第29話 私たちはお兄ちゃんとデートする必要があるの!

前回のあらすじっ!

 SNSで呟きました。以上っ!


 そして、翌週の月曜日となる。


 今週の土曜日は12/25でクリスマスとなっている。


(ま、俺には関係のないイベントだな)


 そんなことを思いながら、俺は、学校終わりの放課後、神野さんが車で待機している場所へと向かう。


「すみません!遅くなりました!」


「いえいえ!さぁ!今日は楓先生原作ドラマの挿入歌を歌いに行きますよ!」


 そんな掛け声と共に、車が出発した。




 車が大きな建物の前で停まる。


「先に中に入って着替えておいてください!今日はドラマ監督もいらっしゃるようですので!」


 そう言われて、俺は先に中へ入り、歌うだけなのに何故かドラマの格好へと着替えさせられる。


 着替え終わった後、監督やスタッフの元に挨拶へ行く。


「監督、今日はよろしくお願いします!」


「おー、シロくん。楓先生から歌が上手なこと、聞いてるからな!楽しみにしてるぞ!」


「あ、ははは…が、頑張ります」


(期待に応えれるかは分からんが、涼宮さんから太鼓判をもらってるんだ。全力で歌えば大丈夫だろう!)


「事前に歌う曲は教えてると思うから、さっそく歌ってみようか。一回で合格となることはないと思うから、合格が出なくても、気にすることはないからな」


「はい!」


 今回歌う曲は、陰キャ筆頭の俺でも知っている有名なJ-pop。


 俺は歌うことができるように家で何度も聴いてきたため、歌詞もバッチリ暗記している。


 歌う部屋に入り、準備が出来たことを伝える。


 部屋のスピーカーから曲が流れ出し…


「〜〜〜〜♪」


 俺は自分の歌唱力に自信を持って、全力で歌う。


 曲が終わり、俺は一息つく。


(ふぅ、歌い間違いとかはなかったな。あとは監督たちの反応だが……)


 俺は声がかかるのを待つが、一向に声がかからない。


(あ、あれ?反応が何もないんだが……しかも、監督なんて立ったまま、固まってるんだけど……)


 俺はスタッフの反応を見て、不安になる。


(や、やっぱり俺の歌唱力は酷かったんだ!涼宮さんは褒めてくれたけど、全国放送となると、微妙な歌唱力なんだろう!)


 俺は反応がないため、不安になっていると…


「シロくん!」


 監督が大きな声を出す。


「素晴らしい!素晴らしいよ!」


「……………へ?」


「楓先生の言ってた通りだ!シロくんに任せて良かったよ!」


「あ、あのぉ……俺は合格なのですか?」


「あぁ!合格だ!こんなに素晴らしい歌唱力を秘めていたとは!正直、一発で合格を出すとは思わなかったぞ!シロくんは歌手としての才能もあるな!」


「あ、ありがとうございます」


(「歌手としての才能がある」は言い過ぎだとは思うが、自信を持って歌うことのできた結果だな。涼宮さんが褒めてくれなかったら一発合格はなかっただろう)


「じゃあ、シロくんの出番はこれで……いや、待てよ?」


 何やら監督がブツブツ言い始める。


 そして…


「よし!シロくん!今度はこの曲の中から1曲歌ってほしいんだが、どれなら歌える?」


 監督から5曲ほど提示され、俺は全ての曲を確認する。


(お!涼宮さんたちのアイドルグループのデビュー曲があるぞ。この曲は涼宮さんからのお墨付きもあるから、これにしよう!)


「この曲なら歌詞も覚えてますので、歌えます!」


「よし!じゃあ、確認取るからちょっと待ってて」


 監督はどこかへ電話をかける。


「シロくん!OKの返事が出たから、この曲も歌ってみよう!」


「わかりました!」


 俺が返事をすると、涼宮さんたちのデビュー曲が流れ出す。


 俺は、涼宮さんから褒めてもらった時のように、全力で歌う。


「〜〜〜〜♪」


 歌い終わり、監督たちの反応を待つ。


「うん!今回もバッチリだ!これはドラマが終わったら歌手デビューするかもな」


「いやいや!俺以上に上手い人は沢山いますよ!」


「俺は出会ったことないんだが……まぁいい。これで今日は終了だ。お疲れ様」


「はい!お疲れ様でした!」


 俺は監督に挨拶をして、神野さんと合流する。


 家に帰る途中、神野さんから俺の歌唱力をひたすら褒められた。


(わかったから!俺がすごく歌が上手いのはわかったから、もう褒めないで!)


 俺の心が持ちませんでした。




 家に帰り着くと…


「あ、おかえりー。どうだったー?」


「おかえり、シロ」


 桜と穂乃果が玄関に現れた。


「あぁ、バッチリだったよ」


「おー!さすがお兄ちゃん!」


「ん、シロなら大丈夫だと思ってた」


 本来なら、俺の活動についてくるはずだったが、2人とも用事があったらしく、今回は俺だけだった。


「でね、お兄ちゃん!今週の土曜日はクリスマスだよ!神野さんに聞いたら、クリスマスの日に芸能活動はないらしいね!」


「ん、そういうことなので、シロは土曜日、私たちとデートする」


「なんで!?」


「最近、シロが胸がデカいだけのアイドルと胸がデカいだけのモデル、それに貧乳しか取り柄のない金髪女優とイチャイチャして、デレデレしている」


「だから、お兄ちゃんが他の女にデレデレしないよう、私たちはお兄ちゃんとデートする必要があるの!」


「お、おおお俺はデレデレなんかしてない!」


(てか、穂乃果の奴、胸の大きさで人を判断してんのか?しかも貧乳しか取り柄のないってどゆこと!?)


 俺がそんなことを思っていると、スマホが鳴る。


「あー!スマホが鳴ったなぁー!ちょっと確認しなきゃ!」


 俺は2人から逃れるためにスマホを確認する。


(あれ?同時に3件のメッセージが来たんだな)


 そこには…


『涼宮香織:シロくん!お疲れー!突然なんだけど、12/25って空いてる?もし空いてるなら、デートしよ!前回は邪魔が入ったけど、今度は梨奈に邪魔されないようにするから!』


『ミレーユ:シロ様、お疲れ様です!突然なのですが、12/25は空いてますか?その日に私の部屋でお部屋デートのリベンジをしましょう!リンスレットもシロ様に会えるのを楽しみにしてますよ!』


『星野ミク:お疲れ、真白くん。突然だが、12/25は空いてるか?その日、アタシの家でクリスマスパーティーをするんだが、ヒナが真白くんを誘いたいらしくてな。べ、別にアタシが真白くんと一緒にクリスマスを過ごしたいってわけじゃないからな!』


「……………………」


(ナニコレ!?)


「お兄ちゃん、どうした……」


「シロ、何かあった……」


 桜と穂乃果は俺が固まった原因が気になって、俺のスマホを覗き込んだ。


 そして…


「ねぇ、お兄ちゃん。このメッセージは……なに?」


「シロ、大人しく白状して」


「えーっと………な、なんだろ?高い壺を買わせるとか?」


「「はぁ……」」


 2人からため息が聞こえる。


「お兄ちゃん、正座して」


「なぜ!?俺、何でこんなメッセージがきたのか、わかってない……」


「はやくして」


「………はい」


 2人から放たれる威圧に勝つことができず、俺は渋々正座しました。


 玄関前の廊下で。

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