第17話 さすが童貞です
前回のあらすじっ!
俺が落とした避妊具をなんとか誤魔化すことができました。多分……。以上っ!
リンスレットさんと少し話をしていると、倒れていたミレーユさんが起き上がる。
そして俺と目が合うと、顔を真っ赤にして…
「シ、シロ様!あ、あれはですね!ビ、ビッチじゃないことを証明するための行動であって、私はその……ち、痴女……ってわけじゃないです!」
「わかってる!わかってるから一旦落ち着いて!」
(このままじゃ、また変なこと言い出すぞ!?)
「うぅ〜、シロ様に恥ずかしいところを見せてしまいました」
ミレーユさんは項垂れながら言う。
「ご、ごめん!俺のせいでミレーユさんに恥ずかしい思いをさせてしまった。ホントに申し訳ない」
(好きでもない男の目の前でスカートを脱ごうとしたんだ。心にかなりのダメージを負ってしまっただろう)
「だ、だから、今度、俺に出来ることならなんでもしようと思う!」
俺はそう提案するが…
「い、いえ!シロ様は悪くありません!シロ様は男の子なのですから、ゴ、ゴムくらい持ち歩いててもおかしくないのに、見ただけで動揺してしまった私が悪いです!」
(う、嘘だろ!?誰がどう見ても俺が悪いのに、ミレーユさんは自分が悪いと言うのか!お、俺はこんな優しい女の子を穢してしまったなんて……罪悪感がハンパない!)
「違う!これは全て俺が悪い!だから、俺に出来ることならなんでもする!罪悪感で押しつぶされそうなんだよ!償わせてくれ!」
「いえ!それを言うなら私もです!私のような子がシロ様に……は、裸を見せようとしたんです!シロ様の目が腐ってしまうところでした!」
「いやいや!ミレーユさんはかわいいんだから、目が腐ることなんてないよ!」
「ふぇっ!」
顔を赤くして驚くミレーユさん。
「ど、どうした?」
「シ、シロ様……わ、私ってかわいい……ですか?」
「あ、あぁ」
「あ、ありがとうございます」
「「……………………」」
(何が!?俺に『かわいい』とか言われても嬉しくないだろ!)
そんなことを思っていると、リンスレットさんが、黙って部屋から出ようとしているのが見えた。
「ちょっと待て」
「なんでしょうか?シロ様?」
俺はリンスレットさんを呼び止める。
「なぜ、部屋から出ようとしてるんだ?」
「それは、お2人がイチャイチャし始めたので、空気を読んで部屋から出た方が良いかと思いまして」
「イ、イチャイチャなんかしてないわ!」
「…………なるほど。あれをイチャイチャとは言わないのですね。勉強になります」
雑に返答される。
「とにかく!リンスレットさんはこの部屋にいてくれ!」
「わかりました」
そう言って、リンスレットさんは部屋から出るのをやめる。
「それで、リンスレットさんに相談したいことがあるんだが……」
そこまで言って、俺は溜めをつくる。
「全然ミレーユさんが俺の提案を受け入れてくれないんだけど!しかも、ミレーユさんも自分が悪いとか言い出したよ!どうすれば俺の提案を受け入れてくれるかな!?」
「そんなの押し倒せば終わります」
「俺の人生が終わるわ!」
(相変わらず何言ってんのかわからねぇ!)
