第12話 閃きの向こう側



ゴールデンウィークも終わり、七海も学校生活に戻っていった。

ちなみに例の生徒募集プランは、七海の猛反対により立ち消えになってしまった。

七海が言うには、「まだ人類には早すぎる」らしい。

絶対そのセリフ言いたかっただけだろ。




「仕方ない次のプランでも考えるかぁ。なんか面倒になってきたなぁ」



あれから通販の売上はぼちぼち程度。月給にして18万円ぐらい。

そのうち親の扶養から外れる事を考えると、実に心許ない数字だ。



通販の発送の手間も面倒に感じてきたし、もういっそ親父に頼んで金のインゴットでも売ってきてもらおうかな?

そんなことを考えていた時、ふと七海が言ってた言葉を思い出した。



「何かをやる前に、必ず私に相談してね?絶対だよ?」



そうだった。ある意味ではマネジメントの成功だと考えよう。

そうだよ、俺が七海にマネジメントされる側なら問題なしじゃん!


思い立ったが吉日。

けれど、自分から何も考えずに、何でもかんでも聞くだけってのは無能だと思う。

自分の意見があって、「あなたならどう思いますか?」てのが理想だ。




例の如く、スマホをポチポチと弄りながら新しい無双プランを探すのであった。

だが、中々にいいものが見つからなかった。



その夜、家族でテレビを見ながらご飯を食べている時に、母さんがテレビを見ながらこう言った。



「徳川埋蔵金っていくらあるのかしら?ロマンよね~」


「君のためなら俺が徳川埋蔵金を発掘してきてやるさ」


「あら、あなた。会社はどうするの?」


「きゅ、急に現実に戻るのかい?」


「あら、女はリアリストなのよ?」



両親のアホな会話を聞きながら、「これだ!」と閃く。

そうだよ、男の浪漫だよ。じゃなかった、トレジャーハンターだよ。



早速、部屋に戻るとお決まりのスマホをポチポチタイムだ。

やはり闇雲に検索するよりも、目的があって検索するほうが正しいよな。

そうして夜遅くまでスマホを弄った。




翌日、七海に連絡を取って会うことになった。

前に来たカフェで待ってると、七海がやってきた。



「お待たせ。じゃあ中に入ろっか」


「あ、うん。入ろっか・・・」



全然待ってないよ、今来たとこだよってセリフを言わせてもらえなかった。

少しばかりしょんぼりしながら店に入って、お互いにドリンクを頼んだ。



「ところで、相談ってなに?何か考えついたの?」


「あぁ、今度は遺跡や遺物なんかのトレジャーハンターでもやろっかなって思ってさ。これなら迷惑になることもないかなって」


「そうなんだ。何か狙ってるものとかあるの?」



昨日テレビで見た、徳川埋蔵金について説明した。あれから色々と調べたからバッチリだ。

七海は少し考え込むと、結構現実的なことをツッコんできた。



「それって、発見者のものになるの?発見場所の土地の権利を持ってる人のものになるとかない?あと、許可とか取らないといけないだろうし。その辺、ちゃんと調べてるの?」


「フッフッフ、抜かりはないさ。仕掛けはごろうじろってね」


「フフ、なにそれ」


「ちゃんと考えてるってことさ。俺だって法律やらしがらみやら気にしてるってことさ」




真っ当な手段だから、七海もそれ以上は特に何も言わなかった。

ただ、「機材も準備も人手も何もいらないんだろーけどね、チートね」と言っていたぐらいだ。



確かに必要な物はアイテムボックスに入ってるし、準備は万端。人手も俺一人で大丈夫だから間違ってないけどね。

「私も一緒に行っていい?」て、言われたかったけど、何も言われなかったから一人で行くことにした。



七海の近況なんかを聞きながら、いい時間になったので解散した。



翌日、徳川埋蔵金をゲットする為に移動を開始する。

電車で群馬県まで移動して、赤城山麗まで走った。

ネットで調べた感じここら辺らしい。



「じゃあ始めますか。占星魔法『広域探索エリアサーチ』」



頭の中にこの辺のマップを浮かべてイメージする。大判小判とかでいいかな。

・・・あれ?何も反応がない。

イメージが悪かったのかと思い、千両箱やら刀やら茶器やらをイメージしたけど反応なし。

そこで閃いた。



「もしかして、何%の取り分じゃなくて、全取りしろって啓示か?」



知らない人の為に説明しよう。

本来なら埋蔵場所を発掘したら、文化財扱いになりそれ以上は発掘が出来なくなるのだ。

そこから教育委員会やらが発掘をしていき、発掘されても政府の物扱いとなり、手数料代金みたいな感じで数%ほど貰える。

簡単にざっくり言うとこんなもん。



考えれば、見つかってないってことは違う場所か、元々そんな話は無かったのか?それとも既に誰かが獲得しているか?て、ことになる。

ならば、それらの選択肢を追うのではなく、全ての選択肢を消せばいいのだ。

高INT値は伊達じゃない!



「場所は江戸城跡地だな。『転移』」



以前来たことがある江戸城跡地にやってきた。そこから桜田門外と思われる場所に移動。

さてと、準備は完了だ。



「時空間魔法、『時空間転移タイムワープ』!」



俺の周囲にバリバリと雷を帯びたような光が走る。

そのまま光に包まれ、光が治まるとそこにはもう俺はいないだろう。

何故なら時間を移動したからだ。



「ここが江戸時代ってやつかぁ」


「何奴!お主、どこから来おった!」



門の前にいる門番らしき人や侍さんが、俺を見て驚いていた。

「であえ、であえぇぇ!」とか叫んでるし、ここは一度隠れますか。



「さらばだ、諸君!空間魔法『幻影ミラージュ』」


「なっ!消えおった。捜せ、捜せぇ!まだこの近くにおる筈じゃ!」


「「「はっ!」」」




こうしてたくさんの門番さん達はどこかに駆けていった。

俺はもちろん、その場にまだいるけど。

そのまま開いてた門を潜り抜け、堂々と敷地内へと移動。



何故、最初から江戸城の敷地内で時間移動しなかったのか?

それは移動先に誰かいた場合、敷地内だと警備が厳しくなるからだ。門外で見つかったほうが、警備の目は向こうに向けられる。



「それでは調べますか。占星魔法『広域探索エリアサーチ』」



今度はしっかりと反応があった。スキル気配遮断を使いながら、お宝のありそうなポイントへと向かう。

倉庫のようなところに着くと、扉には大きな南京錠みたいなのがあった。



「剣でぶった斬ってもいいけど、ここはスマートに無属性魔法『解錠アンロック』」



ガコンッと外れると、扉をゆっくりと開く。部屋の中には、大小様々なサイズの箱があった。

全てをアイテムボックスに収納する。

そのまま城を脱出し、外に出て人気のなさそうな場所で現代に戻る。

現代に移動した先が建物のなかだったりしたら危険なので(主に相手側が)、ある程度の確信が持てる場所で時空間魔法を発動する。



「時空間魔法『時空間転移タイムワープ』」



現代に帰ってきた俺は、家に転移して七海に連絡した。

そして明日、七海と会うことに決まった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る