第13話 玄関の扉に『シロ様います』の張り紙でもしようかしら

前回のあらすじっ!

 CM撮影が終了して、涼宮さんたちと別れたとこ!以上っ!




 その後、俺たちは一度控え室に戻り、家に帰る。


 その途中、控え室や車の中で、何度か桜たちに話しかけるが…


「なぁ、桜。収録現場の見学はどう………」


「ふんっ!」


「…………………」


「なぁ、穂乃果。収録現場の見学はどう……」


「ん?犯罪者の声が聞こえる」


「誰が犯罪者だ!」


 さっきからこんな対応だ。


(俺、何かしたのかな?まぁ、こんなことをされるってことは、俺が何かをしたんだろう。身に覚えはないが……)


 そんなことを思いながら、家に帰り着く。


 神野さんを見送ってから、リビングに入ると…


「ねぇ、お兄ちゃん!私、怒ってるんだよ!」


「ん、私も怒ってる」


 いきなり説教をされる。


「うん。そんな気はしてた。でも、俺、2人から怒られるようなことしてないぞ?」


「はぁ、シロはわかってないと思った」


「うん、私もだよ、穂乃果さん」


 2人から呆れられる。


「じゃあ、なんで怒ってるんだ?」


「それはね!涼宮さんたちと仲良くイチャイチャしてたからだよ!」


「ん、私たちに見せつけるように。しかも、デレデレしてた」


「待って!俺は2人とイチャイチャなんかしてねぇ!」


「えっ!収録で2人から“あーん”されて、2人の頭を撫でてたのに、イチャイチャしてないってよく言えるね!」


「うっ!」


(た、たしかに、イチャイチャしてるぞ。もし俺が、桜たち立場なら、呪いの呪文を唱えてるわ)


「ご、ごめん。で、でも!これは致し方ないことだったんだ!」


(これは台本に書かれていたこと!だから仕方ない!)


 俺がそう説明すると…


「うん、それは知ってるよ。だから……ね、お兄ちゃんは私たちに……あ、“あーん”をして、あ、頭ナデナデをしないといけないの」


「なんでだよ!」


 桜が顔を赤くしながら、訳の分からないことを提案してくる。


「ん、桜の言う通り。これじゃ、私たちが不憫」


 そして、なぜか穂乃果も同意する。


(えっ!こんな俺にされても嬉しくないだろ!?)


 そう思っていると、穂乃果は俺の右手首を持って、無理やり俺の手を自分の頭に乗せる。


 それを見ていた桜も穂乃果の真似をするように、俺の左手を無理やり自分の頭に乗せる。


「は、はやくして」


「そ、そうだよ?恥ずかしいんだから……」


 2人は顔を赤くして上目遣いでお願いしてくる。


(上目遣いは反則だろ……)


 俺は2人の可愛さに拒否できず、2人の頭を撫でる。


「ん〜!」


「お兄ちゃん、とても良いよ……」


 2人は抵抗する様子なく、しばらく俺に頭を撫でられる。


(なぜ、俺にこんなことを言ってきたのかは分からんが、これで機嫌が治るって言ってるからな。もう少し2人に付き合うか……)


 そんなことを思いながら、俺は2人の頭を撫で続けた。




 俺はしばらく2人の頭を撫で続ける。


「な、なぁ、もういいだろ?」


「まだダメ。私の怒りは収まってない」


「そうだよ!私も怒ってるんだからね!」

 

 怒ってるらしいが、表情を見るかぎり怒っている感じはしない。


(さすがに長いなぁ。俺に頭撫でられても嬉しくないだろうに………)


 そんなことを思っていると…


(そ、そうか!わかったぞ!)


 俺は2人の行動理由にピンとくる。


(これは俺が涼宮さんたちにナデナデしてたから嫉妬してるんだ。だから急に『頭撫でて』と言い出したんだろう。ふふっ、なんだ、可愛らしいところもあるじゃないか)


 そんなことを思い、ニヤニヤしながら2人の頭を撫で続けていると、“ガチャッ”との音を立てながら、リビングのドアが開く。


「「「!?」」」


 俺たち3人は同時に驚いて、ドアを開けた人を見る。


 そこには桜の母さんで、今は俺の母さんでもある『日向楓ひなたかえで』がいた。


 桜と同じ赤い髪を腰まで伸ばしており、20代後半から30代と思われてもおかしくないくらい美人な女性。


 その女性、母さんが俺たちを見て固まる。


 そして…


「邪魔して悪かったわ」


 そう言ってリビングのドアを閉めた。


「わー!待って母さん!」


「お母さん!絶対何か勘違いしてるから!」


 俺と桜が全力で母さんを呼び戻す。


「何かしら?私は真白くんが桜と穂乃果ちゃんに頭を撫でてるように見えたから、邪魔しない方がいいかと……」


「そ、そうなんだけど、これには理由があるの!」


「ん、その通りです」


「そう、それは聞いてみたいわね。真白くんが桜と穂乃果ちゃんの頭を撫でる理由を」


「こ、これは……そう!お兄ちゃんへの罰なの!」


「……………………」


 嫉妬とかではありませんでした。


(はぁ、嫉妬かと思ったのに、ただの罰ゲームだったのかよ……)


