第38話 変なヤツら(Weirdo)
私の住んでいるところは田舎です。
近隣の都市の住民に聞くと、言われます。
"Really? You live there? There are a whole bunch of weirdos there. "
「ええ⁉ あそこに住んでんの⁉ あの町に住んでる人、変なヤツばっかじゃん!」
誤解してはいけません。わたしたちはまだ住み始めて八年目。新参者なので、「住民」と名乗るのもおこがましい。よそ者もいいところです。
こんなことがありました。
みんなが大好きCostc〇(コスト〇)でのことです。
若くてきれいな白人の女性が、ちょっとおどついてひょろっとした白人男性と買い物をしていました。恋人同士でしょうか。彼女は試食のテーブルを見て言いました。
"Eww! They're selling kimchi. That's gross. I hate kimchi."
「おえっ! キムチ売ってる。キモ。キムチ大嫌い」
"Yeah. I don't like it, either."「そうだよね」
その舌の根も乾かないうちに、試食テーブルに近づいていきました。勧められるまま、試食を口にしました。
(アメリカ映画にお約束のように出てくる、いけ好かない白人女性風に言ってみてください)
"Oh, It's not that bad."「……思ってたほど悪くないわね」
" I kinda like it."「おれ、結構好きだよ」
食べたいなら最初から素直にもらいに行けよ。
と思ったのは私だけでしょうか。
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息子がスイミングから帰ってきました。
「ママ、今日さ、同じチームの女子が二人でしゃべってたんだけどさ……」
「何て?」
“ You're my best friend, but…you're so ugly. You should have old lady disease even though you're not that old."
(あなたはわたしの親友だけど、すっごいブスだよね。年取ってるわけじゃないけど、おばあさん病にかかってるんじゃない?)
まあ、言いたいことは山ほどあります。とりあえず、娘に言い付けました。
娘は、ふん、と、鼻で笑い、
"That's nothing."「それは普通」
わたしの中で「常識」という言葉が音を立てて崩れていきました。
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お隣さんのお嬢さんは、小学校一年生です。
彼女、ほんとに、しょっちゅう怒鳴ってます。
裏庭に植木の手入れに出ると、ほぼほぼ毎回聞こえちゃうんですよね。どういうわけか、お隣さん、窓を開けてるんですよ。アメリカの家ってセントラルヒーティングシステムなのに。
一日目。” I hate Noah!” (ノアなんか嫌い!)
翌日。 “I don’t like Nancy!” (ナンシーは好きじゃない!)
三日目。 “You're terrible, Owen!” (オーウェン、あんた、サイテー!)
視界に入る誰も彼もが嫌いなようです。
そして、四日目。 “ Dad! You're an asshole!” (パパ。あんたなんかケツの穴よ!)
隣の家のご主人が「ケツの穴」だったとは、今の今まで知りませんでした。
そんなお隣さんですが。
犬を飼っています。真っ白で大きな犬です。でまた、午前四時にその犬を裏庭に出します。そして犬は毎回ものすごい声でほえたてます。
バウバウバウバウバウ! バウバウバウバウ!
たしかに、長い時間ではありません。でも、私たちの寝室はその家に一番近いところにあります。大きな犬なので、声もバカでかい。飛び起きます。毎日、心臓発作を起こしそうです。
なので、苦情を言いに行きました。
するとご主人が出てきました。
ダンナが、流ちょうな英語でたずねました。(まあ、当たり前ですね、アメリカ人なんで)
「犬を早朝に外に出して吠えさせるのはやめてほしい」
ご主人、ムッとしました。そしてじろりとわたしたちを見ました。
「うちはそんなことしてない。よその犬じゃないの?」
「いえ、お宅のです」
するとご主人が言いました。
「じゃあ、いつやったのか言ってみろ。何時何分何曜日!」
小学生か!
ご主人、ドヤ顔でこっちを見ています。
今にも、「地球が何回回った時!」とでも言いだしそうな勢いです。
仕方ないので、自治会長さんに助けを求めました。
その後、お隣さんは犬を早朝に外に出して吠えさせるのはやめました。
権力には弱いのです。
そして思いました。
娘さんの言ってることはどうやら当たっていたらしい。
”You're an asshole!”(あんたなんかケツの穴)
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