第34話 本当の世界

これは、主人公が自殺未遂をした時の話。

薬物の大量摂取によって意識が途絶えていく時にさかのぼる。


意識を保つ糸が切れ,す~っと視界が真っ暗になっていき、何も感じなくなっていた。

そして、なにやら浮遊感に襲われ、空に引っ張られてる感覚に陥る。

目を開けるとそこは真っ暗だった。

そして、引っ張られる感覚が強くなってくる。

視界の先に小さな光の点が見えた。

浮遊していくにつれ、その小さな点は大きくなり、視界いっぱいに広がっていく。


「ん・・・・」


久しく声を出していない感覚に陥る。

声がなまっている。

ゆっくりと視界が戻っていく。

どうやら俺は寝ていたみたいだ。

自殺は失敗したのか?

まだ視界がぼやけて周りがよく見えない。

だがだんだんと視界が戻ってくる。

何処だここは・・・。

何やら4畳ほどの狭い部屋にベッドがあり、そこに寝かされている状態だ。

本当にただ寝るために設けられた場所といったところだ。

壁や地面は全体的に白く、うっすらと天井から光が漏れている。

そして右側に視線を向けると、鉄格子となっており、出入り口にはロックらしきものが取り付けられていた。

まるで牢屋みたいだ。


「な・・で・・は・・に。」


なんで俺はこんなところにいるんだ。

声が出ない、意識がぼんやりしている。

まるで夢を見ているかのようだ。

しかし、急に記憶がよみがえってきた。

その瞬間全身が震えた。鳥肌が立った。

おもいだし・・・た!


俺は罪人だ。

何をしたまでは思い出せないが、捕まり、罰せられて、その罰を受けるためにこの部屋に連れてこられたのである。

その罰は、その罪に似合った人生を夢の中で過ごさせるというものだ。

そしてその罰の人生をしっかり過ごし、心を清め、改心し罰せられたと判断したら、夢が覚めて刑罰を終えたことになる。

もし人生を終えたうえで、十分な罰を受けていないと判断された場合、また別の空間に送られ、そこで罰を受けることになる。

そこがいわゆる霊界と呼ばれている世界だ。

そこに行く人は、自殺や予期せぬ死で十分な罰を受けれていない、もしくは追加で罰せられるようなことをし、その罰を人生で償えなかった場合になる。

殺人などの罪を犯したら、死刑になり罰せられるので、その刑が執行されたらこっちに戻ってこれるだろう。

要するに夢で罪を犯したら、夢で罰せられるという事だ。

しかし罰せられずにそのまま自殺すると、罪を償ったことにならないので、霊界に行くというわけだ。


それらの世界である夢は、頭につけられた装置で管理されており、俺の装置はまだ動いていた。

という事はまだ罰は償っていないという事だ。

この装置を着けられて夢の世界に行くと、こちらの世界の記憶はすべて消えるみたいだ。

記憶を消して子供から人生をやり直す。

それなら今の俺はどうなる?

このまま刑期を継続した場合、子供からやり直しにはならず、あの人生の続きからだ。

この思い出した記憶のまま継続なのだろうか。

そんなことを考えていると、睡魔がやってきた。

やばい・・・戻る時間か。

意識が途絶えていく。視界が暗くなる。

それと同時に、落ちていく感覚に陥る。


ごぉ~

意識が目覚めていく。

どんどん暗闇に沈んでいく


ごぉ~~

今まで自分が何をしていたのか思い出せない。

体全体で風を切っている


ごぉ~~~

さっきから風を切る音が耳に響く


ごぉ~~~~

これ、沈んでいってるんじゃなく、落ちて行ってる?


今から罰を受けるのだから、地獄に堕ちているとも言えるだろう。

そこで心が分かれていることに気付く。

現実世界の俺と、夢の世界で過ごした俺の2つに。

どうやらもう一人の俺の反応を見ると夢から覚めてから少しの時間の記憶は消されたらしい。

だが、今回の出来事は特殊だったみたいだ。

まだ、俺だという意識が俺の心にはある。


そんな時、夢の世界に落ちてる途中で、光を見つけてそこに飛び込んだ。

その瞬間、心だけでなく魂も2つに分かれ。

俺は半分の魂に闇を全て引き込み、この世界に降り立った。

夢の中で過ごした俺も霊界に落ちたみたいだが、どこを見渡しても見当たらなかった。

俺とは離れた場所に落とされたのだろう。


そして俺は闇を操る特殊能力に目覚めた。

それは、たまたま他人の闇と出会った時に、思いのまま操作出来たのだ。

それから念じると、現世の様子も見れてそこでの闇も操作できることに気付いた。

どうやら、夢の世界と確実に理解し、そして確実に実行したい計画があるなら、それらが出来るようになるみたいだ。

普通であれば、装置により、この世界は絶対に夢じゃないと刷り込まれてしまう。

そして何よりすべて管理されている。

しかしなぜか俺には、それらが通用しなかった。おそらく特殊なのであろう。


そこで俺はある考えを計画を実行することにした。

どうせここは夢だ、罰をすべて受け切れておらず、心に闇を残して死んでしまった場合、霊界に送られるが、死ぬ前にその闇をすべて俺が消したらどうなるだろう。

それは、罰を受けたとみなされ、みんな夢から覚めるだろう。

そして、心に闇を抱える人たちの闇を、それを生み出す元となった奴に移して苦しませれば、それを見るのは最高に面白いのではないか?

その苦しみは自業自得だし、それで自殺しても別にいいだろう。

どうせ夢なんだし。

俺の目的は、悪人が自分で犯した罪をかぶり、苦しみもがく姿を見ること。

それ以外はどうでもいいから、追い出す。


全て知っている俺は自由だ!

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