 俺はガッカリする。


「ちなみに、どんな罰を与えてたのかしら?」


「うっ!、えーっと……そ、そう!お兄ちゃんが私たちにデレデレしてるところを眺めようと思ったの!」


「俺の反応で遊ばないで!」


(2人から遊ばれていただけかよ!『嫉妬かな。可愛いところあるね』とか思って浮かれてた自分を殴りたい!)


「ふーん。私の目には2人の方が……」


「わー!なに言おうとしてるのよ!お母さん!」


「いえ、私の目には2人の方が……」


「あーもう!お母さんは黙ってて!」


 桜の言葉に穂乃果も頷く。


「ふふっ、そうね。そういうことにしておくわ」


 完全に手玉に取られる桜たち。


「相変わらず桜のお母さんには勝てる気がしない……」


 俺の横で穂乃果がボソッと呟いていたのが聞こえてきた。




 場が少し落ち着いてきたため…


「母さん、今日は仕事が終わるのはやかったな」


「えぇ、今日の打ち合わせは早く終わったの」


 俺の母さんは大人気小説家で、数ヶ月前、母さんの書いた小説のドラマ化が決定した。そのため、打ち合わせ等で多忙な日々が続いている。


「ホント残念だったわ。真白くんの芸能界デビューが1年くらいはやければ、主役を真白くんにしたのに……」


「あ、ははは……まだ言うんですね」


 デビューしたばかりの俺が主役をできるとは思わないが、事あるごとに言われる。


「主役になれず残念だとは思うけど、安心して。今日の打ち合わせで、先週、問題を起こした俳優さんが降板となり、新しく代役が必要となったから、真白くんを推薦してきたわ」


「…………はい?」


「聞いた話によると、今日のCMを監督した方から大絶賛してもらったらしいわね。その監督からのお墨付きがあるから、初めての俳優業も大丈夫との意見が多数出て、私の希望が採用されたわ。CMの映像は見てないけど」


「………俺、俳優するの?」


「そうよ。多分、そろそろ神野さんから連絡が来ると思うわ」


 そう母さんが言い終えると同時に、俺のスマホが鳴る。


『もしもし』


『あ、今日はお疲れ様でした!今、お時間大丈夫でしょうか?』


『お疲れ様です。今は大丈夫です』


『わかりました!さっそくなのですが、急遽、日向さんに仕事が入りました!内容は、小説家、楓先生原作ドラマの出演依頼です!』


(ま、まじかよ!母さんの言った通りの電話じゃねぇか!)


『そのドラマに、先週、問題を起こした俳優さんが出演するはずだったんですが、その方の降板が決まったらしく、新しい代役を探してたらしいです。その時に、楓先生から強い希望があり、日向さんに声がかかりました。引き受けていただけますか?』


『えーっと……俺なんかじゃ無理だと思いますので断ろうかと……』


「あ、そういえば、真白くん。シロ様の正体を突き止めようとしている人たちが、この辺りをウロウロしてるらしいわね。玄関の扉に『シロ様います』の張り紙でもしようかしら」


『……………やります』


『ホントですか!?ありがとうございます!急遽の代役となるため急ですが、収録日は来週の月曜日、明後日になります!そのため『おしゃべり7』同様に放課後、学校まで迎えに行きます!よろしくお願いします!』


 そう言って神野さんとの電話を終了する。


「あら、引き受けてくれるのね。とても嬉しいわ」


「………………」


(くそっ!断りたかったけど、母さんなら本当に張り紙を貼りそうだから断れなかったんだよ!さすが母さん、人の嫌なところを突いてくる!)


「変なことを考えてる顔だわ。これはSNSで……」


「あー!そーいえば俺、いつか俳優の仕事をしてみたいって思ってたんだよ!いやー、そんな機会をくれた母さんには感謝しかないな!」


「そう、嬉しいことを言ってくれるわね。私も推薦した甲斐があったわ」


「…………うん。ありがとう、母さん」


(俺、俳優なんかしたくないんだけどぉぉぉぉ!!!!)


 俺は心の中で叫んだ。

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