第9話 どこのイケメンだよ!
前回のあらすじっ!
周りから感動されました。やめてください。俺はそんな人間ではありません。以上っ!
涼宮さんとミレーユさんから絶賛され、俺が愛想笑いをしていると、司会者が話を元に戻す。
「えー、シロ様には後ほど、質問コーナーがありますので、そちらでシロ様のことをたくさん聞きたいと思います!では、ゲストの紹介も済みましたので、さっそくゲストたちに話を振っていこうと思います!」
そう言って、司会者は俺を除くゲスト4人に話を振る。
それぞれゲストは、事前に話す内容を決めていたようで、わかりやすくて面白いトークが聞けた。
ミレーユさんは、生まれも育ちも日本ということを、涼宮さんはアイドルグループのことを話していた。
そして…
「では最後に、シロ様への質問コーナーへと移ります!」
(今までは、みんなの話を聞くだけだったが、ここからは俺がどんどん質問に答えていくんだ。変な解答にならないよう、気をつけないと!)
「シロ様への質問内容は、あらかじめスタッフや街頭にて募集しました!そちらをいくつか質問したいと思います!」
「よろしくお願いします!」
「ではさっそくですが、簡単な自己紹介をお願いします」
「はい!芸名はシロ、高校2年生です。趣味がないので、何か面白い趣味を教えていただけると嬉しいです!よろしくお願いします!」
「へー!趣味がないんですね!」
「そうなんです。休日に家から出るのは稀なくらいなんですよ。なので、アウトドア系の趣味を教えていただきたいですね!」
「皆さん聞きましたかー!シロ様とデートしたい方は、アウトドア系の趣味を口実にすると、断らないようですよー!」
司会者の発言にスタジオは笑いに包まれる。
(俺をデートに誘う人なんかいないと思うけどなぁ)
俺はそんなことを思いながら、笑いに包まれる会場の雰囲気を味わっていたため…
「「アウトドア系の趣味を探さないと!」」
涼宮さんとミレーユさんの発言は、俺の耳に届かなかった。
スタジオの笑いが落ち着いたところを見計らって、司会者が俺への質問を再開する。
「では次の質問に参ります。ズバリ!どのような女性がタイプですか!?」
「えっ!そ、そうですね……優しくて笑顔が素敵で、何事にも一所懸命に取り組む女性がタイプですね」
「ほうほう!ちなみに、シロ様は現在、付き合っている女性はいますか?」
「いやいや!いませんよ!それに、今まで誰かとお付き合いしたこともないです!」
俺の返答にスタジオにいる全員が驚く。
「えっ!1度もないんですか!?」
「そ、そうですね」
「て、てっきりシロ様なら何人もの女性の方と、お付き合いしているものかと思ってました」
「いやいや!俺は、たくさんの女性を取っ替え引っ替えする人にはなれないですよ!」
(俺の顔じゃ無理だろうなぁ。そんな男になれるならなってみたいけど)
俺は心の中で先程の返答に付け加えをしていると…
「な、なるほど!シロ様なら、たくさんの女性と付き合ってそうでしたが、たくさんの女性を取っ替え引っ替えするような最低な男になりたくないから、今まで誰かとお付き合いしたことがなかったんですね!」
(違うわ!俺は『この顔だから女の子を取っ替え引っ替えすることすらできない』って言ったの!)
「と、いうことは、シロ様は『好きではないけど、試しに付き合ってみる』という最低な選択をする男にならないために、本気で好きになった女性とだけ、付き合うと決めてるってことですね!さすがシロ様です!」
司会者の発言にスタジオが感嘆する。
(だから違うんだけど!なんで『イケメンだから簡単に取っ替え引っ替えできるけど、そんなゲスな男になりたくないから、俺は本気で好きになった女性としか付き合わない!』って捉えてんの!?どこのイケメンだよ!)
未だにスタジオの人たちは、俺を褒め称えている。
(マズイ!俺への評価が爆上がりしている!ホントはそんな男じゃないのに!女の子を取っ替え引っ替えできるならしてみたいって思ってる男なのに!)
俺は、この空気をどうにかしようと思考を巡らせるが…
「さすがシロくん!私はシロくんが節操のない男じゃないって信じてたよ!」
「さすがシロ様です!男性全員に見習ってほしいくらいです!」
俺の両隣にいた涼宮さんとミレーユさんが、キラキラした目で言ってくるので…
「あ、あははは………」
俺はまたしても、愛想笑いしかできなかった。
結局、俺への評価が爆上がりするだけの収録となった。
(おい!俺、みんなから最高の人格を備えた人に与えられる『聖人』みたいな扱いで収録が終わったんだけど!いや、誰からも『聖人』とかは言われてないけど!)
先程、収録が終わった際に、司会者から…
「俺、高校2年生の男の子から人間性を学ぶことになるとは思わなかったよ。また、一緒に収録をしよう!」
そう言われた。
(待って!俺、芸能界の大御所からそんなこと言われる男じゃないから!モテモテになりたいとか、そんな邪な欲まみれだから!)
俺がそんなことを思っていると…
「シロくんお疲れー!どうだった!?初収録は!?」
「お疲れ様です!シロ様!初収録とのことでしたが、どうでしたか!?」
涼宮さんとミレーユさんが話しかけてきた。
「あぁ、お疲れ!ただただ疲れるだけだったよ」
(心がな!)
「ふふっ!最初はそうだと思うよ!私も初めての収録は緊張して全然上手く話せずに終わったから」
「私も初めての収録は緊張しました!私の良さを知ってもらおうとしたのですが、空回りばかりしてしまって……」
「わかる!私もそうだったの!でも、シロくんはとても良かったよ!」
「はい!シロ様の良さや魅力が伝わるいい収録でした!」
「あ、あぁ。ありがとう」
(やべぇ、全く嬉しくねぇ!)
俺がそんなことを思っていると…
「そうだ!シロくん!連絡先を交換しようよ!」
「シロ様!私も交換してもいいですか!?」
連絡先の交換をお願いしてくる。
「あ、あぁ。いいけど……俺の連絡先なんかいる?」
「も、もちろんだよ!この業界だと連絡先の交換が当たり前なんだよ!ね!ミレーユさん!」
「そ、そうです!当たり前なんです!私がシロ様の連絡先が欲しかったからお願いしたとかではないです!」
どうやらこの業界だと当たり前らしい。
(まぁ、俺の連絡先なんか交換しても、連絡を取り合うことなんかないだろう)
俺はそう思い、2人と連絡先を交換する。
その時、2人の嬉しそうな表情を俺は見逃していた。
『おしゃべり7』の収録が終わり、家に帰るために、神野さんの車に乗り込む。
帰宅途中、スマホを確認すると…
「涼宮香織:今日はお疲れ様!これからもよろしくね!」
「ミレーユ:今日はお疲れ様でした!初収録で疲れたかと思いますので、ゆっくり休んでください!」
2人からメッセージが届いていた。
それぞれに返事をしている間に家へと帰り着く。
結局、土日に仕事は入らなかったため、土日は一日中、家でゆっくり過ごした。
そして、収録日の翌週、俺が今回収録した『おしゃべり7』が全国放送された。
その日、SNSのトレンド上位に、シロ様関連のワードがたくさんランキングし、より一層世の女性たちを虜にしたことに、俺は気づかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます