第24話 影の奇襲

それにしても霊力が上がっているのか、傷の回復速度が速い。

先ほどの戦闘で今まで以上のダメージを負ったはずなのに、1日もたたずに全快している。

(この回復力、現世でもあったらな・・・)

そんなことを考えて歩いていると立花さんが話しかけてきた。


【これからどこに行くの?】


そういえばこの問題もあったな。

なんで立花さん、俺に現世から念話らしきものができるのだろう。

聞く話によると、こっちの世界の行動も見えてるみたいだし、謎だな。


「ちょっとギルドに顔出そうと思ってね。堀内が助けてくれたみたいだし、お礼言っておきたいし」


【そういえば、堀内君変わったよね】


それは俺も思った。

昔なら、顔も見てないのに、急に喧嘩売ってんのか?って絡んできて、すぐ殴り掛かってきてたのに。


(いつか、何があったのか話してくれるかな)


もうギルドまで通いなれたものである、あっという間についた。

ギルドの扉に手を当て、開けようとする。

その時、背後に気配を感じ、空気が変わる。

鳥肌が立ち、扉に手を当てたまま動けなくなった。


(後ろに誰か・・・いる!)


『よぉ!久しぶりだな~!!』


真後ろから声が聞こえる。おそらくそんなに離れていないだろう。

どこかで聞いた声、よく聞いた声・・・これは俺の声だ。

自分の声が2重にも3重にも重なり聞こえる。

そんな異質な声は俺に語り続ける。


『お前と離れて、そんな日は経ってねえけどな』


この瞬間悟った。


(やっぱりこいつ、俺の影だ!)


『おいおい!いつまでよぉ~』

その瞬間俺の後ろ首をつかまれた。


『後ろ向いてやがる!』


そしてそのまま影がいる後ろに放り投げられる

強い力だ。

俺はそのままギルドの向かい側にある建物に突っ込んだ。

投げられただけなのに、痛い。

建物は俺が投げられた衝撃で破壊された。


「くっ、いてて」


そう言い、俺は瓦礫をどけ這い出る。

すると目の前には自分の体を形どった黒い存在がそこにいた。


「まんま俺の影だな!」


そこで周りがざわついていることに気付く。

急に影が現れて暴れているんだ、当然か。


「え?なに?」


「影が暴れてるぞ!」


「あの影しゃべってないか!?」


そうやら普通の影はしゃべらないらしい。

どうなってるんだ俺の影!


【大丈夫!?天之原君!】


「痛いけど大丈夫」


【よかった・・・。それよりもあれが天之原君の影なの?】


「どうやらそうみたいだね」


『やっと顔合わせれたなぁ!』


何やら嬉しそうである。


「俺にそんなに会いたかったのか?」


『あぁ!ここに来てから楽しみで仕方なかった!!』


一緒に飯でも食いながら、語り合いたいのかな?


『俺の計画のために、消えろ!』


全然仲良くしようじゃなかった。むしろヤル気だ!

その瞬間拳が顔面に飛んできて1発殴られる。

すると、すごい力で吹き飛ばされる。

意識が刈り取られそうだ。

そして痛すぎる、人生で1番痛いパンチだ。


「がっぐぅ!」


視界がチカチカして何も見えない。


『あぁ?お前弱すぎないか?』


(いや、お前が強すぎるんだよ!)


『ん!?まてよ。おぃおいお前。死にきれずに現世とまだ繋がってるのか!』


(何言ってるんだ?)


「俺が死んだ?何言ってるんだ?」


そこで影はびっくりした顔をして、笑い始める。


『はははは。こりゃ傑作だ。まさか忘れてるなんてよぉ!』


「忘れてる?」


しかし俺は、死んだ覚えはない。


「何言ってるんだ?」


『おいおい、いいこと思いついたぜ。俺』


「なんだと!?」


『こりゃ面白くなりそうだ。ははは』


そこで俺はダメージの回復を確認して、立ち上がる。

いい感じが全くしない。止めないと!


「何思いついたか知らないけど、やめとけよ!」


『やっぱお前は俺の邪魔になりそうだな。消しに来て正解だぜ!』


会話じゃ解決は無理だな!

そう決心し、ダッシュで影に迫りパンチを顔面に繰り出す。

しかし、効いた感じがしない。


「え?」


『はっ、効かねえな!』


そういい、影は連続でパンチを繰り出す。

全部腕でガードするが1発1発が半端じゃないほど痛い。

あまりのダメージにガードが崩れ、体のいたる所にパンチが当たる。

意識が飛びそうだ、すると攻撃がやんだ。

しかし殴る音は聞こえている。


(どうなってるんだ?)


そう思い目を開けるとなんと、堀内が盾で攻撃を防いでいた。


「ほり・・・うち?」


【堀内君?】


「おまえ、いつも殴られてるな!」


堀内は目を細め、悲しい顔をしたような気がした。


「ぐっ、なんて攻撃だ、もう持たねえ」


そういうと楯はぶっ壊れた。

すると

堀内は吹き飛んだ。


『堀内か、いいざまだな』


影はニヤケている。よっぽどうれしかったのだろう。


『これからもっと面白いもんが待ってると思うと、楽しみでしょうがないぜ!とりあえず~・・・』


次の瞬間影が消えた、すると胸部に激痛が走る。

呼吸ができないレベルじゃない。

周りから悲鳴が聞こえる。

堀内はこっちを見て、目を見開き震えて目に涙を浮かべる。

それにしても痛い。

痛みの原因である胸部に目を下すと、そこは影の腕で貫かれていた。

俺は思った、そして口にした。


「これ、死んだ」

影は貫いた腕を体から引き抜いた。

すると俺は地面に倒れた。


【いやぁ~~~~。天之原君!】


意識が遠のく。

最後の景色が目に染まる。

影は両腕を天に振り上げ高笑いしている。

住人たちは、逃げまどっている。

そして泣きながら俺のもとに駆け付ける堀内。

そこで意識が途絶えた。

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