第21話 自分の戦闘スタイル
「ふぅ、今日も来たか」
自分の部屋じゃない天井が目の前に広がる。
ゲンさん家の寝室だ。
大阪と違って空気が澄んでる、すがすがしい寝起きだ。
部屋を出ると、ゲンさんがいつも通り朝食を作ってくれていた。
「おはようございます。ゲンさん」
「おはよう」
朝の挨拶を済ませ朝食を食べる。
朝食の最中、ゲンさんが話しかける。
「そういや、明よ。最近狩りもしとるみたいじゃの」
昨日のゴブリンキングの事がもう広まったのだろうか。
ギルドの受付に言ったらびっくりしていたのを覚えている。
ゴブリンキングは熟練者でもしっかり作戦を練った上で戦わないと厳しい相手だったみたいだ。
(そんなのよく2人で倒せたよな)
昨日ギルドにいた人皆に、その話を聞かれていたみたいで、祝ってくれた。
その中の人がゲンさんに伝えたのだろう。
「はい。釣りをしてたらゴブリンに襲われまして、戦いました」
「ふむ」
ゲンさんは少し考えこみ、口にした。
「明は、武器を使わないのかね?武器を買うお金がないのなら、そんな高いのは無理じゃが、見繕うぞ」
ゲンさんはどうやら、武器を持っていない俺を心配してくれているようだ。
しかし俺は決めていた事があった。
「武器は使うつもりはないんですよ。怖くて。だから、拳で行こうかなって」
「それでも武器は持っといたほうがいいんじゃないかね?モンスターと戦うには武器があれば有利じゃし、何より影との戦闘になれば、霊力を通す武器がないと倒せないからの。」
確かに、町を通っている人を見かけたら、剣や盾であったり、霊力を魔法のように飛ばし攻撃するために必要な指輪を着けたりしてる人が多かった。
しかし、
「えっ?身体に霊力を通すことってできないんですか?」
俺は昨日の戦闘で、身体に霊力を通して、攻撃や防御をしていた。
「それは、聞いたことがないの」
なるほど、未知なる霊力の戦闘法を編み出してしまったか!
俺の戦闘法は誰もやらないみたいだ。
「ゲンさん、どうやら俺、体に霊力通せるみたいです」
そう言い昨日のことを話した。
「なるほど、そんなことがあったんじゃな」
ゲンさんはびっくりした顔で話を聞いていた。
「おそらくじゃが、今まで素手で戦おうなんて人はいなかったから、気付かれておらんのじゃな」
「今までみんな試さなかったんですね」
「うむ。現世でいうと熊を素手で狩ろうとするのと同じじゃ」
なるほど。確かにそれはしないな。
「それに、それは皆が皆、簡単に出来るわけじゃなさそうじゃな」
「えっ?」
「わしも今それを聞いて体に霊力を通そうと思うたんじゃが、無理じゃった。やはり、武器の方が使いやすそうじゃ。」
まじですか。
そんなに難しいのかな。
「武器か・・・」
俺はもともと武器は使う気がない。
殴られる痛さは知っているが、切られる痛みなどは知らないのだ。
知らない力を振り回すのは怖い。
それで、予期せぬ事態を生むことも十分あり得るからだ。
だから俺は戦闘では、痛みを十二分に理解している拳しか使わないことを決めたのだ。
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