第25話 むしろファンが増えるんじゃないかな?

前回のあらすじっ!

 夏目さんが涼宮さんを手玉に取ってました。以上っ!




 夏目さんが部屋から出て行くのを見送り…


「こほんっ!では、さっそくシロくんの歌唱力チェックを始めます!」


「俺は歌が下手だから幻滅するとは思うが、よろしく頼む」


「任せて!じゃあ、音楽を流すよ!」


 涼宮さんは俺が準備できているのを確認して、涼宮さんのアイドルグループ『スノーエンジェル』のデビュー曲を流す。


「〜〜〜〜♪」


 その曲を俺はいつものように全力で歌う。


 そして、歌い終わり…


「ど、どうだった?」


 涼宮さんに俺の歌唱力を聞く。


 すると…


「………………」


 ポカンとしてて返答がない。


「おーい、涼宮さーん」


「はっ!」


 俺の声掛けにようやく反応する。


「ど、どう………」


「ちょっとシロくん!」


「は、はい!」


 すごい剣幕で俺に詰め寄る涼宮さん。


「なんなの!あの歌は!?」


「ご、ごめん。やっぱり酷かったよな」


「違うよ!上手すぎだよシロくん!私、シロくんより歌が上手な人、見たことないかもしれないよ!」


「お、おう」


(俺の歌を聞いて意識が遠くの方へお出かけするくらいだったのに、褒めてくれるとは……)


「で、俺に何かアドバイスはないか?遠慮せずビシバシと言ってくれ」


「いやいや!だから、私からアドバイスすることなんて何もないよ!」


「そ、そんは遠慮することはないぞ?だって家族とのカラオケでは、誰1人としてコメントしてくれないんだぞ?きっと、コメントすることのできない歌唱力を……」


「違うよ!コメントすることのできないくらい、すごい歌唱力なんだよ!」


「そ、そこまで褒めなくてもいいぞ?俺の歌が酷いことは自分が一番理解してるからな」


「一番理解してないのはシロくんだよ!」


「……………え?ホントに俺って歌が下手じゃないの?」


「うん。私にアドバイスしてほしいくらい上手いよ」


 どうやら、アドバイスの必要がないくらい上手いらしい。


「じゃ、じゃあ。今のような感じで歌ったら、全国放送されても、幻滅されたりしないのか?」


「むしろファンが増えるんじゃないかな?」


「oh……」


(ま、まぁ、全国放送されても恥をかくほどの歌唱力ではないということがわかったのは大きい。ファンが増えるのは涼宮さんが過剰に言ってるだけだろう)


 俺がそんなことを思っていると…


「お、思った以上にはやく終わったね」


「ん?そうだな。まさかアドバイスをもらわないとは思わなかったからな」


(アドバイスをもらうはずの時間が暇になってしまったな)


「ね、ねぇシロくん。こ、これから予定ある?」


「いや、特にはないぞ?」


「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ、これから少しだけ私のお願いに付き合ってもらってもいいかな?」


 涼宮さんは断られないか不安そうに聞いてくる。


「あ、あぁ、いいぞ」


 俺の返事を聞いて、パーっと笑顔になる。


「ありがと!シロくん!私、今度、ドラマ収録があるんだけど、その読み合わせに付き合ってもらいたいんだ」


 そう言って、俺に台本を手渡す。


「今回、私はメインヒロインってわけじゃないけど、貰った役の中で、大事なシーンの一つをシロくんと読み合わせたいの!」


 涼宮さんは簡単にドラマの内容と読み合わせシーンの説明をしてくれる。


 今回のドラマは学園ラブコメで、読み合わせをしたいシーンは、涼宮さんが主人公にアプローチをするところ。


「私はセリフを覚えたから、台本はシロくんが使って!あ、台本の登場人物の名前とは違うけど、私はシロくんって呼ぶから、シロくんも私のこと、いつも通りに呼んでいいからね!」


「わかった」




〜以下、涼宮さん主演ドラマの読み合わせ〜


 俺は学校が終わった放課後、教室で1人、勉強をしていた。


 すると…


「ねぇ、シロくん!何してるの!?」


 同じクラスの涼宮さんに話しかけられる。


「ん?あぁ、涼宮さんか。もうすぐ期末テストだから、勉強しとこうと思ってな」


「テストまであと2週間もあるよ?」


「いやいや、もう2週間しかないんだ」


「へー!シロくんってすごいね!でも、勉強のしすぎはダメだよ!少しは息抜きしないと!」


「俺にはそんな時間は……って、ペンを返せ!」


 俺は持っていたペンを涼宮さんに取られる。


「ダーメ!そんなに詰め込んでもダメだよ!息抜きしなきゃ!」


 こうなったら涼宮さんを止めることはできないので…


「はぁ、仕方ない。勉強やめて帰るか」


 俺は机の上の物を片付けて、立ち上がる。


「うん!息抜きは大事だよ!だからね、今から私とデートするよ!」


 そう言って俺の右腕に抱きついてくる涼宮さん。


「さ、さぁ、レッツゴー!」


 涼宮さんの掛け声で俺たちは教室を出て……


「って、ちょっと待て!」


「ど、どうしたの!?」


 俺は読み合わせを途中で中断させる。


「いや、なんで俺に抱きついてきてんの!?台本にそんなシーンないんだけど!?」


「え、えーっと………そ、そう!台本には書いてないけど、そこのシーンには修正が入ったんだ!」


「そ、そうなのか?」


「う、うん!だから、抱きつくところも練習しとかないといけないないんだよ!」


 未だに抱きついている涼宮さんは、目を泳がせながら言う。


(なんか怪しいが、涼宮さんを疑うわけにはいかないからな)


「ま、まぁ。涼宮さんがそう言うなら……」


「う、うん!あ、他にも台本にないことをやるかもしれないけど、気にしなくていいからね!」


「わ、わかった」


「じゃあ、読み合わせを再開するよ!」





 あれから、結局、涼宮さんを断ることができず、商店街へ向かうため、公園を横切っている。


 涼宮さんが右腕に抱きついた状態で。


(これはマズイ!右腕にめっちゃ柔らかい何かを感じる!さすが涼宮さん。デカい!)


「ね、ねぇ、シロくん。ちょっと疲れたから休憩しない?」


「そ、そうだな……お、あのベンチで休憩しよう」


 俺たちはベンチ(今回は大きなソファー)に移動して腰掛ける。


 俺は疲れが出たのか、座った途端、あくびが出る。


「あ、疲れてるね、シロくん」


「あぁ。最近、夜遅くまで勉強してるからな」


「そうなんだね!そんな頑張り屋さんのシロくんに私からご褒美をあげるよ!」


「お、ホントか!?」


「うん!私が膝枕をして癒してあげるよ!」


「あぁ、ありが……って!そんな台本じゃ……」


「も、もう!何してるの!」


 困惑している俺を無理やり膝枕させる。


「だ、台本には書いてなかったけど、こ、ここは膝枕になったの!」


 顔を真っ赤にしながらそう言われたため…


「そ、そうか…」


 膝枕という状況に照れながら、俺は涼宮さんの太ももを堪能した。

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