第11話 ゴールデンウィークの過ごし方



七海との訓練を開始してから1ヶ月ほど経過した。

休みの間や、授業の合間にした訓練量だけど、結果は優秀だった。

その間の出来事をダイジェストで説明しよう。



初級魔法を覚える→中級魔法を覚える→魔力量増加訓練→簡単なスキル訓練開始。

まぁ1ヶ月ならこんなところだろう。


ちなみにスキルの説明だが、スキルを使うには魔力が必要になってくる。

魔法よりかなり少ない量だが、魔力と体力の両方が消費される。

よくラノベにある、縮地とかを思い浮かべてほしい。あんな動きしたら絶対に体力も使うだろ?身体を動かしてるんだから。そんな感じで体力もスキル次第で多少消費量は変わる。

ちなみにアイテムボックスは、空間魔法の理解がないと使えないけど、これは体力消費がない類いのスキルね。



「というわけで、現在に至るわけだ」


「何の話しているの?」


「いや、ちょっとこの1ヶ月の振り返りをね」



今日はゴールデンウィーク初日ってことで、七海と亜空間部屋に来ている。訓練だけれど、デートみたいなものだ。

そう思うと元気になるから、そう思わせてほしい。



「それより、スキルはどうやって習得するの?前に魔法よりも難しいって言ってたけど、私にも出来るものなのかな?」


「魔法と違って、スキルは反復練習というか、身体が魔力と連動して覚えるまでやるから難しいってだけさ。身体強化魔法に似たイメージかな?」


「なるほど。で、今日は何のスキルを教えてくれるの?」


「じゃあまずはお手本として、一番簡単なやつからいってみようか」



スキル威圧を発動。

軽い殺意を込めた威圧感を七海に向ける。



「ぴぃゃっ!」



七海は可愛らしい悲鳴を出して、ガクガク震えてペタンと女の子座りになった。

そしてその周囲に少しばかりの水溜まりができあがっていた。

・・・ヤバい、どうしよう!



「う、うぅぅ、うわぁぁぁん!」


「あぁぁ、ごめん!ごめんよぉ!」



あれから一時間程かけてなんとか宥めました。

七海は泣きじゃくり、泣き止んだと思ったら、足元の水溜まりを見てまた泣き出したり、生活魔法の『清潔クリーン』を使って綺麗にしたあとに、アイテムボックスから女物の服と小屋を出して、代わりの服に着替えてもらった。




「ほんっと、ごめん!すみませんでしたぁぁぁ!」


「ひっく、ぐすん。どうしてあんなことしたの・・・?」


「マジですみませんでした。威圧を教えようとしたんです・・・このような事態になると思いませんでした」


「ん。わざとじゃないなら許す。けど、今度からは何を教えるか先に言ってからにしてね」



七海は落ち着きを取り戻すと、替えの服をまじまじと見ていた。

気の利く元勇者として、そっとアイテムボックスから姿見の大きい鏡を出して前に置いた。



七海は鏡を見ながら、クルンと一回転してみたり、角度を変えてたりした。

これは褒める流れに違いない。



「よく似合ってる、可愛いと思うよ」


「え、そ、そう?ありがとうヤスくん」



どうやら正解だったようだ。

俺はラノベの鈍感主人公とは違うのだよ。チーレム漫画もたくさん読んでるからな!



「ところで、なんで女物のドレスを持ってるの?しかもこれ異世界産よね?」


「あぁ、それ?ダンジョンで手に入れた魔法のドレスだよ。確か、戦乙女のドレスだったかな?高い魔法耐性と状態異常耐性、それと下手な金属よりも丈夫で、防御力も高い水準を誇るそうだよ」


「それはスゴいんだけど、ちょっとなんというか、可愛いだけど恥ずかしいというか・・・」



七海の言わんとしてることはわかる。

俺もアニメのドレスアーマーの下に着る服みたいだなーって、思ってたもん。

けれども七海によく似合ってるから、いいと思う。普段着には向かないけど。



「ダンジョン?そんなのがあるんだ。ゲームみたいだね。めっちゃコスプレ感あるから恥ずかしいけど」


「けど七海にはすっげー似合ってるし、プレゼントするからそれを着てほしい。訓練の時は普通の服は破けるかもしれないし」


「あ、そうだね。これも可愛いし汚したくないけど、いいのかな?」


「汚れないように魔法で処理されてるし、自動修復機能も付いてるから問題ないよ」


「そんなのあるんだ。異世界産ってスゴいね」




それから改めてスキルの練習を再開することになった。

威圧は七海には難しかったらしく、「ん~ん~」と唸ってたのが可愛いかった。



アレコレやって覚えたのは、気配察知と恐怖耐性だった。

二つめは俺のせいだったりする。あの威圧が効いたみたい。

七海は納得がいかない顔で、複雑そうな表情を浮かべてた。



「スキルは反復練習することで、熟練度が上がれば効果がどんどん高くなっていくからな。気配察知できる範囲が拡がって、精度が高くなる。とりあえず目標は1km圏内だな」


「そんなに広い範囲を探れるんだ。ヤスくんはどれぐらいの範囲を察知できるの?」


「本気出せば10kmぐらいかな?それでも魔法の『拡大図索敵エリアマップサーチ』なら100kmぐらいいけるよ」


「なるほど。魔法ならその分、魔力を多く使うわけね。スキルと魔法で使い分けるってことね」



今日で2つもスキルを覚えてご機嫌なのか、七海は嬉しそうな顔をして帰っていって。

送ろうとしたけど、気配察知を鍛えながら帰るそうな。

去り際に、改めてドレスのことでお礼を言われた。さすがに着替えてから帰ってた。





翌日、恒例となった亜空間での訓練で、いくつかスキルの発現に成功した。

発現したスキルは、体術、剣術、槍術、俊足、打撃耐性、斬撃耐性、拍手、礼儀作法、指笛、算術、高速思考、言語理解、意志疎通、ネゴシエーター、魔力回復増強、変装、Rain高速化、料理、歌唱、笑顔、等々・・・いや、多すぎじゃね?



「なんかコツを覚えたみたい」



そんな一言で済ませれる量じゃねーって!

俺も知らないスキルとかあるし!

なんだよ、Rain高速化って。完全にこっち関連のスキルじゃん!



七海と謎のスキルとかについて話し合った結果、日常で使っていた技術がスキル化したのではないか?という結論に至った。

ちなみにステータスも使えるようになっていた。

魔力を知覚してステータスを認識したからかな?


考えてみると、確かに異世界人より現代日本人のほうが色々と学び、覚えていくことが多い。

こちらにしかない概念や技術もあるし、ルナガイアには学校なんかはあっても義務教育はなかったからなぁ。



「もしかしたら俺も増えてるかも。ステータス・・・増えてるわー。もう増えることないと思ってた」


「一応いいことなんじゃない?増える分には悪いことはないんでしょ?」


「それはそーなんだけど、なんか複雑。Rainも遅いから高速化はないし」


「確かに返信遅いよね。あ、悪いってわけじゃないのよ?あれは人それぞれだし」




微妙なフォローをもらいながら、その日は解散となった。

なんか格好いいとこ見せたくて、帰りは送っていくことにした。

鼻からピーナッツを飛ばすスキルを披露したら、それはしないほうがいいと言われた。

ルナガイアでは鉄板だったのに。





そうしてゴールデンウィークは過ぎ去っていく。

七海も毎日とはいかないが、来れる日は訓練に励んだ。他に用事がある日は来れなかったけど。

容量が少ないながらもアイテムボックスを覚えたりして、充実した結果に終わった。





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