第25話 思い出した!
明かりを感じる。
全身汗で湿っている。
目を開けると現世の自分の部屋だった。
俺は慌てて胸に手を当てる。
先ほどまで胸に空いてた穴は嘘のように空いていなかった。
しかし、貫かれた感覚は残っている。
ゆっくり起き上がるが、全身にうまく力が入らない。
今日も学校だがどうしても行ける気がしなかった。
親に体調が悪いことを伝え、学校に休む連絡をする。
するとラインが来ていた。立花さんだ。
内容は、やはり、大丈夫か心配してくれているメッセージだった。
俺は、体調は大丈夫だが、念のため学校は休んだことを伝えると、ゆっくり休んでねと返信が来た。
まぁ、休んだら霊界に行っちゃうんだけどね。
心で突っ込み、ふっと笑った。
「立花さんには助けられてばかりだな」
そして、少し頭痛もあるので、頭痛薬でも飲むことにする。
「頭痛薬残ってたっけ・・・」
自分用の薬箱を開けて確認する。
そしたら1番上に新品で1箱入っていた。
ほっとする。
そして頭痛薬と並んで近くにある薬に目が行く。
〔睡眠導入剤〕1ヵ月分
そういえば、中学生の時のいじめが原因で、夜に寝付けないことが多発したので、病院で処方してもらったものだ。
1回使ったが、思いのほか効すぎた記憶がある。
それ以降使っていない。
「もう使わないだろうし捨てるか」
薬袋を開けて中身を確認する。
すると時が止まった。
「・・・・・えっ!?」
1ヵ月分の錠剤がすべてなくなっていたのだ。
脳に電流が走る。
忘れていた記憶の箱のカギが開かれ、記憶が解き放たれる。
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高校1年生の6月初め、俺はいつも通り高校から帰っていた。
中学の知り合いがいない高校に入り、心も落ち着き、席の近くの人と話したりできるまで回復していた。
そんな俺は気が向いたら新しいことに挑戦するようになっていた。
例えば、高校の帰り道に、コンビニに寄ったり、公園に寄ったりしてみることである。
普通の人から見たら、そんなのは日常で、全然挑戦ではないと思われるかもしれない。
しかし、外に出るだけで、周りが気になり恐怖する俺にとって、それらは未知の領域であった。
とりあえず、高校からの帰り道から少しずつである。
休日は人が多いので無理である。
コンビニや公園に、普通に人が1人で出入りしているのを見て、うらやましかった。
なんで皆、そんなすごいことがあたかも普通のようにできるのか。
なんで自分だけ違うのか、そればっかり考えるようになっていた。
それが著名に表れたのはゲームセンターであった。
最初は、最近はこんなゲームがあるんだ面白そうと思ったり、UFOキャッチャーの景品を見て、これ知ってるアニメのキャラクターだ、とテンションが上がった。
しかし、それらのゲームをしようにも、周りの人間の存在が気になり出来なかった。
周りが自分を見ている。
1人でいることを笑っている。
ゲームセンターに遊びに来たのに、結局何もできない。
最近頑張って色々な場所に行ってるが、成長できていない。
そう落ち込みながら外に出ると、背後から3人の気配があった。
振り返れば、中学時代いじめに加担していたうちの3人だった。
顔が青ざめた。
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ゲームセンター裏の人通りがない場所で、笑い声と鈍い音が聞こえワタル。
「おら!まじ良いサンドバッグだぜ!」
「お!こいつ5000円も持ってやがる」
「これでまだ遊べるな~」
「おい天之原~!お前明日もここに来いよ!もちろん金も持って来い!」
「お金なんてないよ・・・それ今月のお小遣いだし」
「あ?じゃあ親や適当な奴から金、盗んでくればいいだろ!」
「そんなこと出来ないよ」
「できないじゃない!やるんだよ!!」
(あぁ、何をやってもダメだ。人はそう簡単に変われない)
俺は殴られながらそう思った。
これから先もいじめられる人生なんだと諦める。
そのあとしばらく暴力が続き開放は中々してくれなかった。
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その日から、また学校が終わったら帰宅するというルーチンに戻った。
そしてそのまま夏休みに入り、ずっと家にこもった。
そして夏休み最終日、明日からいよいよ新学期であるという日の晩。
今通ってる高校でもいずれ、そして大学、最終的には会社、人生を終えるまで俺はいじめられ続けるだろう。
そんな辛い人生、終わりにしたい。
そう思い夏休み期間中、考えていたことを今日実行することにする。
1ヵ月分の睡眠薬を一気に飲み、自殺することだ。
この時すでに心はバグっていた。
いじめられた過去、そしてこれからもあるだろういじめにしか目がいかない。
生まれて死ぬまでいじめられる、何も悪いことなんかしていないのに。
そして、その苦しみは死刑をも凌駕するのではないだろうか。
何も悪いことをしていないのに、なんでこんなに苦しまないといけないのだろうか。
「俺はもう十分苦しんだ。だからこれ以上苦しめるなよ・・・!」
そう言い、俺は睡眠薬を一気に1ヵ月分飲んだ。
あとは布団でいつも通り寝るだけだ。
そしたらもうこの苦しい世界(地獄)とはさよならだ。
俺はそのまま布団に横になった。
そして静かに目をつぶる。
「さようなら」
睡眠薬をあれだけ飲んだらすぐ寝てそのまま死ねると思っていた。
しかし、緊張からか、ドキドキして眠れない。
(早く寝てくれ、俺!)
しかし焦る気持ちから、鼓動が早まり寝れない。
そして、そのせいか段々しんどくなってきた。
そして呼吸も浅くなってくる。
鼓動が速い、しんどい、息苦しい。
それらの苦痛を耐え続けていたが、意識を保つ糸が切れた。
意識がす~っとなくなっていく。
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