第7話 悪い方でな!
前回のあらすじっ!
シロ様の正体を知ろうと躍起になっているハンター共の巣窟(教室)へと送り込まれた。俺は無事に脱出することができるのか!?以上っ!
(俺、生きて家に帰れるのかなぁ…)
そんなことを思ってた時期が俺にもありました。
「普段通りの一日で終わったじゃねぇか!」
学校が終わり、俺は自宅のリビングで叫んでいた。
(えっ!ビックリするぐらい普段通りだったんだけど!)
そう、俺は今日、あの陽キャたちのことを遠くから眺めていたが、誰一人として気づくことはなく、いつも通り、会話をしたのは桜と穂乃果だけで学校が終わった。
(まぁ、俺の影の薄さが素晴らしかったって証拠だな。今後も慢心せずに影の薄さを極めていこう)
そんなことを思っていると、電話が鳴った。
『もしもし』
『あ、お疲れ様です!神野です!今お時間大丈夫でしょうか?』
『はい、大丈夫です』
『ありがとうございます!実はさっそくお仕事の依頼が入りました!』
『……え?お仕事?俺にですか?』
『はい!』
(はやすきだろ!OK出してからまだ1日しか経ってないんだけど!)
『ちなみにどんな仕事ですか?365日無人島生活ですかね?』
『なかなかハードな仕事ですが、そんな仕事ではないので安心してください。仕事は『おしゃべり7』という番組です。今回、今注目の若手を中心に集めたいとの要望が番組側からありまして、日向さんにオファーが来ました』
『まぁ、注目しかされてませんからね……』
(悪い方でな!)
『どうでしょうか?収録日は明日の夕方頃と、急にはなりますが……』
『なかなか急ですね。俺が急に入り込んで大丈夫なのですか?』
『あ、その点は大丈夫らしいです。急遽出演できなくなった方がいて、1人少ない状態で収録する予定だったらしいです』
『そうなんですね。俺は明日の夕方空いてますので、番組側が良ければ収録可能です』
(やるだけのことはやるって決めたからな。まさか、こんなにはやく仕事が舞い込んでくるとは思わなかったが……)
『わかりました!明日、学校が終わり次第、収録場所に向かおうと思いますので、私が学校まで車で迎えに行きます!』
『よろしくお願いします!』
その後、俺は神野さんに学校が終わる時間や拾う場所を教えて電話は終了となる。
「ん?お兄ちゃん、さっそく仕事が入ったの?」
「あぁ、どうやらそうらしい」
「どんな仕事?」
「『おしゃべり7』って番組の収録で……」
「えっ!お兄ちゃん!その番組に出るの!?あの番組ってホントに注目のある人か、注目されるであろう人しか出演できないらしいよ!?」
「まぁ、俺は今、絶賛注目の的だから間違ってないんだろう」
(悪い方でな!)
「で、収録日はいつなの!?」
「あぁ、急だが、明日の夕方なんだ。だから、学校が終わり次第、神野さんが学校で拾ってくれることになってる」
「おー!芸能人ぽいよ、お兄ちゃん!」
「そうだなぁ。って!そんなことより、桜!俺はその番組で何を話せばいいんだ!?」
「そこは私じゃなくて神野さんに聞いてよ……」
ごもっともです。
(まぁ、明日の車の中で聞けばいいか)
そんなことを思い、俺はリビングてゆっくりと過ごした。
翌日、穂乃果に収録の件を話しながら登校する。
本日も影の薄さが本領を発揮してくれたため、俺の正体がバレることはなかった。
(ふぅ、今日も影の薄さが頑張ってくれたぜ)
そんなことを思いながら、俺は神野さんとの約束の場所に向かう。
俺が学校でどんな格好か、あらかじめ神野さんに伝えていたため、問題なく合流できた。
「お待たせしました!」
「いえ、少し学校から離れてましたが、ここでよろしかったのですか?」
「えぇ、神野さんが校門前で待機すると、俺、車に乗り込める自信なかったので……」
「はぁ……よくわかりませんが、さっそく収録場所に向かいます!」
「はい!よろしくお願いします!」
俺が返事をすると、神野さんは車を走らせる。
「あの、俺は今日、何を話せばいいんですか?」
「あ、その点は安心してください!日向さん自ら話すことはないように手配はしております!さすがに初めての収録で話すのは難しいと思ったので、日向さんには質疑応答がメインとなってます!」
「それならよかったです!」
(ふぅ、質疑応答形式ならなんとかなるだろう)
「そして、別件にはなりますが、明日からの土日は予定ありますか?」
「いえ、特にはありませんね」
「了解です!もしかしたら土日も仕事となる可能性がありますので、空けていただいてもよろしいでしょうか?」
「はぁ、わかりました」
(あれ?なんで仕事がこんなに舞い込んできてるんだ?)
