第8話 さすがシロくん!素晴らしい人間性だよ!
前回のあらすじっ!
はやく部屋に戻りたい!以上っ!
俺は「ちょっと待っとけ!」と、言われたので、大人しく待つことにしたが…
「涼宮さんはシロ様のなんなんですか!?私はシロ様と少しでも仲良くなりたいんです!邪魔しないでください!」
「ミレーユさんこそ、私の邪魔をしないで!私は純粋にシロくんが困ってるから助けるだけだよ!ミレーユさんみたいに不純な動機じゃないよ!」
未だに大声でケンカする2人。
(なんでどっちも譲らないんだよ!俺みたいな奴と関わらなくて済むんだよ!?願ったり叶ったりじゃないの!?)
俺は、2人がどうやったら落ち着いてくれるかを考えていると…
「わー、すごいことになってますね、日向さん。何があったんですか?」
神野さんが俺に声をかけてきた。
「実は、部屋の場所がわからず迷子になってたところ、涼宮さんとミレーユさんが部屋までの案内役を引き受けてくれたんです。そしたらなぜか2人が睨み合い出して…」
「なるほど、理解しました」
「ホントですか!?俺、口喧嘩してる理由がわからなかったから仲裁できなかったんです!すみませんが、2人の仲裁をお願いします!そろそろ、部屋に戻って収録の準備を始めた方がいい時間になったと思うので!」
「わかりました!」
そう言って、神野さんは2人の下へ歩き…
「はいはい、涼宮さんにミレーユさん。そこまでにしましょう。お互い、案内役を譲ることができないようなので、2人仲良くシロ様を部屋に送る……」
「「それは無理です」」
「あ、そうですか……」
神野さんでもダメでした。
(仲が良いのか悪いのかわからねぇな!)
そんなことを思いながら、再び、思考を巡らせていると…
「ちょっと!香織さん!こんなところで何してるんですか!もうすぐ収録が始まりますよ!」
「ミレーユ!探したよ!収録の準備に取り掛かるよ!」
それぞれのマネージャーらしき人たちが涼宮さんたちを回収しに来た。
「あーあ、ここまでかぁ。残念だけど仕方ないかぁ。じゃ!シロくん!次は収録でね!」
「私もここまでのようです。もう少しお話をしたかったですが、仕方ありません。収録で会いましょう!」
そう言って、2人は俺から離れていく。
「待って!」
俺は2人に言わなければならないことを言ってなかったため、呼び止める。
「なに?シロくん?」
「なんでしょうか?シロ様?」
「2人とも、俺を助けるために案内役を引き受けてくれてありがとう!すごく嬉しかったよ!」
俺は感謝の気持ちを伝える。
「いえいえ!困った時はお互い様だよ!」
「そうです!だからシロ様は気にしなくていいですよ!」
2人は笑顔で返事をしてくれる。
(こんな俺のことを率先して助けてくれる。2人はすごく優しい女の子だなぁ)
俺はそんなことを思った。
俺は部屋に戻り、神野さんから説明を受ける。
「日向さん。この番組は司会の方がゲストの方に話を振ります。ゲストはあらかじめ用意していた内容を話すという番組です」
「そこは番組を見たことあるのでわかります」
「今回、急遽というのと、日向さんが初めてのテレビ番組ということを考慮して、日向さんは番組側が用意している質問に答えていただくだけとなってます」
「わかりました!」
「もしかしたら、司会の方が日向さんに話を振る可能性はありますが、そこは頑張ってください!」
「はい!」
俺は神野さんとの打ち合わせを終え、収録現場へと向かう。
俺はスタッフ等に挨拶をしながら自分の席に座る。
「あ!シロくん!隣だね!」
「シロ様ー!さっきぶりです!」
「あぁ、2人とよろしくな」
俺の右隣に涼宮さん、左隣にミレーユが座っている。
最初に収録に関することをいくつか聞き、説明が終わると収録開始の合図が出る。
「はい!始まりました『おしゃべり7』。今回は、今注目を集めている若い方々をゲストとして迎えております!」
司会の男性が元気に喋り出す。
「ではさっそく、ゲストの方々を紹介します!」
ゲストは俺を含めて5人。
司会者が1人ずつ紹介していく。
「続きまして、現在放送中のドラマでヒロイン役に抜擢され、ドラマやテレビ収録等で大忙し!大活躍中のミレーユさんです!」
「はーい!皆さんよろしくお願いしまーす!」
ミレーユさんが挨拶すると、周囲から拍手が沸き起こる。
「続きましてはアイドルグループ『スノーエンジェル』のリーダーで、センターを務めている、大人気アイドルの涼宮香織さんです!」
「よろしくお願いします!」
涼宮さんも挨拶をすると、ミレーユさんと同様、拍手が沸き起こる。
その後、司会者が俺の下に近づいてきて…
「では最後のゲストを紹介します!今月発売の『読者モデル』では、販売と同時に売り切れる店が続出するという異例の事態が発生。その事態の要因と言われているのが、その雑誌の表紙を飾り、1日で世の女性たちを虜にした男、シロ様です!」
そう言って、司会者は俺の方を見る。
「…………もしかして、俺のことですか?」
「はい!あなたのことですよ!シロ様!」
「やっぱり俺のことだったんですね!?」
(俺、雑誌を完売させ、尚且つ、世の女性たちを虜にするような男じゃないと思うんだけど!)
そう思ったが、司会者から言われたので、俺のことなのか考えてみる。
(雑誌の売り切れ続出には俺が関わってるらしいが…うーん……あ!もしかして全然カッコ良くない奴が表紙を飾っていたことで逆に目立ち、手に取って立ち読みしてみると、他のモデルさんたちが素晴らしく、売り切れに繋がったってことか!)
俺は納得する。
(で、俺が1日で世の女性たちを虜にしてるらしいが……うん!これは、司会者がオブラートに包んでくれたんだ!本当は『今、世の女性たちから、目の敵にされているシロ様です!』って紹介したかったんだろう。うまいなぁ、この司会者。ある意味、世の女性たちを虜にしてるわ!)
俺はそう結論づけて…
「すみません!自分が雑誌の完売に大きく関わっており、世の女性たちを虜にしてるとは思ってなかったもので、反応できませんでした!」
「いえいえ!雑誌の完売に関しましては、表紙を飾ったシロ様のおかげだと、我々スタッフは思っておりますよ!」
「いやいや!そんなことありませんよ!俺の表紙で手に取って下さる方は大勢いたかも知れませんが、皆様が購入された理由は私ではないと思います!きっと、他のモデルさんが素晴らしかったから、購入されたと俺自身思ってますよ!」
「!?」
その言葉に司会者は驚く。
「た、たしかに!その通りです、シロ様!どうやら我々が間違っていました!雑誌の完売はシロ様のおかげと思い込んでしまいましたが、決してシロ様だけの力ではありません!完売は、他のモデルさんたちのおかげでもあります!我々に気づかせてくれてありがとうございます!シロ様!」
そう言って俺の手を握る司会者。
「い、いえ……どういたしまして……」
(なんかめっちゃいい感じに捉えられたんだけど!俺、謙遜してたわけじゃないから!俺の本心だから!)
そんなことを思っていると…
「さすがシロくん!素晴らしい人間性だよ!」
「さすがシロ様です!あの雑誌の完売はシロ様のおかげだと思ってた私を殴ってやりたいです!」
俺の両隣にいた涼宮さんとミレーユさんが、過剰に反応してきたため……
「あ、あははは………」
俺は愛想笑いしかできなかった。
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