第11話 

 1日寝たら元気になった。

 そして学校に登校し、昼になると放送部のフリートークが始まる。

 病み上がりなのにお構い無しか。


【放送室】


「あーん」

「それ誰のプロデュース?」


「はい、お弁当あーん」

「だから誰の差し金?」


「あーんは?」

「もぐもぐ、おいしい」


 俺は新妻の作った弁当を食べつつフリートークを続けた。


「口に物を入れながら話すのはマナー違反にならないか?」

「大丈夫だよ。駄目なら先生に怒られるだけだから」

「怒られるのかよ!」

「でも、お昼休みにご飯を食べて怒られたらそれはそれで問題だよね?」

「ま、そうか」


「所で新妻」

「なに?」

「フリートークはもう終わりだ。俺も飯を食いたい。普通にな」

「そうだね。それでは、これでフリートークは終了です」


 俺と新妻は2人で放送のスイッチを切った。

 2人でチェックし、ミスを無くすことにしたのだ。


「飲み物、もっとあるよ」

「助かる」


 2人で食事をしながら話をする。


「放送室が食堂に移動になるみたいだよ」

「食堂に作られてたガラス張りのおしゃれプレハブみたいなやつは放送ルームだったのか」

「そうみたい。だから、今日でこの密室はお終いだね」

「そうなるのか。ここは隠れ家みたいで悪くなかったな」

「私もそう思うよ」





 俺と新妻は食事を終わらせた。


「誰もいないね」

「そうだな」

「密室だね」

「そうだな?」


「キス、しよっか」

「ええ!またからかうのか!」

「本気だよ」


 新妻は冗談なのか本気なのか分からないような言い方で言った。


 驚きはしたがそう来ると思っていた。

 だが俺は対策してある。

 段々慣れてきたのだ。

 新妻の悪ふざけ対策を行う。


「キスか、ふふん!出来るものならして貰おうじゃないか」


 そう、これが俺の対策だ。

 男から本気で迫られたら怖いだろう。

 これで新妻も懲りるはずだ。


「そっか、よかった」


 椅子に座る俺に新妻が抱き着くように乗った。


「え!?」


 両腕で俺の頭をホールドし口を近づける。

 冗談にしては俺に張り付くように密着している。

 吐息が荒い。

 キス以前に俺に乗っている新妻の感触が伝わってこっちの方が興奮する!?


 新妻の唇が近づいてくる。


 そして、新妻の唇が俺の唇と重なった。


「あふん、んあ、はあ、んんん、れろ」


 新妻の舌が俺の口に侵入し、俺は身動きが取れなくなった。

 密着とキスのコンボで俺は完全に拒否できなくなっていた。

 気持ちいい。




 足音が聞こえる。

 ここには放送委員以外誰も訪れる事が無い様な場所だ。

 俺は密室でいけないことをしているような感覚になり、すぐに新妻を引きはがした。

 まるで自分が犯罪者になったような焦りが俺を支配したのだ。


「誰か来る!」

「!!」


 足音が止まり、向かいの部屋に入る音が聞こえる。


「びっくりしたね」

「色々、びっくりした」

「教室にもどろっか」

「そうだな」


 俺達は教室に戻った。

 教室に戻るまで、少し居心地が悪かった。


 教室に入ると新妻はつるっとした顔をしていた。

 俺だけ顔が熱い。


 俺は教室のみんなにからかわれて、さらに顔が熱くなった。


 俺は、新妻とのキスを思い出していた。

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