第35話 影の間違い

信じられないことを聞いた。

この世界全てが夢?

そんなことがあるのだろうか。

俺と堀内は思考が追い付かずフリーズしていた。


『せっかくの夢だ。だから俺は全力で楽しもうって決めたのさ!』


『だから・・・』


その瞬間俺の目の前に影が来て、手に黒い槍のようなものを作り、俺の心臓を貫いた。


『お前はもうここに来るな!』


「っは!」


何度目だろう、意識が遠のいていく。


『前回お前の魂を霊界から完全に消し去り、ここに来れないようにしたはずだった。でも、お前はまたここに来た。それはおそらく闇の俺がここに居るから、現世と霊界を繋いだら、俺に惹かれてこっちに来れたんだろう』


影はニヤリと笑い、話し続ける。


『だから今回はお前の魂に、俺の一部を刷り込ませておいた。だから現世に戻ったらもう2度とここには来れないだろう』


「なんだって!まだやり残したことが・・・」


俺はもうしゃべる気力もなくなって意識が途絶えようとしたその瞬間。


【駄目!こんなの間違ってるよ天之原君!!】


その瞬間、自分の体から小さな光が出てきて、炸裂した。

光は人の形と姿を変え、光はみるみる収まっていった。

そしてそこには、こぶし大程の小さな立花さんがいた。

その背中には羽があり、まるで妖精みたいだ。

そして両手を俺の方に掲げ、俺は淡い光に包まれ、みるみる回復していった。


「えっ、立花さん?」


「・・・立花?」


「うん、なんか出てこれたみたい」


立花さんは、そこに顕現することにより、さっきまで自分にしか聞こえていなかった言葉は、周りへと聞こえるようになった。


「例えこれが夢の中であったとしても、人を苦しませるような事しちゃ駄目だよ!」


『あぁ!?そもそも夢だぜ?人を苦しめようが殺そうが現実では死なねーんだよ!そりゃもう、楽しむしかないだろ!』


「例えそうだとしても、そういう事をした感情は心に残るし、その感情を天之原君に持ってもらいたくないの!それに人殺しは人殺しだよ!」


『ゲームで人を殺したら人殺しになるのか?ならねーだろ!?それと同じだ!』


確かにそうだ。

ゲームで人を殺したからといって、罪に問われたりしない。

しかし・・・。


「ゲームには、人を殺すことを想定したゲームとそうでないゲームがある。その中で、人殺しを想定していないゲームで人を殺すのは、違うんじゃないか?」


堀内と立花はおとなしく聞いている。


「お前の話を聞いてる限り、この世界は人を殺すのを想定した世界じゃない。そういう考えを正すための世界だ!」


「立花君!」


「確かにそうだな。」


俺は大声で言った。


「お前は、間違ってる!!!」

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