第3話 無双


 気がつけば、俺たち二人は魔王城についていた。

 他の幹部連中とかもいたけど、毒のゲロを使い、ワンパンで倒してしまったから。


 その他にも、技を1つ身に着けた。

 火炎草というものをとある村で買い、それを食べたことで俺は『しゃくねつのゲロ』という技を会得。



 頭に巨大な二本の角。紫色の屈強な肉体。身長は3メートルほど。

 髑髏のマントを羽織って、玉座の前で偉そうに座っているのが、魔王らしい。

 魔王が、俺とアンジーを見て咆哮をあげる。


「グルアアア! 貴様が勇者か!」

「いや、違うよ」

 一応否定しておく。

 だが、天然で正義感の強いアンジーがすぐに叫ぶ。

「このロクロウ様こそ、あなたを倒す勇者様よ!」

「ほほう。とうとう、我に仇名すバカな人間が来たか」

 勝手に話を進められた。


 

「勇者ロクロウ。貴様、今まで数々のモンスターを倒し、我の最強四天王まで打ち破ったそうだな。……認めてやろう。貴様の力を。どうだ、我の配下にならないか? さすれば、お前の望みはなんでも叶えてやるぞ?」

 以外な展開に俺は、ちょっと驚いた。

「え、マジで?」

「ああ、1つだけならな」

 俺は即座に答えた。

「それなら身体をくれ! くれたら配下になってやってもいいぞ」

 身体さえあれば、アンジーとムフフできるし、他にもハーレム城を作れるからな。


「ほほう、そういうことか……。ならば、我が城に“魔法の鎧”という秘宝がある。貴様の首に、それをくっつけたら、自由に動けるだろうなぁ」

「なんだってぇ!? マジ? 欲しい! やるよ、魔王軍!」

 俺と魔王で商談が成立しようとしていたが、アンジーが横から入ってくる。


「なりません、ロクロウ様! こんな邪悪な者の言葉に耳を貸しては!」

「いや、でも……身体が」

 言いかけた瞬間。

 何を思ったのか、アンジーは腰にかけていたバッグから、馬糞を取り出した。


「ロクロウ様、これを口にしてください!」

 アンジーは異臭を放つ馬の糞を、俺の口に放り込み、頭を上下左右にブンブンと振り回す。

「ぐぉぉぉ……」

 口の中に広がる糞の悪臭と、視界が揺れに揺れて、最悪の状態だ。


「うおおぇぇぇぇぇ!!!」


 今までに見たこともないぐらいの大量のゲロを口から吐き出す。

 しゃくねつのゲロが魔王を襲う。


「ぐあああ!」


 最強で極悪な魔王でさえ、俺のゲロの前では一撃だった。



「やりましたわ! これで世界は平和になりましたわ、ロクロウ様! お慕い申しております!」

 そう言ってアンジーは、ふくよかな胸の谷間に、俺の顔を埋める。


 当の俺と言えば、放心状態。

 せっかく身体を手に入れるチャンスだったのに。


  ※


 魔王が座っていた玉座の後ろに、小さな隠し扉を見つけた。

 アンジーに開いてもらい、二人して部屋の中に入ると、そこには膨大な宝石や金が山のように並べられていた。


 隠し財産ってやつか。

 その部屋の中央に、何やら煌びやかな鎧が一体、飾られていた。


「あ、これか。魔王が言っていた。魔法の鎧って!」


 俺は早速アンジーに首を鎧にくっつけてもらう。

 すると、あら不思議。

 鎧が自分の肉体のように、自然と動かせる。


「おお! これで自分で動けるな!」

「本当ですわね! ロクロウ様と一緒に手を繋げますわ!」


 抱きしめ合って、喜びを分かち合う俺とアンジー。


 彼女の豊満なバストがプニプニと心地よい。

 しかし、ここであることに気がつく。

 あくまでも鎧だ。

 股間に“そういう装備”は備えられていない。


「クソがっ!」

 確かに、自由に動けるし、これで無双できるし、アンジーとも一緒に暮らせる。

 だけど、なにもエチエチな展開がないじゃないか!


「どうされましたの? ロクロウ様?」

 天然なアンジーには、俺の目論みに気づいていない。



 部屋を出ようとした瞬間、一人の少女が現れた。


 小さな角を2つ頭から生やしたロリッ娘。

 褐色の肌に、ツルペタのまな板の魔人。

 どうやら、魔王の忘れ形見のようだ。


「あ、あの……私も連れて行ってくれない?」

 

 父親である魔王も、部下の魔王軍も全滅させたしな。

 身寄りがないのだろう。


 よく見れば、顔もカワイイ。


「いいけど、俺はお前の仇だぞ?」

「私もオヤジ嫌いだったから別にいい……」

「そっか。なら着いてこい」

「いいの?」

 アンジーが俺の答えに激怒する。


「なりません、ロクロウ様! 相手は魔王の娘ですよ?」

「しかしだな。もう魔王軍はこいつ以外いないんだ。敵意もないようだし、一人ぼっちは可哀そうだろ?」

「ロクロウ様はお優しいですわね……。ロクロウ様が言う事でしたら、仕方ありませんわ」

 渋々、アンジーは話を吞んでくれた。



 城を出る際、魔王の娘こと、チビルが恥ずかしそうにこちらをチラチラと見て、こう言った。

「あのさ、ロクロウって股間が欲しいの?」

「うん……まあな」

「それなら西の国に幻のアーティファクト、“魔法の股間”っていうのがあるって聞いたよ。それを鎧にくっつけたら、その……おしっことか、色々使えるらしいよ」

 どうやら、チビルも俺に気があるようだ。


「マジか! 大マジなのか!?」

 俺は小さなチビルの身体を激しく揺らす。

「ほ、本当だよ……オヤジが話してたから」

 頬を赤くして、照れている。

 話し方からして、彼女はウソをついていない。

 噂でも信じる価値はある。


 俺は決心した。

「アンジー、王国への凱旋はまだだ!」

「ほえ?」

 天然なアンジーは分かっていない。

「俺たちは今から、魔法の股間を手に入れるため、西の国へと出陣だ!」

「ほえぇ?」

 チビルも俺に協力的だ。

「ロクロウのためなら、私も頑張る!」


 身体を手に入れた俺は、魔王城で手に入れた大剣『ダークキャリバー』を担ぎ、最強勇者となった。

 もちろん、ゲロスキルが今の所、最強スキルだが。

 天然なアンジーは、回復魔法を使うヒーラー。

 チビルは魔族の腕力を活かした、斧をぶん回すロリッ娘戦士。


 こうして、俺たち三人の股間を探す度は、始まったのであった。

 のちに最強の勇者たちとして、語られる三人。

 『伝説の股間パーティ』の誕生であった。


  了

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生首無双~異世界転生に失敗したら、多分こうなる~ 味噌村 幸太郎 @misomura-koutarou

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