第31話 俺は許すよ
堀内の話は終わった。
そんな彼は、目をひくつかせ、涙ながらに語っていた。
「まぁ、こんな感じだ」
俺は聞き入っていた。
俺をあんなにいじめていた堀内が、高校生になってからは逆の立場である、いじめられる側になっていたなんて思いもしなかったからだ。
「俺のことを許せとは言わない。なんせ逆の立場も経験しちまったからな。許されないことをしたこともわかってる。だが、謝らせてくれ、今まですまなかった」
堀内は机に頭を付け、謝ってきた。
まぁ、確かに人生を台無しにするような事をされたのだから許されないことではあるだろう。
だが・・・。
「堀内、俺は許すよ」
「えっ、今なんて・・・?」
「俺も最初は、許せない気持ちでいっぱいだった。でも、どんな出来事も自分の行いが関係していると思い始めた。いじめであってもね」
「・・・」
「いじめの始まる起源である会話の時、俺たちは選択をミスったんだよ。だからいじめに発展した。あの時また別の選択肢を選んでいたならいじめを回避できたんじゃないかなって」
「すごいなお前、こんな俺を許すだけじゃなくて、自分も悪いって考えられるなんて」
「解決策を考えないと、今後ずっといじめられることになるからね」
「言ってることは分るが、その考えに至って、実行するなんて俺にはできなかった。やっぱ天之原はすごいよ」
「だけどどうしてもだめなのが心だよね」
「あぁ、それはすごい分かる」
「心はどんなに時間が経とうとも、何をしようとも、全然回復しない」
「確かに」
「心がズタボロになったら、それ以前のような心に戻らない。もうそれがどんな状態だったかも分からなくなる」
「あぁ。言ってること、すごい分かるぞ」
「霊界では、その心の傷と向き合うのが目的なんだと思う」
「影を倒して心が回復するってわけじゃないんだな、やっぱり」
「この霊界は心の傷と向き合わなかった人に、罰を与えるために作られた世界だろうね」
「そんなことよく考えつくよな。だが、間違ってるとは不思議と思えない」
「だから俺は、自分の心と今から向き合おうと思う。それに、もともと生きてる俺はここに居るべきじゃないしな」
「お前の心の闇を作り出した原因は俺にもある。手伝うぜ!」
「ありがとう!」
「で?影の居場所は分るのか?」
「あぁ、おそらく町の東門を出てすぐのところ居ると思う」
堀内の反応が変わった。
「えっ!?町の外に東なんてあったか?」
そして、ふっと思い出したかのように、
「え?あれ待てよ・・・あったな東門。なんで忘れていたんだ?」
町に2つしかない出口の1つを忘れることはあるのだろうか。
「俺の影、いや、俺がここに来てからいろいろ悪影響が出てきてるんだろうな」
だからこそ早く決着をつけた方がいい。
「いこうか」
俺はそう言い、立ち上がり、ギルドの出口に向かう。
堀内も「おぅ!」と言いついてくる。
外に出ると、状況は変化していた。
「なんだあれは!」
「わからねえけど、急に表れたんだ!」
「もっとここに長いこと居るやつ呼んで来い!俺たちじゃ分からねえ!!」
みんな黒いモヤを見ながらそう言っている。
「なんで急に、今までみんな見えていなかったのに」
「なんだありゃ・・・」
堀内も黒いモヤが見えるようになったようだ。
「あの下に俺の影がいると思う」
俺はひときは濃いもやを指さす。
「あの下にか・・・!」
俺たちは覚悟を決めて、東門に向かうのだった。
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