第9話 事情聴取されました
「天之原君!大丈夫!?」
立花さんはすぐに俺のもとに駆け寄ってきてくれた。
「ごめん・・・、すぐに助けに行けなくて」
「ううん、助けに来てくれて私うれしかったよ」
立花さんはなんて優しいんだ。
不良たちに言い寄られて、あげくに髪をつかまれ引きずり回されたのに。
「こっちこそごめんね、怖くて私全然動けなかった。見てることしかできなかったの」
「それはしょうがないよ、俺も怖かったし。助けを待つことしかできなかった」
立花さんはびっくりした顔をした。
「そんなことないよ。私は何もできなかったのに、天之原君は助けてくれた。本当にありがとう」
そこで警察官が応援を呼びながら近づいてきた。
「君たち!大丈夫か!?」
「はい!私は無事なんですが彼が3人に殴られてケガを!!」
「なんだって!?君大丈夫か!?」
「はい。殴られたのは全部お腹だったのでケガというケガはしていません」
「いやいや、お腹を殴られて臓器を負傷して亡くなってる人もいるんだから看過しちゃ駄目だよ!」
立花さんはびっくりして
「えっ!?そうなんですか?」
(同じ中学だけど話したことがない俺に対してこんなに心配してくれるなんて・・・)
立花さんと警察官が話しているが、内容はあまり耳に入ってこない。
そこで警察官の無線から声が聞こえて来て、何やら無線越しに会話をしている。
そして、聞くとさっきの3人をとらえたみたいな内容だった。
「君たち、事情を聴きたいから1回署の方に来てもらっていいかな?」
「はい!私は大丈夫ですけど、彼が・・・」
「いえ、痛みも引いたので大丈夫です!」
「そうか、確かに大丈夫そうに見えるが念のため病院には行くようにな!」
「はい!」
そのあと、警察署に行き、事情を話した。
「なんと!君がこの事件を目撃し、通報してくれた天之原君だったか!」
「はい、そうです」
俺は明らかに勝ち目がなかったので、警察の力を借りることをすぐに思いついたのである。
呼んだら5分以内に来てくれる距離だったので、すぐに電話で呼んだ。
あとはできるだけ時間を稼ぐことを最優先にすることを決めていた。
「あと、これも!」
そう言い、自分のスマホを取り出して、その画面を見せた。
「これは!?」
警察官はびっくりして目を見開いてそのスマホ画面を見た。
「はい、通報してから警察の方が来るまでを動画で撮っていました」
不良が逃げて捕まえることができなかった場合や、そんなことをしていないという供述をされたときの為に、スマホを録画状態にして、胸ポケットに入れていたのである。
最近のスマホって丈夫だよね!保護ケース付けてたからなおさら。
「これは確かに、すごい証拠になるよ!」
警察官は感心していた。
やはり胸ポケットに入れていたものなので、関係のない所を映していたりしているものの、映っている場面もしっかりあり、音声に至ってはずっと撮れているので証拠としては十分だろう。
「自分で通報して、証拠も録画する人なんてそういないもんだよ」
一瞬の判断だった。その判断が間違っていなかったこと、そして、計画通りに事が進んでくれたことにほっとする。
「今日は色々疲れただろうし、お話はここまでにしよう!」
「今日はどうもありがとうございました」
今日起きた事件は人生で初めての出来事だった。そして、いやなことばかりじゃなくて片思いしてた女の子と再会することもできた。
あとから聞いた話、不良たちは少年院に入れられたみたいです。
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