第21話 ドンマイなの、真白お兄ちゃん

前回のあらすじっ!

 今から食事会ですが、楽しめるか不安です!以上っ!




 ヒナちゃんたちのお父さんが部屋から出て行く。


「ごめんなさい、真白さん。旦那はあんなことを言っておりますが、私は真白さんが邪な気持ちでヒナに近づいてないことを理解しておりますので」


「ヒナも真白お兄ちゃんは良い人って思ってるの!」


「アタシも真白くんは悪い人じゃないって思ってる」


「ありがとうございます」


(ヒナちゃんたちからそう言われると嬉しいなぁ)


 俺が安堵していると…


「あ、真白くんがシロ様なら、お父さんも怒ったりしないな」


 名案かのようにニヤニヤしながら言うミクさん。


「そ、それは無理だなぁ」


 俺はシロ様であることを否定する。


(ヒナちゃんたちにはシロ様と疑われたことがあったが、あの時はなんとか誤魔化せたからな)


「ふふっ、冗談よ」


 ミクさんはクスッと笑う。


「それにしてもお父さんは言いすぎなの!今日からお父さんのこと無視するの!」


「あぁ。アタシもお父さんのことを無視してやろう」


(娘2人から無視されるって、お父さん、泣くんじゃないかな?)


「お母さんも参加しようかな」


 追い打ちをかけるように、お母さんまで参加するようだ。


(お父さん……俺のせいではないので、そこのところ、ご理解してください)


 俺への恨みが増える未来が簡単に想像でき、心の中で、お願いをする俺であった。




 あれから、俺たちはリビングへと移動する。


 お父さんはすでに、椅子に座って俺たちを待っていた。


 お母さんが料理をテーブルへと運び…


「「「「「いただきます」」」」」


 そう言って食べ始める。


「おー!お母さん!今日のご飯は豪華で美味しいの!」


「ふふっ、真白さんが来るので張り切って作りました。なので、真白さんは遠慮なく食べてくださいね」


「ありがとうございます」


(うん!どの料理も美味しい!)


 そんなことを思いながら、唐揚げや味噌汁を食べていると…


「ねぇ、昨日、ドラマの収録場所にいたけど、真白くんはどんなバイトをしてるの?」


「!?」


 ミクさんの質問に俺は驚く。


(お、おい!ここはなんて答えるのが正解なんだ!?)


 俺が必死に考えていると…


「あ!ヒナも気になってたの!」


 ヒナちゃんも気になっていたようで、食いついてくる。


(くっ!シロ様の正体をバラすのは論外だ!俺には、みんなが想像するシロ様の人間性を持ち合わせてないため、俺とシロ様を照らし合わせるようなことをされるとアウトだ!お父さんが絶対やりそう!)


 いろいろと考えるが、いつまでも黙ってるわけにはいかないので…


「え、えーっと……シ、シロ様のマネージャー見習いをしてて」


 シロ様の関係者と伝える。


(これなら、神野さんがサポートしてくれるだろう)


「へー!シロ様のマネージャーをしてるんだ。やっぱり、シロ様ってお父さんが言ってたくらい良い人なの?」


 ミクさんが驚きながら聞いてくる。


(キタ!別に狙ったわけではないが、この質問はありがたい!シロ様って実は良い人ではないことをアピールできるチャンスだ!)


「それが、そんなことないんだよ。『おしゃべり7』で「女性と付き合ったことあるよね?」って言われて否定したら、なぜか「節操のない男になりたくないから、今まで付き合ったことがない」って良い方に捉えられたんだ。でも、シロ様、控え室で『女の子を取っ替え引っ替えできるならしてみたい!』って言ってたぞ?」


(どうだ!これならシロ様に幻滅するだろ!)


 俺の言葉にミクさんは首を傾げながら…


「でも、今まで誰とも付き合ったことないんだよね?」


「あ、あぁ。そうだな」


「あの顔で?」


「ん?あの顔だからな」


(なんか「イケメンなのに付き合ったことないんだよね?」みたいなことを言われたぞ?)


「なら、絶対、節操のない男じゃないな。誰かと付き合いたいなら、もうすでに何人もの女性と付き合ってるはずだ」


「いや、だから……」


「そうだよな。父さんもシロ様は節操のない男じゃないって思ってたぞ。やっぱり、俺の想像通りの男だな。それに比べて、日向くん。嘘はいけないぞ。危うく、俺たちがシロ様の間違った情報を信じてしまうところだった。やっぱり、君には娘をやれんな」


「……………すみません」


(なんでそうなるんだよ!絶好のチャンスかと思ったら、なぜかシロ様の評価が上がって、俺の評価が下がったじゃねぇか!真実を言っただけなのに!)


 意気消沈してる俺に…


「ドンマイなの、真白お兄ちゃん」


 慰めの言葉をかけるヒナちゃんの声が聞こえた。

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