第20話 君に『お父さん』と呼ばれる筋合いはない!

前回のあらすじっ!

 昨日始めたSNSのフォロワー数が5万人を突破しました。驚きしかありません。以上っ!




 今もなお増え続けるフォロワー数から目を背けて学校へ行く。


 いつものように、桜と穂乃果の3人で学校へ行き、穂乃果と一緒に教室へ入ると…


「見てみて!昨日、本物のシロ様がSNSを始めたんだって!」


「知ってる!私フォローしたよ!」


「私もー!」


「みんな、やる事がはやいねー!」


 そんな会話をして笑いあってるクラスメイト。


「でね!今日もシロ様を探しに行こうと思うんだけど、どうかな?」


「賛成ー!そろそろ見つけたいよね!?」


「写真でシロ様のことを見続けてるから、ちょっとした変装なら気づくと思うんだけどなぁ」


「だよね……」


 どうやらまだ見つけることができていないらしい。


(あの人たち、まだ探してたんかよ)


 俺はクラスメイトの行動力に感心する。


(最初の頃は正体がバレると「カッコ良くないのに目立ちやがって。調子に乗るなよ?」とか、文句を言われると思っていたが、今は俺の正体がバレても文句を言われることはないと思う。SNSで好印象のコメントがたくさん来てたからな)


 俺は自分が正体を隠していた理由を思い出す。


(だが、みんなが想像しているシロ様の人間性と、邪なことを考える本来の俺の人間性がかけ離れすぎてて、バレたらダメなのは変わらないよ!「実はシロ様って陰キャで性格悪いんだって。応援するのやめよ」とかなっちゃう!)


 俺は改めてバレないように気をつけようと思った。


 その横で…


「ちょっとした変装なら見破れるとか言ってたけど、ほぼ毎日、シロと会ってるのに気づくことができない。やはり雑魚」


 穂乃果がクラスメイトを雑魚呼ばわりしてました。



 

 本日も問題なく学校が終わる。


 そして、18時前。


 俺は駅前で、ヒナちゃんたちのお母さんに、車で拾ってもらう予定となっている。


 少し待つと、俺の前で一台の車が停まる。


「ごめんなさい。お待たせしました」


 お母さんが車から降りてくる。


「いえ、大丈夫です」


「娘たちは家で待ってますので、さっそく家に向かいましょう」


「お願いします!」


 俺は車に乗り込み、ヒナちゃんたちの家に向かった。




 運転中…


「ごめんなさいね。ヒナたちのお願いに付き合わせてしまって」


「いえ、俺も楽しみにしてますので」


「ふふっ、それはよかったです」


 笑いながら言うお母さん。


 すると、突然…


「真白さんには我が家に着く前に伝えなければならないことがあります」


 緊迫した声で言われる。


「な、なんでしょうか?」


「実はですね。家でミクとヒナが真白さんのことを絶賛してるんです」


「は、はぁ……」


「そして、それを聞いた旦那が怒ってるんです」


「なぜ!?」


(えっ!俺、今から怒られに行くの!?)


「それは……まぁ、会えばわかると思います。旦那に会っていきなり怒鳴られると思いますが、許してください」


「わ、わかりました」


(えーっと……もう行くのやめて、帰っていいかな?)


 俺は早々に家へと帰りたくなった。




 ヒナちゃんたちの家に到着する。


「ただいまー。真白さんのお迎えから帰ってきたよー」


 その声にヒナちゃんが駆けつけてくる。後ろにはミクさんもいる。


「真白お兄ちゃん、こんばんはー!」


「あぁ、こんばんは」


「真白くん、お疲れ。今日は来てくれてありがと」


「こんばんは、ミクさん。こちらこそ、呼んでくれてありがと」


 俺は2人に挨拶をする。


 すると、突然、ミクさんが真面目な表情となる。


「来て早々悪いんだけど、この部屋に入ってもらってもいいか?」


「ん?いいけど、何かあるのか?」


「お父さんが待ってる」


「……………………」


(嫌だ!入りたくない!)


 とは言えないので、俺は了承して部屋に入る。


「し、失礼します」


「来たか。君が日向真白くんだな」


「は、はい!」


 とても怖い顔をして俺を睨むお父さん。


 お父さんが正座しているので、俺も正座をする。


(お、俺はどんな理由で怒られるんだ?わからんが、かなり怖い顔をしてるから、よほどの悪さを俺がしてしまったんだろう)


 俺が内心ビクビクしていると…


「単刀直入に言おう」


 お父さんが喋り始める。


(ゴクリっ)


「娘はやらん!!」


「…………はい?」


「日向くんが2人に近づいてきた理由はわかってる。俺の娘たちは可愛いからな。だが!君に娘を渡すつもりはない!」


「………………」


(えーっと……なにこれ?)


