第123話 水浴びー



ふんふんふーん♪ふふふんふーん♪


鼻歌を歌いながら水浴びをする。この世界には残念な事にお風呂文化は無いらしい。ノスタークにはスイが作ったのか銭湯みたいなのがあったけどそれ以外の街には無いらしい。いや聞いただけだから実際は知らないけど。沐浴文化って不思議な感じがするのだけど、この世界の人って寒冷耐性でも付けようとしてるの?ちょっと欲しいかもしれない。

まあ沐浴だろうとお風呂だろうと実は魔族には大した違いはない。魔力生命体という不思議生物なせいか水に浸かろうと逆に熱湯に浸かろうとそれほど違いは感じない。冷たいな、熱いなとは感じるのだけどそれは一瞬だけですぐに適温に感じてしまう。多分神経とかが一瞬で順応してるんじゃないかな。そもそも神経があるかも分からないけど。

魔族の身体構造は本人である魔族達でも実はあまり知らない。魔物と違って解体というか解剖というかそういう行為をしないというのもあるしそもそも人体について知ろうという動きがない。というか素因を失ったら魔族は消滅するのだ。そのため身体構造云々以前に知ることが出来ない。

そんな考えても仕方ない事を考えながら水を浴びる。今私は天の大陸にある湖で身体を洗っている。しっかり結界は張ったし視覚的にも見えない様に光学迷彩もどきも使っているので遠慮無く服は脱いでいる。白磁の様な肌に色彩が薄い上にグラデーションのように先端に行くにつれて輝く紫髪、湖面に浮かぶ月の様にはっきりと映る金瞳。ふむ。幼女だ。

いやあ、魔族の身体というのは本当に不思議だ。成長と退化、本来変わらない身体を唯一変えられる技である。変わるといっても元の姿から大きく変わる訳じゃなくて年を取るか幼くなるだけだが。スイも変わるのだろうか?ちょっと見てみたいと思う。元の姿を聞いただけで想像でしか分からないけれどきっと可愛いと思う。

とりあえずさっさと湖から上がる。幼女の身体でぷかぷか浮かんだり泳いだりするのは楽しかったがちょっと飽きた。別に泳ぐのが特別好きだっていう訳じゃないし。後そろそろ裸でいるのもどうかなと思った。誰か見ている訳じゃないけど。いや万が一見ている人がいたら私の出来る最高の攻撃で消してあげよう。私の裸を見ていいのは同じ女性か拓也か恋人とかだけなんだから。拓也を除いたらまあ普通だった。

魔法で温風を出しながら指輪から洗い立てのタオルで身体を拭く。この指輪実は十個近くある。用途はそれぞれ異なるけれど多いと思う。後指輪の中に指輪が入らないので実は手が結構ごつごつしている。それぞれ容量は多いが時間経過が通常、容量はそこそこで時間経過が少し緩やか、容量は無いが時間が殆ど過ぎないといったものである。時間経過が二倍になる指輪なんかもある。物凄い容量が多いが食材なんかは絶対に入れられない。まあ私はこの中に味噌とか醤油とかみたいな調味料を入れている。正確には作ってる。多分失敗する可能性が高いけど。だって適当に作ってるからね。スイなら知ってるかな?

ちなみに私は容量多くて時間経過普通のやつを常用している。元々これだけで良かったのだけどイルナが用途に合わせて幾つか持っておけと買い与えてくれたのだ。私もしかしなくても養われてる!?まあ金貨を端金というイルナなので有難く貰っている。貰い過ぎて魔導具店みたいなのが開けそうになってるけど気にしない。テントの魔導具予備で五個も六個も要らないからね?貰っておくけども。


「おーい、ドルグレイーお迎えプリーズー」


元の姿に戻って洗い立ての気持ちの良い服に着替えた後ドルグレイを呼ぶ。実はこの場所最初に来た場所からそれほど遠くはないのだが道のりが岩だらけだったりで飛ばないとやっていられないのだ。だから来る時もドルグレイに送って貰っている。頑張れば私一人でも戻れるだろうが水浴びして帰って汚れるって意味不明でしょ?