その後、俺が困っていることを真剣に伝えると…
「はぁ、わかりました。解決できるよう協力します」
そう言ってリンスレットさんはミレーユさんの下に向かう。
「お嬢様。今回のお部屋デートは消化不良かと思いますので、もう一度、都合の良い日にお部屋デートを実施してみては、いかがでしょうか?」
そう提案する。
「そ、そうね。今回、シロ様とやりたかったことが一つもできなかったから」
そう言いながら、ミレーユさんは頷く。
「シ、シロ様。ま、また私の家に招待してもよろしいでしょうか?」
ミレーユさんが上目遣いでお願いしてくる。
「あ、あぁ。俺も、ミレーユさんと話したいことはたくさんあるからな」
俺がそう応えると…
「ありがとうございます!シロ様!」
満面の笑みで言うミレーユさんに、見惚れてしまう俺であった。
その後、時間も遅くなってしまったため、今日は家へ帰ることとなった。
「ごめん、ちょっと電話かけてもいいかな?」
「はい!」
俺はミレーユさんから了承を得て着信履歴を確認する。
(桜から電話が来たんだな。これのせいで避妊具を落とすことになったから、どーでもいい内容だったら文句を言ってやろう!)
そんなことを思いながら、桜に電話をかける。
『あ、もしもし、お兄ちゃん』
『ごめんな、さっきは電話に出られず。何の用だ?』
『お母さんから今日の夜、カレーと鍋どっちがいい?って』
『………………』
『聞いてる?お兄ちゃん?』
『どっちでもいいわ!』
そこで電話をブチ切る。
俺はクソみたいな内容の電話で避妊具を落とすことになったらしい。
(この電話のせいで、俺が避妊具落とすことになったのかよ!晩御飯なんかどっちでもいいわ!)
そんなことを思いながら、ミレーユさんたちと合流した。
あれから、車で俺を家の近くまで送ってくれる。
「今日はありがと。おかげで明日の俳優はなんとかなりそうだよ」
「いえいえ!シロ様のお役に立てて嬉しいです!」
笑顔で応えるミレーユさん。
「今回はあまりお話しできなかったから、今度はたくさんお話しをしよう!」
「はい!また連絡します!」
ミレーユさんの返事を聞いて、俺は車から降りる。
すると…
「あ、シロ様。忘れ物があります」
そう言ってリンスレットさんが助手席から降りてくる。
(あれ?俺、何か忘れ物したかな?)
「これを忘れておりました」
なぜか避妊具を手渡される。
「いらんわ!」
俺は手渡された避妊具を、そのままリンスレットさんに返す。
「わかりました。次回のお嬢様とのデートまで、私が預かっております」
「そういう意味で返したわけじゃないんだけど!?」
そう言うが聞く耳もたない。
「あ、私、シロ様に言いたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
俺が聞き返すと、リンスレットさんは俺の耳元に近づいて…
「いくらでも襲うチャンスがあったのに……ヘタレですね。さすが童貞です」
そんな言葉を残して、リンスレットさんは車に乗りこんだ。
「…………………」
(もう、リンスレットさんとは会わないようにしよう)
俺は心の中でそう決意した。
あれから、のんびりと歩いて家に帰る。
玄関のドアを開けるとカレーの良い匂いが漂ってくる。
(お、晩御飯はカレーになったんだな)
そう思いながら手を洗い、リビングへと入る。
「ただいま。母さん、俺のご飯ある?腹減って死にそうなんだよ」
「おかえり、テーブルに用意してあるわ」
「ありがと、母さん」
(おー、気が効くね)
俺はお腹が空いたため、すぐに自分の席へと座る。
すると、そこには雑草があった。皿の上に、丁寧な盛り付けで。
「あ、あの……母さん?これなに?」
「真白くんの晩ご飯よ」
「えーっと……俺の晩ご飯は雑草ですか?」
「違うわ」
「なんだぁ、よかっ……」
「『自宅産 その辺の草〜土を添えて〜』よ」
「雑草じゃねぇか!」
(雑草をフランス料理っぽくカッコよく言っただけだろ!)
「何をしてるのかしら?はやく食べないと冷めるわよ?お腹が空いて死にそうなのでしょ?」
「…………どっちでもいいと怒鳴ってしまい、申し訳ありませんでした。反省してます。俺はカレーが食べたいです」
「そう、なら桜の電話の時にそう言いなさい」
「………はい」
クソみたいな内容の電話ではなかったようです。
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