第9話 魔法の講習?訓練かな



「という訳なんです、はい」


「わかったわ。じゃあ、魔力ってのを教えてくれる?」




西沢からの質問に答えて、俺が元勇者ってことで、ダイジェストで時系列順に説明したが、なんとか納得してくれたようだ。

西沢が怒ると怖いってことは理解したよ。



「では、魔力について説明するよ」



魔力は地球にもルナガイアにも存在する。ただ知覚できないだけだと。スキルも同様だけど、ここでは説明を省く。



「魔力については理解したわ。それで知覚できないものをどうやって使えるようにするの?」



「それは簡単なことさ。魔力を持った相手から、魔力を受ければ感じとることができるようになる。物は試しってね。ちょっと俺の手を握ってもらえるかい?」




西沢と手を繋ぎ、ちょっとドキドキしながら女の子の手って柔らけ~とか考えながら、魔力を少しずつ流していく。

俺もルナガイアで同じことをしてもらって、できるようになった。

相手は魔術師団のオッサンだったけど。



「何かが身体に流れているのが解るか?それが魔力だ」



「この温かいのが魔力・・・?なんだか身体がぽかぽかしてきた」



「この魔力の流れを感覚で覚えるんだ。手を離してみるから、やってみようか」




手を離すと、西沢は目を閉じて集中する。身体に魔力が廻ってるのが見えた。

これで魔力が知覚できるようになったな。






そのまま簡単な初級魔法を、いくつか教えていくと覚えが良いらしく、あっさりと全属性の初級魔法を使えるようになった。

ならば次のステップに移るとしよう。



「次は身体強化魔法を覚えてみようか」



「聞いた感じだと、肉体が強化されるのよね?・・・足とか太くなったりしない?」



「大丈夫だよ。これは魔力で身体を活性化させるようなものだから」



少し練習するだけでコツを掴んだようだ。今は十メートル程ジャンプして、跳びながらこちらに手を振っている。

着地して直後にフラッと倒れそうになったので、すかさず体を抱きとめてしまう。

あ、なんかいい匂いがする。



「大丈夫か?」



「うん・・・なんか頭がぼーっとするだけだから」



「きっと魔力が枯渇する手前だな。魔力が枯渇すると、気絶するから使いすぎないように気を付けるように」




アイテムボックスからすかさず魔法薬を取り出して、西沢にゆっくりと飲ませる。

少し西沢の体がパァーと光って、顔に赤みが戻ってきた。



「今のは何?なんか元気になった気がするんだけど」



「魔力回復薬だよ。これで全快したと思うから、また練習できるはずだよ」



西沢はこれまた驚いていたが、錬金術でいくらでも作ることが出来ることを教えると、スゴい人を視るような眼で俺を凝視していた。

そのまま夕方まで魔法の練習は進み、今日の講習?いや、訓練は終わった。



「少しずつだけど魔法を使えるようになった感想はどうかな?」



「うん、かなりスゴい体験をさせてもらった気がするわ。デゼニーランドよりも魔法してた」



「そう言ってもらうと嬉しいよ。これである程度は、痴漢やストーカーなんかも撃退できるようになったと思う」



治安のいい街だけど、女性は何があるかわからないからな。

鍛えておいて損はないだろう。

ちなみにデゼニーランドは、魔法の国という設定の大型遊園地だ。

馬鹿高い料金を支払うことから、出銭ーランドとも言われているけど。



「ところで木村くん。聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」



「うん、先生に何でも質問してくれていいよ」



今日1日ずっと先生やってたせいか、すごーく気分がいい。

是非とも何でも聞いてほしい。



「最初に言ってたけど、生徒を募集して魔法を教えるつもりなの?」



「ん?そうだけど。何か問題でもあった?」



西沢は大きくため息を吐くと、俺の頬っぺたを左右から引っ張りながら「問題しかないわよ~!」と叫んだ。


このあと何が問題なのかを、こんこんと説教された。

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