第191話 人材発掘
「「あの!スイ様!」」
他にも見ようかなと思っていたら自分から来た子達が居た。双子の可愛い男の子達だ。見た目はどう見ても女の子だが男の子として紹介されているから間違えたりはしない。まあ紹介されなかったら間違いなく女の子だと勘違いしてると思う。ディーンも可愛い感じで女の子っぽく見えるけどこの子達は更にそれに磨きをかけている。
「ん、何?」
「「俺達も連れて行ってください!」」
見た目に反して俺っ子なのか。いや口調だけでも男の子っぽくしようと頑張ってるのかな。でも十代半ばで女の子っぽく見えている時点で多分成長しても男性に見られることは少ないんじゃないだろうか。
「……別に良いけど何が出来るの?」
「「……潜入?」」
……???まさかの潜入の言葉に意識が一瞬真っ白になった。正直凄く目立つと思うのだけど何故潜入が出来ると思ったのだろうか。
「出来るの?潜入?」
「「出来ます!あと俺達の間だけだけどお互いの意識を繋げることが出来るので即座に情報も入手出来ます!」」
それが本当なら凄いけどどうやって潜入するつもりなのだろうか。そしてそんな危険過ぎる状況にこの子達を送ってもいいんだろうか。仮にも私の庇護下にある存在だ。あまりに無謀な行いはさせたくない。
「……ん、
「「違います。俺達の種族は
「……その、幻猫とか三月兎って何?」
「「幻猫は母親の種族で子猫族から更に変異した種族です。主に存在の感知を防げます。三月兎は父親の種族で兎人族の変異した種族です。主に魔力による感知を防げます」」
「……要は気付かれない種族同士のハーフって事で合ってる?」
「「はい!」」
「なら何で捕まったの?」
私の問いに二人は少しだけ言葉を濁す。しかしゆっくりと話し始めた。どうやらこの子達の噂を何処からか仕入れた奴隷商が冒険者を雇ってこの子達の村を包囲したようだ。その上でこの子達を差し出せば村の包囲を解くと言われたらしい。つまり村人に差し出されてしまったわけだ。
「……その村は?」
「「奴隷商の言葉を信じるならばまだあります。信じないなら全員連れていかれたんじゃないでしょうか」」
「……ん、分かった」
まあその村がまだ存在したら軽く締めておこうか。残ってないなら残ってないで別に良いや。奴隷として苦しんでいるだろうし。
「まあ貴方達を連れて行くかどうかはまた後で決めるね。どれくらいの事が出来るか分からないし」
「「分かりました!」」
というか潜入してもらっても何をするとか無いから普通に困るんだよね。強いて言うならヴェルデニアの居場所を探るくらいだけどそれは流石に危険過ぎるし。
「他にも立候補は居る?」
私が呼び掛けたら何人かは迷っている。私が魔族である事は知っている筈なのに気にした様子がない亜人族ってこれだから好きなんだよね。まあ中には私の父様を裏切るような馬鹿も居るから一概に好きとは言わないけど。
「はい!」
手を挙げたのは……凄く大きな女性だ。というか全体的にかなり大きい。身長は多分二メートルを超えている。でも顔は凄く美人さんだ。快活な笑顔で人懐っこさを全面にアピールしてくる。そして胸も大きい。多分人の顔ぐらいなら完全に埋まって見えなくなるだろう。
「……あそこまでは無くて良いかな」
正直あれだけあると肩凝りとか凄く酷くなりそうだ。動くのもしんどそうだし。そんな彼女の背中に担がれているのは最早意味が分からないほどの鉄塊だ。いや良く見たら精錬されているから鋼塊だ。馬鹿じゃないのだろうか。ハンマーの当てる部分を超巨大にして持ち手をカバーする程馬鹿でかくしたと言えば分かるだろうか。控えめに言って何を持っているのかさっぱり分からなかった。ぶっちゃけ鉄球にしか見えなかった。
「あたしはこれで敵を殴り殺せるよ!魔族だろうが一撃さ!」
やばい。控えめに言ってやばい。ついでに言うなら恐ろしい事にその鉄球もとい鋼球じゃない。鋼のハンマー?が二本あったことに驚いてる。両手に持ってるけど絶対アルフのコルガより重いよね?だってその鋼塊の部分私の身体と変わらないぐらい大きいよ?それ二個も持てる事に驚くよ。というか良くぶつからずに持てるね。信じられないよ。
「……えっと」
何と返して良いのか分からない。困った私が周りを見てある子を見た。その子は凄く顔をひきつらせたけど私はその子を生贄にした。
「ん、リットハルトの盾を打ち抜けるかやってみて」
蒼白な顔で顔を横に振ろうとしているけど隣に立っているミュストラが期待に満ちた表情をしている。きっとリットハルトなら出来ると信じているのだろう。信頼が痛い。
結果?えっと、多分言わない方が良いと思う。強いて言うならミュストラが若干涙目になっているだけで分かって欲しい。ただ面白い事は良く分かった。リットハルトの盾がもう少し強ければ多分耐えたという事かな。これだから亜人族は強いのだ。はっきり言って意味が分からない。まあこれでも全盛期である神々の戦争時ではよりえげつなかったからやっぱり弱体化してしまっているんだろう。
あとこの女性が捕まった理由が思った以上に馬鹿だった。旅をしていたこの女性が奴隷商と知らずに酒を飲み交わしていたら奴隷にされていたらしい。馬鹿なのか人を疑うことを知らないのか。どちらにせよ駆け引きとかは絶対に出来ないなと思った。
ちなみに双子の男の子とこの女性の名前はそれぞれユッタとルット、マリスと言うらしい。
「貴方は?」
急に話し掛けたから男性は少し戸惑ったみたいだがすぐに佇まいを直す。
「私の名前はヴァンと言います。種族はエルフです。正確には
栗鼠族とはまた珍しい。いや数が少ないとかそういう訳では無いのだが人前に殆ど出てこないのだ。長く生きていた父様ですらたった二度しか見たことが無い。
「……ん、どんな事が出来る?」
「そう……ですね。遠距離からの狙撃でしょうか?多分この帝都の真ん中に居たら端から端までカバー出来ると思います。勿論障害物があるので全部カバー出来るとは言いませんが」
「貴方さえ良ければ付いてくる?」
「えっと……」
ヴァンは言葉を濁して周りの女の子を見る。私に対して敵意を向ける子は居ないけど懇願するように涙目になっている子は複数人居る。
「ん、別に貴方に戦場に出ろとまでは言わないし貴方のその長距離狙撃なら遠くから援護出来るでしょう?」
そう言うと女の子達はほっとした表情を浮かべる。まあ単に危険だから行って欲しくないだけだろうしね。その危険が少ないのなら別に止める必要も無いんだろう。それに気付いたヴァンは頷くと私の前に跪いた。あっ、これ前にも見た気がする。
「私ヴァンは」
「いや要らない」
忠誠を誓う亜人族はディーンで今は間に合ってるのだ。そっか、亜人族の中でも少数の種族は忠誠の誓いがまだ残ってるんだったね。忘れかけてたよ。あと忠誠を途中で止められたヴァンは若干涙目だった。爽やか男性の涙目は要らない。欲しいのはアルフの私を欲しがる目の方が……んんっ!
「忠誠を誓う必要は無いよ」
というか察して。本当に要らないから。ディーンが何故かご満悦だ。忠誠を誓うのが自分だけというのが嬉しかったのかな。可愛いな。それを見てステラが撫でたくてうずうずしているのも可愛い。うん、やっぱりまだ忠誠を誓う人は要らないかな。
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