第11話 優しいおじいさんがいた

目を開くと天井が目に入った。

どうやら慣れないことをしたからか、いつのまにか寝ていたようだ。


(なんだこの違和感・・・?)


起きたばかりだからか、意識が定まらない。

なんならまだ眠い。

そう思い再び二度寝しようと目を閉じたところ、周りが明るいことに気付く。

明け方という明るさではなく、昼間という感じの明るさだったのだ。

そう思った瞬間慌てて起き上がった。


「学校だ!!」


昼間まで寝たのなら確実に遅刻だ。

目覚ましと、親に起こされるはずだが、全てスルーしたようだ。

しかし、起き上がっていつもと違うことに気付く。

天井や、部屋がいつも見慣れたものではなかったのだ。


「どこだ?・・・ここ」


部屋を見渡し情報を探す。

部屋は全体的に古めのベニヤ板で作られており、家具もすべて装飾がなされていない。

見た目よりも実用性を重視しているようだ。

部屋の中に風が入り込んでいるのに気付き、窓を見ると、ガラスははめ込まれていない。


「また、これ夢の世界か・・・」


もう3日連続となれば、その現象に慣れてしまっている自分がいる。


「よし、とりあえずこの家の住人に会ってみるか」


部屋のドアは引き戸になっていた。

どうやらそこまで、技術力はないようだ。

引き戸を開けたら、すぐ大部屋があった。

そこには、食事をするスペースであろう、テーブルがあり、調理スペースのかまどなどがある。

今の日本の生活に比べたら、100年以上昔の生活をしているんだろうと思う。


「電気はなさそうだな・・・」


電化製品が全くないからだ。

とりあえず、ここの住人を探すか。


「すいませーん、誰かいませんかー?」


しばらく待っても返事はない。

この家に住人はいないのか?


「まさか、今日も人がいない夢なのか?」


生活感がある家といえども、ここは夢だ。

人がいないのも十分あり得る。


(このまま、じっと夢が覚めるのを待つのも暇だし、冒険してみるか・・・)


そう決意し、外に出ようと玄関に向かっていると、外から玄関を開け中に入ってくる者がいた。


「おぉ・・・起きよったか!」


その人は80歳ぐらいの白髪のおじいさんで、特徴として鼻が少し出っ張っていた。

とても優しくていいおじいさんと見た。


「あっ、すいません。気付いたらこちらの家で寝ていたみたいで」


自分がもし急にこの屋敷に出現したのなら、不法侵入になる。

謝っておかねばならないと思ったのだ。

しかし


「いやいや、お前さんは、儂が川で釣りをしておったら、どんぶらこと流れてきたのじゃよ」


「俺は桃太郎かよ!」


「ほっほっほっ、桃太郎か、懐かしいの~」


「え?もしかして過去にも桃太郎がいたんですか?俺って2人目!?」


「いやいや、昔孫によく桃太郎を読み聞かせとったんでの~」


(なるほど、この世界にも桃太郎などの童話が普通にあるのか)


もし桃太郎になる夢だったのなら、鬼ヶ島に鬼退治に行かなくてはならないところだった。

ほっと安心し胸をなでおろす。


「そうだったんですね。川に流されているところを助けていただきありがとうございました」


「ふむ、昨日の大雨の洪水で流されたのじゃろう、気にするな」


「・・・えっ!?」


昨日の大雨、覚えがある。

昨日見た夢で、ありえないほどの大雨が降っており、すぐそばに川が流れていたな。

そこでゴブリン達にボコボコにされたんだっけ。


「しかし、結構なケガをしておったようじゃが、何があった?」


全身、鳥肌が立つ。鼓動が早まる。


「け・・・が?」


「しかし、すごい体じゃのぅ。あれだけのケガがもう治っとる。」


眼球が震える、冷や汗が出てくる。

昨日の夢の続きを見ている?

そんなあり得ない憶測をたて、無言で立ち続けるのであった。

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