 俺は返答に困ったため、扉の隙間から覗いている3人に目線でヘルプを求める。


 俺のヘルプに気づいたお母さんが部屋に入ってくる。


「はぁ、ごめんなさいね、真白さん。昨日の夜、真白さんが来ることを伝えてからずっとこんなこと言ってるの」


「えぇ……」


「今日の朝も『日向くんを簡単に信じたらダメだぞ!お父さんが、日向くんの悪いところを見つけてやるからな!』って娘たちに言ってたんです」


「な、なぜですか?」


「バカだからです」


 なかなか辛辣なことを言うお母さん。


「ちょっとお母さん!本人である俺に聞こえてるんだけど!?」


「聞こえるように言ったので、聞こえて当然よ」


「あ、そう……」


「だいたい、ホントに娘が結婚相手を連れてきた時、どうするつもりなの?」


「そんなもの『娘はやらん!』って言うに決まってるだろ」


「はぁ……いつになったら娘離れできるのかなぁ」


 お母さんの呟きに俺も心の中で同意する。


「なら、お父さんはどんな人が娘の結婚相手に相応しいって思うの?」


 その言葉に、お父さんは少し考えてから…


「そうだな。まずは女を泣かせるようなことをしない男で、結婚した時に、娘のことを大事に思ってくれる男性だな。それこそシロ様のような方だ」


「!?」


 突然、俺の名前が出てきて驚く。


「シロ様なら無条件で結婚を許すんだね?」


「無条件とまではいかないが、すぐに否定はしない。実際に会ったことはないが、娘と同年代でシロ様以上に素晴らしい男性はいないと思ってる」


「へー、シロ様ってお父さんがそこまで言う方なんだね」


「あぁ、俺の仕事柄、芸能人の情報がかなり耳に入ってくるんだが、シロ様からは悪い噂を一つも聞かず、いい噂しか聞かないからな」


「やっぱり、シロ様ってすごい方なんだ」


 お父さんとお母さんが納得している。


 俺はその様子を黙って聞いていたが…


(な、なんでシロ様に対しての評価が高いの!シロ様のことを過大評価しすぎだよ!これは訂正しなければ!)


「ま、待ってください!お父さん!」


「君に『お父さん』と呼ばれる筋合いはない!」


(確かにそうなんだけど!)


 自らお父さんの怒りスイッチを押す俺。


(でも、ここは訂正する必要がある!ビビるな俺!)


「あ、あの、ヒナちゃんのお父さんに聞きたいことがあるのですが……」


「ん?なんだ?」


「え、えーっと……シロ様のいい噂を具体的に聞いてもよろしいでしょうか?」


「それを聞いても日向くんが真似できるとは思わないが、一応教えてあげよう」


 そう言って、お父さんは教えてくれる。


「まずは最近放送された『おしゃべり7』での振る舞い。あれは素晴らしいの一言だ。あれだけの振る舞いを高校生でできる人は多くないだろう」


(『おしゃべり7』のシロ様は偽りのシロ様なんだって!)


「あとは、俺の耳に入ってきた情報なんだが、これを聞いた時、俺はシロ様なら娘と結婚しても大丈夫と思ったんだ」


(そう!その情報よ!なんで娘との結婚を反対するお父さんが、シロ様だけ了承するのかが知りたかったんだ!)


「そ、それはなんでしょうか?」


「それはな、女性に対しての紳士的な振る舞いだ」


「紳士的な振る舞いですか?」


「あぁ。もちろん、男性に対しての対応も素晴らしい。だが、俺は女性に対して紳士に振る舞えるシロ様を聞いて、娘を任せれると思ったんだ」


「………………」


(待って!なに言ってるかわからねぇ!俺の対応が紳士!?どの辺が!?)


「えーっと……ど、どのような出来事でそのように思ったのでしょうか?」


「そうだな。例えば、というかこれが決め手なんだが、ラジオでアイドルの涼宮香織さんや女優のミレーユさんが、揃ってシロ様の性格や対応を絶賛していたというところだな」


(そ、そういえば、誰かのファンレターに涼宮さんたちがそれぞれのラジオで絶賛してたって言ってたな)


「あの2人があそこまで絶賛するところを見たことがない。それだけ、シロ様は素晴らしい人間で紳士だということがわかる。だから、すぐに結婚を許すことはしないが、シロ様なら前向きに娘との結婚を考えるだろう」


(えっ!涼宮さんたち、このお父さんにここまで言わせるくらい俺のこと絶賛したの!?それ絶対、偽りのシロ様だから!)


 そう思ったため、改めて訂正しようとするが…


「だが、君はシロ様ではないから、娘たちに邪な気持ちを持って近づいたはずだ。そんな気持ちを持ってる奴は必ずボロが出る。俺は日向くんが、かわいい娘たちを騙してるってところを暴いてやるからな!」


 そう言って部屋から出て行った。


(えぇ……結局訂正できなかったし、俺への評価最低だし……)


 今からの食事会が不安になる俺であった。

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