で抑えると……やめとこ。殺すのは最終手段としよう。背骨に対して垂直に拳を入れて骨を引きずり出す。痛みこそあれど死なないように回復だけはさせておく。外気に骨が晒されているから激痛が走るだろうけど人殺しに容赦などしない。後は喋ることが出来ないように喉の中に手を突っ込むと舌を根元から引き裂いた。一応この最中防音の為に結界を張っているから誰かに聞かれる心配もない。
「後五人」
私は静かに屋根伝いに走ると同じように矢を持っていたり魔導士を見付けると叩き潰していく。殺さないのは慈悲なのかそれとも単に拷問なのか自分でもいまいち分からないけれど体育祭でのやり取りで少しばかり気分が良くなっていたからかもしれない。
最後の魔導士の四肢を切断したあと舌を引き抜き背骨をやっぱり引きずり出すとどうやらドゥレの方も何かあったようだ。というか今の場所から見て分かったけれどレンが捕まっているようだ。ドゥレは避けたくても避ける事が出来なかったのか。良い感じに屑な様で何よりだよ。
サッと屋根から降りるとレンがこっちに気付いた。あんまりレンの教育上悪そうだからグロテスクなシーンは見せたくないんだけどなぁ。まあ仕方ないか。それに遅かれ早かれ見る可能性は高いのだ。最初から耐性を付けさせた方が良いのかもしれない。というかそう思いたい。
軽快にステップを踏むとレンを捕まえている男の背後に走る。防御用の結界が三重に発生する。自動で発動する魔導具か。便利だよね。まあその程度で私の攻撃を妨げられると思って……はないか。自動だもんね。
とりあえず右脚で鋭い蹴りを繰り出してみた。とう。相手は腹から右脚が生えた。やりすぎた。死なない程度に回復させておこう。ん、ついでだから内臓の幾つかを傷付けながら背骨を引きずり出す。男は一瞬で気絶した。いや腹から貫通した時点で意識は失っていたんだけどね。
「ドゥレ、大丈夫?」
「スイ様、ええ、お恥ずかしい限りです。私だけでも恐らく倒せたとは思うのですがレンが捕まえられてしまって」
「ごめんなさい、スイ様。わ、私が悪い、の」
レンは泣きじゃくっていてドゥレはどうやら一応私に判断を任せる様子だ。私が来ていなかったらドゥレはレンを怒るだけで終わったのだろうけど一応の雇い主というか主人というか私の存在がある以上それで終わらせられないのだろう。でも、レンの年齢って多分ディーンとそう変わらないか更に下だよね?流石にそんな子を怒らないよ?
「ん、レン。怒らないから大丈夫だよ。それより怖い目に合わせてごめんね」
謝るべきは私だろう。せめて何らかの防御手段位作っておくべきだった。ドゥレ達を眷属にしたのならそれを守る義務が私にはある。それを怠った私が悪い。まあここでお互いに謝っていても仕方ないし人払いの結界を私が維持し続けるのも面倒だ。とりあえず男達は縛り上げて店の中に入れることにした。ちなみにここはドゥレが開店した店だ。商品は翠の商会の物だったり私が作った魔導具だったりと結構バラバラだ。別に店を構えたかったわけじゃないからね。
「レン用に魔導具をまた作っておくね」
「そんな、レンの為に」
「良いから作らせてね。眷属である貴方達の守護は私に与えられた義務であり責務だから。怠った私が言うのも何だけど次からはこんな事無いようにするから」
私が強い口調でそう言うとドゥレは少し黙ってから分かりましたと言うとその後小さくありがとうございますと呟いた。それで良し。レンの頭を撫でてからドゥレのもとに送ると私は男達を連れて中の部屋に入る。
「んと、誰か起きないかなぁ。水でもかけたら起きるかな?」
「スイ様その状態で水を掛けたらショック死すると思います」
「あっ、ディーンさっきまで話さなかったけどどうして?」
「……僕は影だから」
「で、本当は?」
「……あんまりドゥレという人を信用してない」
「普通の行商人だったからね。何かの切っ掛けで裏切るんじゃないかと思ってるんだ。眷属である事が裏切らない証拠にはならないものね。しかもその一人娘であるレンは別に眷属ですらない。ついでに言うならレンの為なら命を張れてしまう。ならレンを人質にされたら裏切ってもおかしくない……かな?」
「分かっているならどうして」
「分かっているからだよ。親は子を愛する者だよ。そこに上司とかそんなものは介在しない。してはいけないんだよ。理想の親だと思うよあの二人は。だからかな」
「親だから?」
「そうだよ。それ以外に理由が必要?」
「……いや、うん」
「分かったなら良いんだよ。ディーンもいつかステラとの間に子供でも出来たら分かるよ」
「げほっ、げほ、な、何言って」
「ん、まあそんなものだと思っておけば良いよ。そろそろ起きるよ。話をしようか。彼等の罪の話を」
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