第26話 これからのこと
全て思い出した。
いじめの連鎖から抜け出せることが不可能だという事を知り、睡眠薬で自殺しようとした事を。
そしてそれに失敗して、今生きているという事を。
その事実に直面し、立っていられなくなり座り込んでいる。
息遣いが荒くなってくる。
今思えば、なんで生きるのをあきらめたのか理解できない。
あの時はそれほど思い詰めていたのかもしれない。
そのせいで正しい判断ができなかったのだろう。
体が震えている、自殺の恐怖心が今やってきた。
「なんで・・・なんで俺!」
悔しくて仕方なかった。
なんで俺は何も悪いことをしていないのに、自殺という選択をしてしまったのか。
人の心は弱ると、普段思いつきもしないことを実行しようとする。
それが今回、よくわかった。
息が整わない、体の震えが止まらない、意識がもうろうとしてくる。
そっと目を閉じ、息を整え落ち付こうとする。
しかし次から次に、涙がこぼれ落ちる。
それに伴い、心が落ち着いていく。
涙を流すと心が落ち着く効果があるのだろうか。
しばらく涙を流すともう心はだいぶ落ち着いていた。
すると、親の声が聞こえる。
「明~。少しでいいからご飯食べなさい!」
体は疲れきっていて、心も疲弊しているが、なぜかお腹はすいていた。
こういう時は大体、食欲がわかないものだが・・・。
「わかった。今行くー!」
とりあえず、腹ごしらえだ。
ご飯を食べたらさらに心は落ち着くだろう。
そう思い、朝食を食べに行く。
そして朝食を食べていると、
「明、病院行くでしょ?」
「いや、そんな大した程しんどくはないから、寝たら治ると思うよ」
「熱はあるの?」
「全然ないから、大丈夫だよ」
「ならいいんだけど」
「最近あんまり寝れてなかったからそのせいだと思う」
「早く寝ないとダメでしょ!自分の体は自分で管理できるようにならなきゃ駄目よ!」
「うん。今度から気を付けるよ」
そして朝食を食べ終え、部屋に戻る。
もうだいぶ心は落ち着いた。
ただ疲れは取れるわけもなく、フラフラだ。
ちょっと布団で横になって落ち着こう。
そう思い、布団で横になる。
そしてそのまま気付けば眠りに落ちていた。
夢を見ていた。
子供の時の夢だ。
楽しくおじいちゃんとどこかに向かっている。
俺は子供の時、おじいちゃん子だったと聞いている。
しかし、おじいちゃんはまだ俺が小さい時に亡くなっている。
顔は思い出せない。
しかし、毎日の様におじいちゃんと散歩に出かけたり、公園で遊んだりしていたらしい。
心がホカホカする。
何処に向かっているのだろう。
交差点で信号待ちをしている間も、楽しそうに話している。
信号が青になった。
横断歩道を渡っている。
そこで夢はぼやけてくる。
「おじいちゃん・・・」
はっと起きる。
目から涙が落ちていた。
起きた瞬間見てた夢のほとんどが消えてしまう。
ただ、昔おじいちゃんと過ごした楽しい夢を見たことだけ覚えていた。
涙を手でふく。
もう昼過ぎだろうか、時計を見ると昼の3時であった。
「だいぶ寝たな・・・」
朝7時過ぎから記憶がないので、8時間ほど寝たことになる。
そして、夢のせいかアルバムを見たくなってきた。
生まれた時から今までの自分を見つめ直したいな。
めったに湧かない感情だ。
こういうのは思い立ったらすぐにやらなきゃならない。
過去の写真を見るのは嫌いなので、自分のアルバムを全然見たことない。
アルバムがある場所は知っているので、そこに向かい引っ張り出す。
かなりの量だ。
どうやら、俺が小さかった時は、親は何かと写真を撮っていたみたいだ。
生まれたばかりの俺を抱きかかえて笑顔な母親。
ハイハイしている写真。
スプーンで離乳食を食べさせている写真。
記憶にないが、俺が赤ちゃんの時は新しいことをするたびに喜んで写真に収めてくれていたみたいだ。
これを見ていると、自殺をしたことに対して、俺はなんて事をしたんだ、という気持ちがすごい湧いてきて涙が出てくる。
そしてあるページで手が止まる。
「・・・えっ!?」
自分の人生を左右させる、そして忘れてはいけない記憶がそこに眠っていた。
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いつぶりだろうか、頭がすっきりしている。
やはり睡眠とは大事なものであるようだ。
今までの出来事をまとめていこう。
まず、自分の影と決着をつけないといけない問題がある。
まだ俺は生きているので、霊界に影がいるのはよくない気がする。
そもそも、俺自身が霊界に行くことがイレギュラーなのだ。
そして俺の影が言っていた、これから面白いことが待っているという言葉が気になる。
しかしいいことでない気はする。
それを邪魔させないためか俺に攻撃してきたのだろう。
今後どんな影響が出るのかわからない。
早く対処するべきだろう。
霊界に行く前に見た、暗い谷に落ちていく夢が何かしら関係している気がするがそれはまだ謎だ。
光に飛び込んだ先に霊界があったというのが1番自然だろう。
じゃあ光に飛び込めずそのまま落ちていたらどうなっていたのだろう。
分からない。
落ちていたという事はやはり地獄に堕ちている最中だったのかもしれない。
自殺をすると天国にはいけないと聞いたことがある。
そして、立花さんが霊界に干渉できる謎。
それはいくら考えてもわからない。
別に彼女は普通に日常を送っており、ある日突然寝たら霊界に干渉できるようになったようだ。
この問題の解決は難しそうだ。
そして、最後の問題が堀内だ。
中学時代の彼を見ていたら、彼に心の闇があるとは到底思えない。
彼に問題が起きたとしたら、中学卒業後と考えて良いだろう。
それか、裏では心に闇を抱えることがあったとも言えないが、こればっかりは分らない。
これらの問題を解決する必要がある。
そしてそれは次、霊界に行ったらやらなくてはいけない。
自分の影が動くのなら急いだほうが良いだろう。
そんな気がしてならない。
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