「漸く終わったか。二時間も良く浸かれるな」


成る程、二時間も幼女姿ではしゃいでいたのか。それは飽きる筈だ。まあ楽しかったし後悔はしていない。次はスイと一緒に来たいな。きっと気に入ってくれると思う。


「まあ幾ら冷たくてもあんまり魔族には関係ないからね。後プールみたいで楽しかったし?」


天然の滝から落ちるのとか滝壺で水を浴びるのとか潜水するのは楽しかった。魔族なら息とかは実際必要無いのでいつまでも潜っていられたし小さな魚と一緒に戯れるのは楽しかった。底に生えていた海藻?を身体に巻き付けて人魚ごっことかも割と楽しかった。えっ、プールじゃない?湖って言ってるじゃん。


「何故水浴びで楽しいという言葉が出るのかは知らんがもう良いのだな。なら戻るぞ」


頷いてドルグレイの手を掴む。身体を支えるように尻尾が巻き付いてきてふわっと浮かび上がる。竜族のように翼と魔力で飛ぶやり方でもなくシェティスやトルケスのように翼と風で浮かぶやり方でもない。浮遊という言葉が当て嵌まる。まあ翼が無いし当然だが不思議な感じだ。シェティスで慣れ過ぎたかな。

ふわふわ浮かびながら降り立つ。そうドルグレイの浮遊は凄まじく早いのだ。十分は掛かりそうな距離を一瞬で移動する。それでいて慣性や圧力を一切感じさせないのだから流石だと言わざるを得ない。これで別に転移じゃ無いのだから意味が分からない。ドルグレイ本気で飛んだら数秒とは行かずとも数分でこの世界を回れそうだよね。


「無理だぞ。俺が本気で休まず飛んだとしても一年は掛かるな」

「地図を見る限りじゃそんなに時間掛かるようには見えないんだけど?」


世界地図として描かれている地図には右に魔の大陸、海を挟んで下と左を埋め尽くす巨大な東方西方大陸、別名を悠久大陸、悠久大陸の真ん中辺りの上にあるセロニア大陸、悠久大陸の左側にある帝都イルミアの近くの海の上に浮かぶ天の大陸。全部が書かれているわけではないとは思っているがそこまで時間は掛からないだろう。


「あぁ、エルフのが描いた地図か。本人にも言ったがこの世界はもっと広いぞ。軽く見積もってこの十倍はある。もっとあるとは思うが正確には分からん。そんなの考えたことも無かったからな」


これの十倍!?実際はもっとある!?そう見るとかなりの大きさだ。多分地球より巨大で広大だろう。異世界半端ない。


「お前達の世界は神が一柱で作り上げたようだからな。三柱も居たこちらの方が大きいのは必然だろう」

「私達の世界って神様一人なの?多神教?の日本人としては変な感じなんだけど?」

「ん?ああ、いや正確には少し違うな。確かにお前達の世界に神は複数存在するぞ。むしろ多いくらいだ。だがその大半は世界の創造に関わってはいないだろう?私がいう神は世界創造に携わった神だ。誰にも語り継がれず神話にも存在しない神が本当の創造神だ。敬うことは難しいだろうが一応敬意を払っておくといい」

「世界創造ってことは人を作ったりとかはしてないってこと?」

「その創造神は一切関与していないな。その神がしたのは世界の土台作りだ。人が生活出来る環境などにも一切関与していない。ただし人という種族自体はそうなるように別の神によって誘導はされている。その環境で生きられるようにな」

「へぇ、面白いね。神様から直接そんな事を聞くなんて無いから興味深いよ」


創造神とかいうのが居るのか。特に人に関わってた訳じゃ無いみたいだけど//〇◇∥▽が生まれるきっかけを作ったようだし感謝しておこう。

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