第13話 無闇に歴史を改変するのはダメ
今日は気分を変えてファミレスで落ち合うことになった。
お互いに違うものを頼んだけど、半分こで食べさせっこするとかないかな?
世間的には不衛生だからアウトみたいだな、世論は怖いからね、残念。
「それで、何かあったの?相談事かしら?」
「いや、違うよ。徳川埋蔵金をゲットしたよーって教えたくてさ」
「とくがわまいぞうきん?えーと、埋蔵金のことかしら?なにそれ?」
「ほら、徳川幕府の隠した莫大な財宝のことさ。トレジャーハントしてくるって言っただろ?」
七海は何のことだか解らないみたいだ。いやいや、俺言ったじゃん。ちゃんと事前に相談もしたのに。
七海の変な対応に不思議な感覚を覚えたが、今回はしっかりと、一から順を追って説明した。
途中、何度かスゴい顔つきで睨んできたが、口を挟まずに最後まで聞いてから七海は深いため息を吐いた。
「あのね、ヤスくん」
「はい。なんでしょう」
「時を超えて過去に行ったのね?」
「うん。そのとーりだよ。途中で赤城山まで行って騙されたのはいい思い出になったね」
「それはどうでもいいの。ちょっと聞いて?」
結論から言うと、めっちゃ怒られた。過去を改変してしまってたらしく、徳川埋蔵金なんてものは無いらしい。そもそも資金がいきなり底をついた幕府は、早々にボロボロになり、大政奉還もくそもなかったらしい。
歴史よくわからんのよ。
「下手したら産まれてくる予定だった人が消えてたり、知らない誰かが増えてたりするかもしれないんだよ!?」
「んなおおげさな・・・」
「え、ヤスくん!ヤスくんの左手!き、消えかかってない?」
「え、あ!マジでか!?」
慌てて過去に戻って返してこいと言われて、外に出てすぐに時空間転移する。
過去に戻ってきたけど、なんか左手さっきよりも薄くなってるんですけど!
スキル気配遮断と幻影魔法を掛けてから、江戸城の倉庫の中らしきとこまで転移する。
よし、誰もいないな。
鍵がかかってないのを確認してから、アイテムボックスから全てのアイテムを取り出して置いていく。スピード勝負だ。
「くそっ!時間魔法『
ハイスピードになって、周りの景色がゆっくりになる魔法だ。
某サイボーグ戦士みたいなもんと思えばいい。
元あったとおりに配置していき、扉を閉めて南京錠らしきものをカチッと嵌めて終了!
すかさず人気の無いとこに転移。
「左手は・・・も、戻った。マジで焦った~。こんなSFみたいなことあるんだな。異世界以上に驚いたわ」
時空間転移を唱えて、元の時代に戻り七海に連絡しよう。
帰ってきた俺は、すぐに七海に電話する。
何気に初電話なんだけど。出なかったらどうしよう・・・
プルルルと暫くなると、七海が電話にでた。
「はい、もしもし?ヤスくんどうしたの?」
「七海!大丈夫か?俺はなんとか大丈夫だったけど、そっちは何か変わりはないか?」
「?変わりって何もないよ。何かあったの?」
「いや、歴史を変えた影響で俺の左手消えかかってたじゃん!七海が教えてくれたから助かったんじゃん!」
「・・・ちょっとお話したいことがあるんだけど。すぐに会いに来て?」
なんか七海の声のトーンが、最後らへん低かった気がする。
まぁ電話よりも、直接会って無事を確かめたい。
ソッコーでスキル索敵で見つけて、側まで転移した。
「七海、お待たせ!」
「きゃ!て、ヤスくん?ここ大学の構内だよ!?ちょっとこっち来て!」
有無を言わさずに七海に手を引っ張れていった。周りを見ればたくさんの学生らしき人と、教壇っぽいところに教授らしき人までいた。
七海は「すみません、すみません!ちょっと失礼します!」と教授らしき人に言いながら、俺と一緒に中庭のベンチらしきところまできた。
ちなみに、こんなに直ぐに来るとは思わなかったらしい。「あとでなんて説明しよう・・・」って言ってた。大変だねと返すと、プリプリしてた。
「さて、ヤスくん。話を聞かせてちょうだい。勿論、一から順に全部よ?」
「ん?あぁ。まずは徳川埋蔵金のことは覚えているか?」
「えぇ、ヤスくんに相談されたわね」
「そのあとなんだけど・・・」
そのあとの出来事を話した。
聞くも涙、語るも涙の物語だ。
赤城山で財宝無くてスカッたとこから、機転を利かせ過去に戻って城に直接取りに行ったこと。
帰ってきたら徳川埋蔵金の話すら無くて、歴史が改変されてたこと。
七海と話してる最中に、俺の左手が徐々に消えてきたから、慌てて過去に返しに行ったこと。
いや、バックトゥザ大冒険だったぜ!
「ヤスくん、正座」
「え?なんで?今回は常識に則って更には機転を利かした大立ち回りまでしたのに?」
「い、い、か、ら、正座っ!」
「は、はいぃぃぃ」
また一時間ほど怒られた。
もう今日は講義どころではないらしい。俺のせいなので反省。
何がダメだったのかを懇願と説明された。
江戸城に直接取りに行くのは、ただの泥棒だと言われた。
衝撃を受けた。言われるまで気付かなかった!
これが遺跡のトラップなのだとしたら、勇者殺しもいいところだ!
「反省してなさそうね」
「いえ、そんなことないっす、はい」
うん、泥棒ダメ、絶対。
結局、トレジャーハンター無双も失敗に終わってしまった。
「もう!ちゃんと反省してよね?けどヤスくんが無事でホントに良かったよ。次からは危ないことはあまりしないでね?」
七海は今日も優しい。
余談だが、当時の徳川幕府関連の資料に、『振らば焔が生じる、両刃の剣也』という宝剣の記載があったらしい。
それも徳川埋蔵金と一緒に隠されてるとかなんとか。テレビで言ってたよ。
アイテムボックスに似たようなのがあったような・・・まぁいっか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます