第32話 これから始まるラストバトル
東門を出たら、辺り一面草原が広がっていた。
黒いモヤの下にも誰もいない。
草原が広がっているだけだ。
「いないぞ?お前の影・・・」
堀内は草原を見渡しながら俺の影を探していた。
「おい、天之原!どうした!?」
俺は草原の一点を見つめていた。
そう、そこには俺の影が玉座に座っていた。
「あそこにいる!」
「えっ?どこ!?」
堀内は見つけられないでいた。
【どうやら、私たち以外見えないみたいね】
なるほど、いったいどうして。
影は俺の姿を見るや、舌打ちをしていた。
『なんでお前、戻って来やがった!』
「俺たちはここにいるべきじゃない!まだ生きてるんだから!」
そう言い1歩踏み出すと、
「え!?うぉ!! 急にお前の影が現れたぞ!!」
堀内はびっくりした様子だった。
今まで本当に見えていなかったようだ。
『ちっ・・・俺の結界を破壊しやがって。なんのためにお前を現世に帰したと思ってやがる!!』
「お前を止めに来たんだよ。お前のせいで現世がカオスになってるからな」
『だろうな!それが俺の望む世界だ!!』
「何言ってるんだ!?あんな狂った世界を望んでるのか!?」
『そうだ!そもそも、人の心に闇を植え付けたそれを、植え付けた本人に返してるんだけどな』
「なんでそんなこと?」
『そんなの決まってるだろ!面白いからだ!』
「・・・・??」
『人の心を傷つけてるような奴らが、それと同等の心の闇を植え付けたらどうなるか。お前も現世で見ただろ!狂ったやつらを。それだけの闇を他人に押し付けて人は皆生きてるんだよ!』
「・・・」
自分の影が言ってることだからか。
すごい分かる気がする。
何も言い返せない。
『自分たちが幸せになってる分、その裏でどれだけの闇を人に押し付けているか自覚がねえ奴らばっかりだ。だからそれを教えてやってるまでよ!』
確かにその通りだ。
しかし・・・!
「それは違うぞ・・・俺!」
中学生の頃を思い出した。
堀内達は俺をいじめることによるストレス発散し、勉強することにより良い高校に進学した。
しかし俺は、いじめられる恐怖心やストレスでふさぎこみ、毎日、何事もないようにふるまい生きていくことだけで精いっぱいだった。
そして、勉強を何もやってこなかった結果、いい成績を収めれなかった。
勉強は努力とよく聞く。
しかし俺は、生きることに努力したら、勉強なんてしている暇はなかった。
想像できるだろうか。
授業中でさえも、消しカスを投げるや、後ろの席の人から頻繁に殴られる。
そして、ひそひそ悪口が絶えない。
休憩時間ですら暴力を振るわれるのだ。
その結果、それらのストレスを抱えたまま授業など耳に入ってこないのだ。
それらのいじめがない時間に、少しでもストレスを減らすため、窓から景色を眺めたり、楽しいことを考えたりして、やり過ごした。
授業など聞いてる暇がないのだ。
なんで俺ばっかりこんな目にと、毎日思ったものだ。
そんなことをして、いい高校に入った堀内は、逆の立場を味わうことになった。
結果、堀内自身が俺にどれだけの恐怖心やストレスを与えて得た場所に立っているのかを気付いてくれた。
それで、昔では考えられない程、堀内とは打ち解けられたのだ。
その気付きを、強制的に与えるのは間違っている気がする。
「自分が犯した罪は、自分で気付かないと意味がないんだ!」
【そうだよね!自分の犯した罪の意識を強制的に押し付けて苦しめるのは間違ってる!】
「そうだな、俺も自分で気付けたから改心出来たんだ!」
『はっはっ!馬鹿かお前ら。自分で気付くよりも、今まで他人に押し付けてきた心の闇を、一気に全部そいつの心に押し付けた方が反応が面白いんだぜ!!』
「そんなことしたら心が壊れるだろ!」
『壊れて結構じゃねーか。心が壊れるってことは、今までそれほどの事をして来たって事だ!それで死んでも文句言えねーよな!』
「それだと、自分の犯した罪に気付かないじゃないか!」
『気付かなくて結構!苦しんでる姿を見て楽しんでるんだからな~!』
「力ずくでも止めてやる!」
「だな!」
俺の影との戦闘が今始まる。
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