第14話 

 2人でスーパーに入った。

 俺がカートにカゴを乗せて歩く。


「イツキ君はどんな料理が好き?」

「これって言うのは……ない。でも……肉や魚とご飯かパン、とんかつ定食とか焼き魚定食、ピザとかチャーシュー麺とかそういうのが好きだ」


「味がはっきりしていてタンパク質と炭水化物、みたいなのかな?お寿司は?」

「好きだ」

「生姜焼き定食・てんぷら定食・肉じゃが・唐揚げ定食・ハンバーグ定食・ベーコンパスタ・メンチカツサンド・ホットドック」

「全部好きだ」


「嫌いなものはあるかな?」

「あまりないな」

「嫌いじゃなくても苦手なものはあるかな?」

「……虫、芋虫を出されたらいやだな」


 その瞬間にサヤが顔を押さえて笑い出した。


「ふふ、そ、そっか。全部大丈夫なんだね。あ、レバニラとかなすはどうかな?」

「大丈夫だ」


「何となく分かったよ。イツキ君は筋肉質だから、いっぱい食べないとすぐお腹が空いちゃいそう」


 そう言って俺の胸や腹筋を触る。


「本当に夫婦みたいだ」


 周りを見るとカップルが女性の尻を触って楽しそうに話をしている。


「ねえ、お尻、触ってもいいよ」

「からかうな」

「ふふ、羨ましそうに見えたから」

「後でな」


「後でなら触るんだ」

「か、買い物にしよう」

「うん、そだね」


 俺も、カップルと変わらないように見えているのかもしれない。

 会話が心地いい。

 たまにからかって来るけど気を使ってくれるし、本当に嫌がる事はしてこないししつこくしない。


「サヤは何が好きなんだ?サヤの好きな物も買おう」

「何も、食べる事はそんなに興味ないかな。栄養として食べてる」

「そっかー」


「何々?何を考えたの?」

「いや、肉食系かなーと思ってたから」

「そっか、私が肉食なのはイツキ君にだけだよ」


「……」

「……」


「すいません。通りたいのでどいてください」


「「すいません!」」


「買い物を終わらせよう」

「そ、そうだね」


 俺達はたくさん買って店を出た。


「俺が持つよ」

「ありがとう」


 抵抗されるかと思ったが、サヤは素直にレジ袋をを渡した。

 その量をサヤが持つのは無理がある。


「イツキ君、鍋って好きかな?」

「好きだ」

「うん、帰ろっか」


 サヤが笑った。




 ファンタジーコーポに帰るとサヤが言った。


「3階まで運んでくれるかな?」

「良いぞ」


 いつもなら自分で持つとか言いそうだが、今日はやけに頼ってくれる。


「そこの冷蔵庫の隣に置いて」

「おう」


「イツキ君、これからお肉とお魚がたっぷり入ったチゲ鍋を作るんだ。食べて欲しいなあ。1人分作るのも2人分作るのもそんなに変わらないし、1度にたくさん作った方が美味しいよ。それに、一人でいるのはさみしいなあ」


「サヤの部屋で、か?」

「前も入ったよね」


 サヤがおんぶされるように抱きついた。

 そして後ろから囁く。


「ここで、たくさんたくさんキスをしたよね?一緒に食事を摂るより恥ずかしいことしてるよ?今日一緒に食事を食べるのがそんなに恥ずかしい?」

「分かった」


 俺は雰囲気に飲まれて思わずはいと言ってしまった。

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