俺は理由を考えるも、納得のいく答えが導き出せなかった。
収録場所へと到着する。
今回、番組側の要望で、キッド様のコスプレで収録に臨むことになっている。
着替え終わると、挨拶まわりをするとのことで、神野さんと一緒に各部屋へ挨拶してまわる。
司会をされる大御所の方やスタッフに挨拶が終わり、用事のある神野さんとは一旦別れる。
そして、俺は初めての挨拶まわりで疲れたため、休憩するために自分の部屋へ向けて歩き始める。
しばらく歩くと…
(やべぇ!迷った!)
全然知らないところに辿り着きました。
(えっ!ど、どうしよ!?)
俺が内心テンパっていると…
「あー!日向くん!」
遠くの方から涼宮さんが声をかけてきた。
「お疲れ様ー!あ、芸名はシロくんだった。じゃあ、これからはシロくんって呼ぶね!」
「お疲れ。俺はどっちでも良いぞ」
「ありがとー!って、そうだ!シロくんも今日は呼ばれたんだね!」
「あぁ。急だったけど声がかかったからな」
「『読モ』からこの番組に出れるなんてすごいよ!しかも、この番組が初収録でしょ!?」
「そうなんだよ…。だから今、結構緊張してて……」
「それなら私の方がほんの少し先輩だから、サポートできるところはサポートするよ!」
「おー!それはありがたい!さっそくだが、自分の部屋がわからなくなったんだ。案内してもらえると助かるんだが……」
「ふふっ!なかなか可愛らしいことするねっ!」
クスクス笑いながら涼宮さんが言う。
「やめてくれ、俺だって迷子になりたくてなったわけじゃ……」
そんな会話をしていると…
「えっ!もしかしてシロ様ですか!?」
後ろから声をかけられたので振り返る。
そこには、金髪を腰まで長く伸ばした美少女がいた。
(あの人は、最近テレビで見かけるようになったミレーユさんだな)
胸は小さいがスラっとした体型で、日本人と外国人のハーフが特徴的な彼女。俺の1つ年下の女性で、最近活躍している女優だ。
「あ、お疲れ様です!ミレーユさん!」
「お疲れ様です、涼宮さん。そして、会いたかったです!シロ様!」
そう言って、ミレーユさんは俺に近づいてくる。
「あ、ありがとうございます」
「私、ずっと、シロ様に会える日を楽しみにしてたんです!まさか、すぐ会えることになるとは思いもしませんでした!これは、神様が私の頑張りにご褒美をくれたに違いありません!」
「そ、そうか?俺なんかがご褒美になるとは思わないけど…」
「そんなことないです!シロ様に会うことできた私なら、三日三晩寝ずに働けます!」
「そこはしっかりと寝ような!?」
(俺にそんな力はないから!)
「あ!そういえば、シロ様は今、何をされてるんですか!?」
「あぁ、恥ずかしい話だが、自分の部屋がわからなくなってな。涼宮さんに案内をお願いしてたところだ」
「なるほどです!それなら私が案内しますよ!」
「えっ!ホントか!?」
「はい!私、シロ様のことたくさん知りたいので…」
「ちょっと待って!」
いきなり、涼宮さんがミレーユさんの声を遮るように割り込んでくる。
「ど、どうした!?」
「その役目は私が引き受けたの!だからミレーユさんは自分の部屋に戻っていいよ!」
「あれ?シロ様は涼宮さんが引き受けたとかは言ってないようなので、まだ引き受けてないものかと……」
「引き受けてはなかったけど、私の方が先にお願いされたの!」
「あ、ならさっき私が引き受けたので、涼宮さんは部屋に帰っていいですよ?」
「そういうわけにはいかないよ!だって私の方が先にお願いされたから!」
なぜか、二人が睨み合う。
「あのぉ、俺はどっちでもいいから、はやく案内してほしい……」
「ちょっと待って!」
「ちょっと待っててください!」
「…………はい」
(はやく部屋に戻りたいんだけどぉぉぉ!!!)
俺はそう二人に向けて叫びたかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます