第2話 外を歩いてこないと、家に入れないからね!

前回のあらすじっ!

 訳もわからず、家を追い出されました。以上っ!




(えっ!俺、なんで外にいるの!?)


 そう思って理由を聞こうとするが…


「くそっ!あいつら鍵をかけやがった!」


 家に入れなかったため、家の玄関に居座る。


(俺にコスプレした格好で歩けるほどの精神力はない!)


 すると、俺のスマホが鳴る。


『おい!どういうことだよ!桜!』


『お兄ちゃん!なんでまだ玄関にいるの!?はやく外を歩いてきて!』


『嫌なんだけど!なぜ、俺がコスプレした格好で外を歩くことになるんだよ!』


『今日はハロウィンだから問題ないよ!』


『そんなこと心配してねぇよ!俺がなぜ外に……』


『外を歩いてこないと、家に入れないからね!』


 そこで電話を切られる。


(えぇ……。そこまでして俺に外を出歩いてほしいのかよ……)


「はぁ、こうなったら適当に歩くかぁ」


 そんなことを思い、街中を歩く。


「ねぇ!ちょっと見てよ!あのキッド様カッコよくない!?」


「ホントね!写真撮ってもいいか聞いてみたいけど、カッコ良すぎて、声をかけにくい!」


「だよねぇ…今のうちに遠くから見て脳裏に焼き付けておこう!」


 先程から俺のことを遠くから見てる女性の方がチラホラいる。


(遠くから俺のことを笑ってるのかなぁ。そうだったら泣ける……)


 そんなことを思いながら歩いていると…


「あの!すみません!少しだけお時間よろしいでしょうか!?」


 1人の女性の方から声をかけられる。


「はい、なんでしょうか?」


「私、芸能プロダクション『ヤマザクラ』で働いております『神野麗華かみのれいか』と申します!」


 そう言って名刺を渡される。


 20代後半くらいの綺麗な女性で、黒髪をポニーテールにしている。ポニーテールが腰くらいまであるので、かなり髪が長くいと思われる。胸もスーツを着ててもわかるくらい大きい。


「はぁ、芸能プロダクションの方が俺に、どのような用件でしょうか?」


「はい!単刀直入に言います!私を助けてください!」


「いきなり何があったんですか!?」


(名刺を渡され、助けを懇願される……。うん、わけがわからん!)


「今、コスプレされた方を中心に『読モ』を作成してるのですが、モデルさんが急遽来られなくなったので、代役を探しまわってたんです!幸い、今日はハロウィンだったので、街でコスプレしている方から代役を探すことになりまして」


「なるほど。つまり『俺に代役をしてほしい』というお願いですか?」


「はい!是非、お願いします!」


 神野さんは俺に頭を下げる。


「あのぉ……大変申し訳ないのですが、断らせていただきます」


「な、なぜですか!?」


 顔を上げて驚いた表情をする神野さん。


「お、俺なんかよりもカッコよくコスプレしてる方が周りに沢山いますので……」


「えっ!私はあなた以上にコスプレの似合う男性に出会ったことなんかないですよ!?」


「そ、そこまで言わなくても……。お世辞ありがとうございます」


「いや、本心なのですが……」


 呆れたような表情で言う神野さん。


「と、とりあえず、俺は『読モ』に載っても需要がないため、断ろうと……」


「待ってください!君のような逸材を逃すわけには……あ!私の話を引き受けていただけるなら、なんでもします!それこそ、エッチなお願いも多少なら大丈夫です!」


「体を張ってまでお願いしないでください!」


「それくらい君には了承していただきたいということです!お願いします!」


 再度頭を下げる神野さん。


(こんな目つきヤバくてヤンキーみたいな俺に体を張ってまでお願いするってことは、かなり困ってるんだろうなぁ……)


 ここまでされると断りにくいため…


「はぁ、わかりました。俺でよければ使ってください。本気で困ってらっしゃるようなので……」


「ありがとうございます!」


「ただし!掲載するのは1枚だけです!あと、俺のせいで売れなくなっても俺のせいにしないでください!」


「そんな未来は見えませんが……わかりました!撮影場所はコチラになりますので、ついて来てください!」


 俺はその返答に満足し、神野さんの後についていった。




 歩きながら俺は神野さんに、簡単な自己紹介をする。


「日向真白さんですね!今日はよろしくお願いします!」


「はい!お願いします!」


 その後も雑談をしていると、一つの建物に到着する。


「着きました!さぁ、入りましょう!」


 俺は神野さんに連れられて一つの建物に入る。


「ここは『読モ』や、その他雑誌の撮影を行う専用の場所となっております」


 そう言われて辺りを見渡す。


 たしかに、俺にはわからないが、撮影に使うであろう道具がチラホラと見える。


 その時、1人の女の子が目に入る。


「神野さん、あの女の子は、もしかして…」


「彼女は『涼宮香織すずみやかおり』さんですね。『スノーエンジェル』という5人組アイドルグループのリーダーで、センターを務めてる女の子です」


「ですよね!」


 涼宮香織。水色のツインテールで腰くらいまで長さがあり、髪色と同じ、クリっとした大きな水色の目が特徴的。美人というより可愛い系の美少女で、胸がとても大きく、最近、テレビでよく見かける。


「私たちが作る『読モ』の撮影が終わり次第、涼宮さんの写真集を撮影する予定ですので、この建物にいらっしゃるのかと思います」


 俺たちが涼宮さんを見ていたため、彼女がコチラに気づく。


「お疲れ様です!コスプレされてますけど、撮影があるのですか?」


 俺たちに気づいた涼宮さんは挨拶をしてくる。


「お疲れ様です!彼は『読モ』の撮影に参りました!」


 神野さんの言葉に納得する涼宮さん。


 そして、俺と目を合わせると、顔を赤くしながら…


「そ、その……と、とても似合ってます!」


「あ、ありがとうございます」


 俺にお世辞を言ってくれる。


(やっぱりアイドルってお世辞がうまいなぁ。流れるように褒めてくれたぞ)


 俺が涼宮さんに感心していると、涼宮さんが神野さんにある提案をしていた。


「えーっと…これから撮影だとは思うのですが、その撮影に私が見学してもよろしいでしょうか?」


「そうですね。問題ないと思います!」


(えっ!俺の撮影に今人気のアイドルがついてくるの!?)


 俺が驚いていると…


「ど、どうですか?わ、私も見学したいなぁ…って思ったのですが……」


 涼宮さんが俺に『断られるかも』と不安そうに聞いてくる。


 俺には涼宮さんを断ることなどできないので…


「あ、あぁ全然問題ないですよ」


 それを聞いた涼宮さんは、不安そうな顔から一転、パーっと笑顔になり…


「ホントですか!?ありがとうございます!」


 俺に感謝を伝える。


 俺はその笑顔に見惚れてしまい、うまく返答することができなかった。

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