第23話 根回ししたのに。原作者の権力で。

前回のあらすじっ!

 俺の正体がシロ様だとバレそうです!ピンチなう!以上っ!




 俺は右手をミクさんに握られ、シロ様に渡したはずの絆創膏をしていることにツッコまれている。


「あー、じ、実は俺も持ってたんだよ。この絆創膏」


「そうなんだ。この絆創膏、通販でしか売ってないやつだけど」


「……………お、俺も通販で買ったからな」


「へー。じゃあ、この熊さんの名前は?」


 そう言って、ミクさんは絆創膏にプリントされている熊を指さす。


「え、えーっと……ク○モン?」


「それは熊本のゆるキャラだ」


(うん、知ってる。絶対、違うと思った)


 俺が返答に困っていると…


「ねぇ、真白お兄ちゃんってシロ様なの?」


「真白さんってシロ様なのですか?」


 ヒナちゃんとお母さんが聞いてくる。


(くっ!誤魔化す方法が思いつかねぇ!シロ様からもらったって言うか?いや、もらった絆創膏をシロ様が右手の甲に貼ったのはヒナちゃんたちが確認してる!)


 俺は考えるのを諦め…


「実は俺がシロ様の正体なんだ」


 素直に打ち明ける。


「やっぱりそうだったんだ」


「ヒナとお姉ちゃんが思ったことは間違ってなかったの!」


「シロ様の正体は真白さんだったのですね。これを旦那に伝えたら面白いことになりそうです」


 3人とも驚く様子は見られない。


「あれ?驚いたり、幻滅したりしないの?だってこんな陰キャみたいな奴がシロ様の正体だったんだけど…」


「最初にシロ様と会った時に疑ってたからな。アタシはそこまで驚かないぞ」


「ヒナはシロ様の正体が真白お兄ちゃんで嬉しいの!」


「驚きはしましたが、幻滅はしませんよ」


「そ、そうか」


(正体がバレて幻滅されるかと思ったが、3人からそう言われると嬉しいな)


 そんなことを思っていると、お母さんが俺に近づき、耳元で…


「真白さんはミクとヒナ、どちらと結婚したいですか?胸が大きいミクですか?それとも、天真爛漫で将来は美少女になるヒナですか?」


「えっ!な、何を言ってるのですか!?」


「ふふっ、慌てなくてもいいですよ。旦那にシロ様の正体を話せば、真白さんが娘と婚約者になることなんて簡単にできますので」


 そう言って、俺にウインクをする。


「お母さん、何話してるのー!?」


「少しだけ真白さんと、将来の話をしただけですよ。では、真白さん。答えはいつでもいいので、考えてくださいね」


「じゃあ、真白お兄ちゃん!また今度ね!あと、怪我をさせてごめんなさい!」


「アタシとも一緒に仕事しような」


 各々、俺に一言告げてから別れる。


(一応、シロ様の正体については問題なさそうだったが……え?お母さん、本気で俺に言ってたの?俺が返答すると、ミクさんたちの婚約者になれるの?)


 俺は、お母さんが言ったことの真意を考えるが、理解することはできなかった。




 あれから、車に戻り、家まで送ってもらう。


「ただいまー」


「あ、おかえり!お兄ちゃん!さっそくだけど、お母さんが呼んでるよ!」


「お、おう………明日の夜でいいかな?」


「何、バカなこと言ってるの?」


 抵抗虚しく、無理やり桜に引っ張られる。


(ギャァァァァ!!!!イヤな予感しかしない!)


 良いニュースであることを願いながら、仕方なくリビングでくつろいでいる母さんの下に行く。


「あら、帰ったのね。おかえり」


「あ、あぁ。ただいま。で、何か話があるんだろ?」


「えぇ、良いニュースと悪いニュースがあるのだけど、どちらから聞きたい?」


(悪いニュースがあるのかぁ……なら、先に悪い方から聞くか。良い方を聞いて悪いニュースの内容を忘れよう)


「それなら悪いニュースから聞こうかな」


「わかったわ。さっき、ドラマ撮影の監督から、撮り直したいシーンが数ヶ所あるから、次の収録は長くなるかもってお話があったわ」


「わかった。それくらいなら問題ない」


(なんだよ。悪いニュースって言われたから身構えてたけど、思ってたより悪いニュースじゃなかったな)


 俺は安堵する。


(これで、後は良いニュースを聞くだけだ。イヤな予感ってのは当てにならなかったな)


 そんなことを思いながら、良いニュースを聞く。


「良いニュースは、ドラマのことよ」


 そう言って、少し溜めを作る母さん。


「今度、シロ様がドラマで歌を1曲歌うことになったわ。おめでとう」


「全然良いニュースじゃねぇよ!」


(なんでだよ!俺、そんなことをしたくないんだけど!)


「あら、良いニュースじゃない。真白くんの美声が全国放送されるのよ?」


「それだよ!それが嫌なんだよ!」


「あら、断るの?せっかくシロ様が歌を歌えるよう、根回ししたのに。原作者の権力で」


「余計なお世話だ!」


(原作者の権力、使いすぎだろ!)


「あ、ちなみに私が既にOKを出したから、拒否権はないわ」


「待て!普通、俺に聞いてからOKを出すよな!?」


「話そうと思ったけど、断られると思ったから、私がOKしたわ」


「原作者ってそんなことできるのか!?」


「違うわ。今回は親である私に相談が来たからOKしたのよ」


「母さんに話が行った時点で詰みじゃねぇか!」


 俳優デビューとなった時は原作者の権力で、今回は親の権力を使われる。


「そういうわけだからお願いね」


「…………はい」


(もう、拒否できないって言ってたからなぁ。下手だけどやるだけやってみるか)


「あ、私、真白くんが歌うの上手だから引き受けたのよ。だから、頑張ってね」


 そう言って、母さんはリビングから出て行く。


(俺って歌うのが上手いのか?いやいや、そんなことないだろ。だって家族でカラオケ行った時、みんなコメントしてくれないんだぞ?コメントに困るくらいの歌唱力ってことだろ。ど、どうすれば……)


 そんなことを思っていると、俺はある名案を思いつく。


(そうだ!アイドルの涼宮さんから、歌う時のコツを教えてもらおう!)


 俺はスマホを取り出し、涼宮さんにメッセージを送る。


『日向真白: お疲れ!突然なんだけど、今度、俺がドラマで歌を歌うことになったんだ。でも、俺って歌うのが下手なんだよ。何かアドバイスやコツとかあれば教えてほしい!』


『涼宮香織: お疲れー!それなら、私が直接教えるよ!そっちの方が上手に教えることができると思う!今度の土曜日は空いてるかな?』


『日向真白: ホントか!今度の土曜日は空いてるぞ!お願いしてもいいか?』


『涼宮香織: うん!任せて!』


(おー!ありがたい提案だぜ!これで、なんとかなるかも!)


 テンションの上がる俺であった。

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